兵庫県の斎藤元彦知事の疑惑を告発した元県幹部の私的情報漏洩(ろうえい)問題で、県の第三者委員会から漏洩を認定された元総務部長の井ノ本知明氏。斎藤氏が初当選した令和3年以降、昇進を重ね県庁内で枢要なポストに就いてきた。斎藤氏の「最側近」として県政運営を支え、疑惑を告発した元県民局長の懲戒処分決定も主導した。
井ノ本氏は以前、東日本大震災の復興支援で宮城県に派遣された。同じ頃、総務省の官僚だった斎藤氏も宮城に出向していた。兵庫県からは井ノ本氏のほかに、片山安孝元副知事や、小橋浩一元理事、原田剛治前産業労働部長らも派遣され、仲を深めていったとされている。
令和3年に知事に初当選した斎藤氏は、就任直後に「新県政推進室」を設置。井ノ本氏は室次長として、斎藤氏の肝煎り政策の推進を支えてきた。同年9月には片山氏が副知事に就任。次第に県政の重要事項は斎藤氏と井ノ本氏らの間で決められるようになり、県職員や県議らの間では、蜜月関係を宮城県名物をもじって「牛タン倶楽部」と呼ばれた。
疑惑告発文書問題では、県民生活部長だった昨年3月21日、斎藤氏に「告発者捜し」を含めて調査するよう指示を受けた。その後、4月に人事課などを所管するトップの総務部長に就き、元県幹部の懲戒処分を主導してきた。
7月には井ノ本氏が元県民局長の私的情報を県議らに見せて回っていたと週刊誌が報道。井ノ本氏は同月末ごろから体調不良を理由に業務を休み、病気療養するとして8月に部長から「総務部付」となっていた。
「追及したら恥をかく」斎藤知事側近の元部長、告発者情報をみせ県議に迫る