「海外では、旧姓はニックネーム扱いだ」。口座停止寸前、アポ場所に入れない…引きずる不都合 選択的夫婦別姓が実現し、日本人が世界で自由に活躍できる時代はまだ?
先述したように、海外で最も重要な身分証明書になるパスポートは現在、旧姓併記が可能だ。アルファベットで書かれた戸籍姓の横のカッコ内に記載される。「Former surname(以前の姓)」との説明書きも付く。ところがパスポートのICチップには戸籍姓しか登録されておらず、併記した旧姓は海外では正式な名前だとは認識されない。あくまで「例外的な措置」(外務省)であり、航空券やホテルの予約にも旧姓は使えない。 2024年6月、経団連は女性活躍が進展するなかで、旧姓の通称使用だけでは解消できない課題が増え、特に海外ではトラブルが顕在化し「企業にとってもビジネス上のリスクとなり得る」とし、選択的夫婦別姓制度の早期実現を求める提言を発表。大きな話題になった。 提言案をまとめた経団連ソーシャル・コミュニケーション本部副本部長の大山みこさんは「自分を証明するものが世界に通用しないというトラブルが、旧姓で仕事をする人の足かせになっている」と表現する。
例を挙げてもらった。「海外では公的機関や民間企業の施設に入るため、ID提示を求められることが増えています」。海外のビジネスパートナーや顧客、取材相手と旧姓でやりとりしている場合、相手といざ対面を果たす前の入館の時点で「アポイントメントの名前とIDの名前が違う」と言われる可能性がある。建物の警備員に対し日本の夫婦同姓制度を一から説明する必要が出てくる。「ロスタイムが発生することで、上司や同僚を待たせたり、大切な商談の機会を失うかもしれないという不安もあり、無視できないビジネス上のリスクになっています」 国際機関ではさらに厳格な身分証明が求められ、戸籍名しか使用できないケースもあるという。研究者も同様だ。「結婚して姓が変われば築き上げた実績がリセットされる『キャリアの分断』に直面する。日本を代表して世界で活躍する人のキャリア分断は由々しき問題です」 ▽「虎に翼」が後押しした夫婦別姓への理解