「海外では、旧姓はニックネーム扱いだ」。口座停止寸前、アポ場所に入れない…引きずる不都合 選択的夫婦別姓が実現し、日本人が世界で自由に活躍できる時代はまだ?
生活を脅かすトラブルも経験した。旧姓宛てに振り出された給与小切手を銀行口座に入金した際、翌日「詐欺の疑いがあるため口座を停止する」と通告された。口座は戸籍姓でしかつくれない。旧姓が併記されたパスポートやビザは提出済みだったが、小切手の宛先と口座の持ち主が同一人物だと認識されなかった。口座が停止されれば現金を引き出せないし、給料日直後に設定したクレジットカードの支払いもできない。カードを止められたら食料品も買えなくなる。 この時は銀行側が、小切手の発行者(勤務先)に正当性を確認。私からは提出済みのパスポートに旧姓が併記されているので見てほしいと何度も主張し、半日かけて納得してもらった。その後、勤務先には小切手の宛名を戸籍姓にするよう頼んだ。仕事をしている自分の名前ではなく、夫の姓に対して給与が出される違和感は拭いがたい。 法務省によると、夫婦同姓を義務付ける国は「把握する限り日本だけ」。内閣府の統計では、2023年に婚姻届を提出した夫婦のうち94・5%が夫の姓を選択している。グローバル化が進んだ現在、ビジネスも研究もジャーナリズムも国内で完結できる業界は少ないだろう。日本人だけが特殊な不都合を抱え、国際社会の舞台で戦っていけるのだろうか。
▽明治に始まった夫婦同姓、現行民法でも法律婚を選べば夫婦どちらかが改姓することに そもそもなぜ日本は夫婦同姓なのか。明治時代、「平民」と呼ばれた一般国民が姓を名乗ることを認められ、当初は夫婦別姓からスタートしたが、1898年施行の民法が夫婦は「家」の姓を名乗ると定めた。戦後に家制度は廃止されたが、民法は現在も婚姻時に夫か妻の姓を称するよう規定。法律婚を選んだカップルはどちらかが姓の変更を迫られる。 高度経済成長期を経て女性の社会進出とともに権利意識が高まると、姓の変更による「仕事上の支障」「アイデンティティーの喪失」が指摘されるようになり、1996年の法制審の答申につながった。 だが自民党保守派の反発で法案提出は見送りに。法制審の答申後も法整備が実現しないのは極めてまれだという。国連の女性差別撤廃委員会は2024年10月、日本政府に4度目となる制度導入を勧告した。 ▽「自分を証明するものが世界に通用しないトラブル」