「天下一品」閉店の背景は? 唯一無二の“こってり”に陰りが見える理由
「油そばブーム」に便乗したメニューも登場
そんな近年の「油そばブーム」に、エムピーキッチンHDもしっかり乗っている。2023年夏、三田製麺所は大盛り丼チェーンの「伝説のすた丼屋」とコラボして、「伝説のすたみな油そば」を発売した。 2024年2月には三田製麺所で「復刻油そば」を期間限定で発売。2018年に販売したものをリバイバルしたのだ。 さらに2025年に入ってから50店舗突破を記念し、さまざまなキャンペーンを展開しているが、4月28日からは「極上明太子まぜそば」を投入している。 ご存じのように外食企業の限定メニューというのは、新規事業や新商品のテストマーケティング的な意味合いが強い。つまり、エムピーキッチンHDとしては堅調な「つけ麺」人気にあぐらをかくことなく、「油そば」への本格参入も検討しているということだ。 このように常に「先」を見て動いている企業が、いつまでも他社のラーメンチェーンのフランチャイズに甘んじているとは思えない。今回の天下一品大量閉店は遅かれ早かれ起きるものだったのだ。
天下一品の行く末は
さて、このような話を聞くと、「フランチャイジーに見切られるなんて天一には将来性がないということか」と思う人も多いかもしれないが、そんなことはない。これまで天下一品は店舗が多すぎることで「付加価値」を低下させていた面もある。これを改善すれば、まだまだ成長できるはずだ。 食事が提供する付加価値と、店舗数は関係がない。むしろ、いたずらに拡大戦略を進めることが付加価値を落としてしまう。それを筆者は2018年、「一蘭」の代表取締役社長・吉富学氏にインタビューした際、そのことを実感した。 ・「一蘭」にハマった外国人観光客は、なぜオーダー用紙を持って帰るのか(ITmedia ビジネスオンライン 2018年5月22日) 当時、一蘭は外国人観光客の間で大バズりし、人気を博していた。このとき、全国77店舗(2018年4月現在)だったので、筆者はこれからどんどん店舗を増やしていくのか尋ねた。しかし、意外なことに吉富社長は国内では店舗数を増やしていくような「拡大戦略」はとらないと答えた。その代わりに、ラーメンや接客の質を上げていく、つまり付加価値向上に注力をすると宣言し、こんなことをおっしゃった。 「中身と外見があるとすれば、必ず中身のほうが外見をちょっとだけでも上回っていなければいけない。例えば、アルマーニのような高級スーツを着ている人が脱いでガリガリだとガッカリしますが、ユニクロを着ている人が脱いでムキムキだったらカッコイイと思うものです。これは商売全てにあてはまり、外でうたっていることより、中身が少し上回っていれば満足度は上がる。これは生産性を上げる秘けつでもあると思います」 飲食店における“外見”には、「店舗数」も含まれる。全国200店舗や1000店舗をうたうチェーン店に対して、消費者は「それだけうまいのか」と思う。しかし、実際に食べてガックリということも少なくない。 一方、店舗数はそれほど多くなく、知名度もそんなに高くないチェーン店の場合、期待値もそれほど高くないので、食べてうまいと感じたらその分、満足度がガツンと上がる。「有名じゃないけど美味かった」「また行きたい」などの口コミも増える。