司法書士筆記試験の合格発表を受けて

1,司法書士試験の合格発表

司法書士試験の合格発表がありました。

令和6年度の司法書士試験は、記述式の配点が倍になりましたが、影響があったのか分析していこうと思います。

まず、わかりやすく新旧試験の配点を比較します。

令和5年度の司法書士試験までは、以下の配点でした。

 午前の部(択一) 全35問で満点105点

 午後の部(択一) 全35問で満点105点

 記述式 大問2問で満点70点

令和6年度の司法書士試験からは、以下の配点です。

 午前の部(択一) 全35問で満点105点

 午後の部(択一) 全35問で満点105点

 記述式 大問2問で満点140点(New!)

記述式の配点が倍になると、記述式が重視されるのではないかと心配になる受験生や煽る予備校講師がいたと思いますが、

私の予想では、その影響はほとんどなく、例年通りの試験と全く変更がないレベルであると考えていました。

さて、実際はどうだったのでしょうか。

発表されている「令和6年度司法書士試験筆記試験の合格点等について」などを見て分析していきたいと思います。

2,まずは結論

 結論からいうとほとんどの受験生に関係がありませんでした。

司法書士試験において、合格するためには、以下の戦略をとります。

これは、配点が変わる前後で同じです。

択一試験

 なるべく良い点を取る。具体的には、「基準点+30点」を目指す。

 それ以上は無駄です(あとで理由を説明します)。

記述試験

 基準点を割らないようにする。

 もちろん、全力で解くべきだが高得点を取るのは難しい(あとで理由を説明します)。

3,戦略の詳しい解説(令和5年から令和6年はどう予想されていたか)

 まず、戦略の立て方について令和5年試験で解説します。

 前年のデータで、翌年の戦略を予想するのは普通ですよね。

 一年前はどのように戦略が立てられていたのでしょうか。

 もちろん、記述式が140点の配点になった試験もあとでの答え合わせもするのでご安心を。

 ① 分析のSTEP1

 「令和5年度司法書士試験筆記試験の合格点等」を確認します。

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 合格するには211点とらないといけないようです。そして、「基準点」という名の「足きりライン」は、

 午前択一式が78点

 午後択一式が75点

 記述式が30.5点

 です。ひとまず、この「基準点(足きりライン)」をすべてぎりぎりクリアしたとして、あと何点上乗せすれば合格するのかを考えます。

 「基準点(足きりライン)」をすべてぎりぎりだと、合計点数は、

(午前択一式 78点 + 午後択一式75点 + 記述式30.5点)= 183.5点

 

 です。211点に27.5点足りません。


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 ① 分析のSTEP2

 この、上乗せすべき27.5点は、①択一で取るか、②記述式で取るしかありません。

 実際には①と②のミックスで合格を勝ち取るのですが、極端に考えたあとで、①択一式を重視すべきという説明をしていきます。

 ②記述式では、上乗せ点数をあまり取れません。


 まず、極端に択一だけで上乗せする方法を考えます。 

 択一式なら、1問3点なので、27.5÷3=9.1問になります。これだけ上乗せしていれば、記述式で基準点をとれば合格です!

 基準点よりも9問上ってどれくらいの実力なのでしょう。得点分布表を見ましょう。

 仮に午前で5問、午後で4問の上乗せをしたという戦略で考えると、上位7%くらいに入ると可能です。

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 確かにそれくらいの得点を取るのは難しいですが絶対に不可能というわけではありません。

 択一で上位7%に入れば、記述では基準点さえ超えれば合格です。

 例年だと半分+αくらいの得点をとれば合格です。難しそうに思える記述式も、それくらいの点数なら取れそうという気になってきます。

 

 次に、記述式だけで、上乗せで27.5点を取る戦略はどうでしょうか。

 結論から言うと「不可能です」。これは得点分布表を見ればわかります。

 

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 基準点30.5点は、上位48.9%です。

 しかし、それに27.5点を上乗せした58点以上の人は、日本でたった4人だけ。

 択一を突破した猛者の中での上位0.2%です。こんな戦略で合格を狙いに行くのは現実的ではないと思います。

 つまり、基準点から逆引きした場合、令和5年の配点70点時代には、記述で稼ぐなんてことはあり得なかったわけです。

 徐々に説明していきますが、配点が140点になってもそれは変わらないと考えれていましたし、実際そういう結果になりました。

 

 試験分析が得意な人は、令和5年の得点分布表が0.5刻みなのが気になりますよね。そうなのです。

 新しい配点はこれが1点刻みになって、単純に点数が倍になるだけだろうと予想されていたのです。

 

 そうすると、試験内容も変わりませんから、得点分布も毎年の平均と似たような分布になると予想されます。

 さらに数学な得意だったり、予想が得意な人は、択一のカンストラインは「多分10問~11問になる」ということまで言い当てていました。

 つまり、日本で数人以外は、結局、択一でどれだけカンストに近づけるかのゲームだったのです。


 つまり、「択一式で『基準点+9問』とると、記述式では足切りされ食らわなければ、ほぼ合格」になります。


 この9問というラインは、毎年同じです。配点が変化する前は、上乗せ分は、毎年9問~10問が相場です。

 詳しい説明を省きますが、記述式の配点が倍になったら、カンストラインが10問~11問になるだろうと予想されていました(理屈は機会があれば書きます)。

3、令和6年度司法書士試験の分析


先ほどと同じように、合格点と基準点を確認します。

 

画像

 合格するには267点とらないといけないようです。そして、「基準点」という名の「足きりライン」は、

 午前択一式が78点

 午後択一式が72点

 記述式が83.0点

 どうも、記述式の点数が高い気がしますね。点数がとりやすかったのかもしれません。

 とりあえず、さっきと同じように、基準点の合計を出します。

 (午前択一式 78点 + 午後択一式72点 + 記述式83点)= 233

 

 です。267点に34点足りません。


 ここから、択一式の上乗せカンスト正解数は、34÷3=11.3問です。

 予想通り11問になりました。カンストは難しいにしても、10問くらいの上乗せを目指すのが基本的な戦略になります。

 記述式は配点が大きくなったことで、戦略は何も変わらないということです。

 そして、記述式の配点が大きくなったのだから、記述式だけで上乗せの点数を稼げばいいのではないかという仮説も難しいということがわかります。基準点83点+上乗せ34点=117点を取るには、択一を突破した猛者の中での上位3.4%にはいらないといけません。日本では、82人しかいません。この上位〇パーセントは、択一と記述で全然意味が違いますからね!記述式はの上位〇は、「択一突破者の中での上位〇%」ですから。

去年の4人に比べれば楽ですが、ほとんどの人にとって関係がないといっていた意味が分かってきたと思います。

82人ー4人=78人には影響があったかもしれないなという程度です。

もちろん、そんな上位の人は、択一でも点数をとっているでしょうから、択一ギリギリで一発逆転ストーリーみたいな人はおそらく日本でおらず、記述式の配点変更は「普通の受験生には全く関係がなかった」という結論になります。

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