「自己責任」では片付けられない現実 - 就職氷河期世代が抱える構造的問題と解決への道
NHKあさイチ特集「日本人の6人に1人!就職氷河期世代▼不遇は自己責任なのか?」を深掘りする
2025年5月21日、NHK総合で放送される「あさイチ」では、「日本人の6人に1人!就職氷河期世代▼不遇は自己責任なのか?」という特集が組まれます。作家の雨宮処凛さん、タレントの青木さやかさん、そして壇蜜さんが、就職氷河期世代が直面する様々な問題について語り合います。この番組では、新卒時の就職率の低さだけでなく、その後も続く賃金の伸び悩みや、格差、貧困など、この世代特有の「生きづらさ」に焦点を当て、それが本当に「自己責任」と言えるのかを問いかけます。
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就職氷河期世代とは?現状と課題
就職氷河期世代とは、一般的に1993年から2004年頃に新卒として社会に出た世代を指します。バブル崩壊後の厳しい経済状況の中で就職活動を行い、企業の新卒採用枠が大幅に縮小された時代に社会人としてのスタートを切った人々です。現在、この世代は40代後半から50代前半に差しかかっており、日本の人口の約6分の1、およそ1700万人がこの世代に該当すると言われています。
現状の深刻さ
厚生労働省の調査によると、就職氷河期世代の非正規雇用率は35〜44歳で26.4%、45〜54歳で30.0%となっています。特に女性の非正規雇用率は高く、35〜44歳で46.2%、45〜55歳で53.2%に達しています。正社員以外の平均年収は202万円(国税庁、2023年)と低く、経済的な不安定さを抱えている人が多いのが現状です。
また、この世代は単に新卒時の就職率が低かっただけでなく、その後のキャリア形成においても様々な障壁に直面してきました。一度非正規雇用に就くと正社員への転換が難しく、年齢が上がるにつれて転職の機会も減少するという「負のスパイラル」に陥りやすい状況があります。
「自己責任」論の限界
就職氷河期世代が直面する問題について、「努力が足りなかった」「自己責任だ」という声がしばしば聞かれます。しかし、番組に出演予定の雨宮処凛さんは、そうした見方に疑問を投げかけています。
雨宮さんは自身のコラムで、「『就職氷河期』という言葉が表すように、社会に出る時期があまりにも悪かったのが原因なのに、多くの人が『自分が悪いんです』と口にする」と指摘しています。また、「就職試験で100社近くに落ちる経験をし、心を病んでいく者もいたし、就職難を苦にした自殺未遂の話も聞いた」と、当時の厳しい状況を振り返っています。
青木さやかさんも自身の経験から、「誰でも就職できる会社」まで落ちた就職氷河期を経てタレントになった道のりを語っており、この世代が抱える悩みについて「リアルな声」を届ける予定です。
構造的問題への理解
就職氷河期世代が直面する困難は、個人の努力だけでは解決できない構造的な問題に根ざしています:
- 経済環境の激変: バブル崩壊後の景気後退により、企業の採用枠が急激に縮小
- 雇用制度の変化: 非正規雇用の拡大と正規・非正規間の格差の固定化
- 年功序列制度: 一度キャリアで躓くと、その後の挽回が難しい雇用システム
- 社会保障の不備: 非正規雇用者向けのセーフティネットの不足
- 「自己責任」論の蔓延: 個人の努力不足として問題を矮小化する風潮
これらの要因が複合的に作用し、就職氷河期世代の多くが「頑張っても報われない」という状況に置かれてきました。
政府の支援策と課題
政府は2019年に「就職氷河期世代支援プログラム」を策定し、この世代への支援を開始しました。主な支援策には以下のようなものがあります:
- 短期間で取得でき安定就労に有効な資格等の取得支援
- 民間事業者のノウハウを活かした不安定就労者の就職支援
- 国家公務員の就職氷河期世代枠の設置
- 正社員転換支援プログラム
- 地域密着型の雇用促進施策
さらに、2025年4月には石破総理大臣が就職氷河期世代を中心とした就労支援を充実させるため、関係閣僚会議を設置すると発表しました。
しかし、雨宮さんは「いや遅すぎるだろ!」と指摘するように、支援策の開始が遅れたことで、すでに50代を迎えつつあるこの世代にとって、効果的な支援になるのかという疑問も残ります。
共感と理解 - 私たちにできること
就職氷河期世代の問題は、単に一世代の問題ではなく、日本社会全体の課題として捉える必要があります。彼らが直面する困難は、将来の世代にも同様の問題が起こりうることを示唆しており、社会全体で取り組むべき課題です。
私たち一人ひとりにできることとしては:
- 理解と共感: 「自己責任」という簡単なレッテル貼りを避け、構造的な問題への理解を深める
- 世代間対話: 異なる世代間での対話を通じて、互いの経験や課題を共有する
- 支援制度の活用促進: 既存の支援制度について知り、必要な人に情報を届ける
- 職場での意識改革: 年齢や経歴による差別をなくし、能力や意欲を正当に評価する文化を育てる
- 政策への関心: 就職氷河期世代支援に限らず、雇用や社会保障に関する政策に関心を持ち、声を上げる
未来に向けて - 同じ過ちを繰り返さないために
就職氷河期世代の問題は、日本社会の構造的な課題を浮き彫りにしています。この世代が直面してきた困難から学び、同様の問題が将来の世代に繰り返されないようにするためには、以下のような取り組みが重要です:
- 景気変動に左右されない雇用制度の構築: 新卒一括採用への過度の依存を見直し、多様なキャリアパスを認める社会への転換
- 正規・非正規の格差解消: 同一労働同一賃金の徹底と、雇用形態による不合理な待遇差の解消
- リカレント教育の充実: 生涯を通じた学び直しと職業訓練の機会提供
- セーフティネットの強化: 雇用形態に関わらず、全ての労働者を対象とした社会保障制度の整備
- 年齢にとらわれない採用・評価制度: 年齢ではなく能力や意欲を重視する人事制度への転換
結びに
NHKあさイチの特集「日本人の6人に1人!就職氷河期世代▼不遇は自己責任なのか?」は、単に過去を振り返るだけでなく、現在進行形の社会問題として就職氷河期世代の課題に光を当てる重要な機会です。
雨宮処凛さん、青木さやかさん、壇蜜さんという異なる立場の方々が語る体験や視点は、この問題の多面性を理解する上で貴重な手がかりとなるでしょう。
就職氷河期世代の問題を「自己責任」として片付けるのではなく、社会全体の課題として捉え、世代を超えた連帯と理解のもとで解決策を模索していくことが、より公正で包摂的な社会の実現につながるのではないでしょうか。
この番組をきっかけに、多くの人が就職氷河期世代の現実に目を向け、共に解決策を考えるための対話が広がることを期待します。
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