平均年収460万円は「実感」とはほど遠い? 実は6割が平均以下の「真実」 1千万円プレーヤーは増加で広がる貧富の差
「日本総研」調査部・客員研究員の山田久さんは次のように話す。 「いまは食料品価格が上がっており、所得の低い層にしわ寄せがきています。格差が拡大していきかねません」 実際、1千万円超は5.5%にあたる279万人。2019年は253万人でこの4年間で1千万円プレーヤーは26万人増えている。高所得者が平均値を引き上げているのだ。平均値と別に注目したいのが「中央値」だ。今回の場合、全労働者を年収順に並べた際の真ん中に位置する金額のことで、中央値の方が実感に近いとされている。国税庁は中央値を明らかにしていないが、構成比をみると300万円台後半になりそうだ。 性別でみると、男性は平均年収569万円、女性は316万円で男女の差は大きい。男性は年齢が高くなるにつれ、年収が増え55~59歳で712万円とピークになるのに対し、女性は年齢別であまり差がみられない。 「男性が仕事に専念して、女性は基本的に家事育児を担う昭和型の家族モデルを前提にしています。男性が長時間労働や転勤を受け入れてきた裏で、女性の職業能力の開発を犠牲にしていた面がありました。見直しが進んできたとはいえ、日本では依然として年功賃金が色濃く残っています。勤続年数や年齢に応じて評価する仕組みを本格的に改める必要があります」(山田さん)
アンケートからも「同じ部署に男性がいると、そちらが優先されるということが、普通にありました」(東京都・会社員・52歳・女性)との声もあった。 平均給与以上をもらっている仕事を見てみよう。転職サービス「doda」による職種分類別の「平均年収ランキング(2024年版)」では、1位が「専門職(コンサルティングファーム/専門事務所/監査法人)」で611万円。2位は「企画/管理系」の566万円。3位は「金融系専門職」の474万円だった。 doda編集長の桜井貴史さんは「知識集約型で高収益な高付加価値産業が上位にきています。また、経営企画、DX推進といった戦略系の仕事は需要が大きく、報酬が高い傾向にあります」と話す。 一方、「技術系(メディカル/化学/食品)」は407万円、「クリエイティブ系」392万円、「事務/アシスタント系」350万円、「販売/サービス系」339万円となっている。中には生活を支えるエッセンシャルワーカーも含まれるが、評価されにくいのが実態だ。 では共働き世帯ではどうだろう。 マイナビの調査(2024年)では、共働き正社員世帯の平均世帯年収は806万円だった。だが理想の世帯年収を聞くと1126万円で、300万円以上不足しているという。 さらに、共働き正社員のうち、実に46%が「家計が苦しい」と答えている。家計が苦しいと感じる世帯の平均年収は716.7万円。つまり、700万円あっても、家計が苦しい家庭は多いのだ。 この数字はあくまでも額面で、所得税や住民税のほか社会保険料などを差し引かれた「手取り」ではもっと少なくなる。光熱費に加えて、コメに代表されるような生活に欠かせないモノやサービスは値上がりしており、家計の余裕はなくなっている。 山田さんは話す。 「給料の底上げが必要です。今のアメリカが物語っていますが、とても豊かな人がいるけれども取り残されて不公平感を抱く人もいます。社会の安定のためにも、格差が開きすぎることは問題です」 (AERA編集部 井上有紀子)
井上有紀子