真・転生したボクが新エリー都で凡夫になった件。


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作:レトルトところてん
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事後報告。



インターノットレベルマジで上がりづらいですね。筆者は38で止まっちゃってます。アンビー完凸したいのにガチャが回せない……っ! くぅ。




 

 

 

 

 なでなで。なでなで。

 

 

 第八分街に出現した共生ホロウ、その内部。一人の白髪蒼目ショタと白髪琥珀の瞳を持つ少女が見つめ合っていた。

 

「あ、あの……アンビー?」

「どうしたの」

 

 なでなで。

 

 否。見つめ合っているだけに事態は収まらない。白髪の少女が伸ばす白魚のように澄んだ白い腕が少年の頭に伸びている。その動きは往復運動を機械的に繰り返されており、どこか不格好だ。

 

 ボクに持たれているケージの中の犬も、心なしか困惑している気がする。多分気のせいなんだろうけど。

 

 というか今思えば、何故に犬? にゃあ子って名前だった気がするんだけど……マクロビさんのネーミングセンスは光り輝いているようだ。

 

「きっとどうかしてるのはアンビーの方だと思うな。絶対」

「……何を言っているのかわからないわ。“死闘を乗り越えたタッグはこのくらいの距離感が普通よ"。それにあなたくらいの年齢はこうして頭を撫でるのが何よりの見返りになると聞いたわ」

 

 なでなで。何か言いたげに白髪の少年の頬がぷくっと膨らむ。アンビーが無表情なのは依然として変わりないが、どこか満足気な雰囲気を醸し出している。きっと死闘を繰り広げたせいで気分がおかしくなっているに違いない。

 

「本当はわかってるよねアンビー。しかもそれこの間ボクが薦めた“朝焼けと弾丸”のセリフ。後半はよくわかんないけど経費を浮かしたいニコが言いそうだ」

「正解。あまり気にする必要はないわ。早く脱出しましょう。あなたの不思議な力もきっと限界があるもの」

「あと半日は戦い続けられるよ」

 

 じーっと見つめられる。そして薄く息を吐いて、

 

「嘘じゃないみたいね。……その、頼りにしているわ」

「! うん! 任せてよ!」

 

 

 ボクたちは共生ホロウからデッドエンドホロウへの空間転移現象から無事生還し、空間の裂け目を通って本来の依頼の犬を回収していた。

 

 それにしても撫でるのは犬の方にすればいいのに。身長的にボクの方が小さいので、撫でやすい位置にあるということだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の弟」

「はい嘘ー! ぜっっっっったい! リクでしょ! 私だってバカじゃないんだからね! 映画だって見てるし!」

 

 サトル。すぐにバレてしまったわ……と聞こえてきそうなほどわかりやすい視線をアンビーから向けられる。沈黙は時に雄弁よりもわかりやすい。というかアンビーは表情に出ないだけで案外感情豊かな気がする。

 

 軽く呼吸をして、覚悟を決める。でも、ボクの臆病さはデッドエンドホロウに置いてきてしまった。そしてアンビーが何も言わず受け入れてくれたことが、ボクにとって最大の自信の源になっている。

 

 

 __一応、私の弟という設定を試してみるべき__

 

 __うーん。結局教えることになるんだよ?__

 

 __……その方がきっと、面白いわ__

 

 __確かに!__

 

 

 何か誤魔化されたような気がしなくもなかった。

 

 

「元々誤魔化すつもりもなかったし、アンビーはそこまで気にしなくていいよ? それと、そうです! ボクがリクガンボンプの中の人です!」

「まったく驚いたよ。ニコならともかく、アンビーが見知らぬ子供を連れてくるなんて。一瞬アンビーの弟だと本当に信じてしまいそうになったくらいだ」

 

 興味深そうにボクを眺めるアキラとリン。特にリンの眼の輝き具合はとてつもない。もし眼光にわくわく度が反映されたとしたら、ボクは一瞥されただけで消し炭になってしまうほどの熱量をたたえていることだろう。

 

「ボンプのときからそうだったけど、人間になるともっと目が綺麗……! ちっちゃいし可愛いしイケメンだし! 邪兎屋にはもったいないよ~!」

 

 言いたい放題だが、ボクもそう思う。流石は将来的に絶世の美男に成長する■条悟の肉体だ。

 

「でも、どうして急にボンプから人間に?」

「それがボクにもわからなくて……初め、ボクはこの身体でデッドエンドホロウの中で倒れていました。記憶がないのは本当で、それでエーテリアスから逃げて、反撃しようと思ったら急にボンプに……」

 

 3人とも考え込む様子を見せる。

 

「……謎、だね」

「確かに謎だ」

「サトルはホロウ内で密かに行われた身の毛もよだつような凄惨な実験を経験した後、あの力を使って逃げ延びた可能性も……ないわ。ごめんなさい」

「仮にそうだったとしても、ボクは気にしないよアンビー」

 

 自分で言ってて気分が下がったのか声音がしょんぼりするアンビー。やはりアンビーは天然の度がかなり強い。

 

「それで、君の格好はどうしたんだい? アンビー。今までに見たことがないほど汚れているけど」

「私たちは依頼を受け、昨日発生した共生ホロウに潜った。そして目的地に飛べる空間の裂け目に入ろうとしたとき、空間転移した」

 

 アンビーの服装はボロボロだ。腰のナタも軸が歪んでいるらしい。帰り際にまたニコに怒られる……と小さくボヤいていた。

 

「昨日発生したと言えば……十一分街だね!」

「トラビスさんの所まで行く途中に軽く依頼は見てみたけど、アンビーがそこまで苦労するような内容はなかったはずだ。エーテル活性値もできたての共生ホロウって感じだしね」

 

 リンとアキラは不思議な様子だ。ニコやビリーならともかく、アンビーがここまで汚れて帰って来るのは本当に珍しいらしい。

 

「転移した先は、デッドエンドホロウ」

「何だって?」

「十一分街とデッドエンドホロウって、かなり距離あるよ!? 本来繋がらないはずなのに……」

 

 リンの言う通りだ。ホロウとホロウがぶつかり合って、ひとつの巨大なホロウと化したとかなら空間転移が起きてもおかしくない。しかし今回は離れたホロウに飛ばされているのだ。

 

 空間の散乱性の域を越えた異常事態。

 

「そこで私とサトルはデッドエンドブッチャーと交戦した」

「よく生き残れたね。流石アンビーだ」

「私一人じゃ死んでいたわ。サトルの無限は凄まじい力よ。デッドエンドブッチャーは人間になったリクの力で吹き飛んだ」

 

 ボンプのときはリク。人間のときはサトルってこと? とリンから疑問の声が上がる。

 

「うん。何となく、ボクの名前はそうじゃないといけない気がしたんだ」

 

「そして私たちは再び起こった転移現象で元のホロウに戻り、ここに至る」

 

 アンビーは満足そうに語り終えた。映画の回想シーンみたいな口調だったのは気のせいかな。

 

「……大問題だ」

「急いでH.D.Dの調整と原因を調べなくちゃ」

 

 大問題なのである。ボクの使用するキャロットは基本H.D.Dシステムによって演算されたものだ。そしてそのキャロットを参考に行動した結果、今回のような事態が起こってしまった。

 

 ボクが初めてホロウに入ったときのあれは、あくまでも誤差データの積み重ねによる起こるべくして起こったミス。H.D.Dシステムは一応点検されたけど、特に問題はなかった。

 

 今まで人類が何十年も掛けて蓄積してきたデータが通用しなくなる可能性がある。

 

「僕が治安局に匿名で通報しよう。個別のホロウとホロウが遠隔で接続するなんて初めての事態だ。もしかしたらボンプの視覚データの提出も求められるかもしれない。ボンプには戻れるのかい?」

「ごめんアキラ。ボクのボンプの身体は今頭から股下まで凹んで壊れちゃってて……多分使えない」

「え!?」

「そこまで危険な橋を渡っていたのか。いや、謝らなくていい。何はともあれ、君たちが無事で本当に良かった」

 

 そう言うと早速動き出すアキラとリン。こういうとき彼らは本当に頼りになる。

 

「私も邪兎屋に帰るわ。ニコに相談しないと」

「アンビー、今度依頼の報酬あげるから楽しみにしててね!」

「……いらな」

「あげるから、また今度ね!」

「…………ええ。また今度」

 

 ボクの言葉に観念したのか、思っていたよりも素直に受け入れてビデオ屋から帰っていった。ボクの言葉で邪兎屋の家計簿を思い出したのかもしれない。

 

 とりあえずボクは……皆に改めて挨拶かな? 身体も変わったし、別人として挨拶が必要かも。

 

 無限の習熟もしないといけない。デッドエンドブッチャー……あいつはきっと死んでないはずだ。ボクのできたてホヤホヤの赫は収束も甘く、指向性もゆるゆるだった。

 

 だから範囲的には巨大な破壊の痕跡が生まれたんだけど、肝心の威力の方は拡散されて上手く伝わっていないはず。

 

 

 ねじ曲がったアンビーの腕や手がフラッシュバックする。

 

 

 

 今度あったら絶対に、絶対に殺してやる。

 

 

 

 

 

 





どういう展開にしようか迷ってます。このままプロキシとして依頼をこなさせる方面でいいかなぁ。
9/10 



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