「ねぇ…お兄ちゃん……」
「どうしたんだい?リン?」
「いや…ね…?今日っていうか…ここ最近のカズくんの様子…少しおかしくない……?」
リンは心配そうな顔でアキラに言う
「やっぱり…リンもそう思っていたか……」
「うん……見ててちょっと心配だよ………」
「だね………確かカズ、明日もシフトが入ってたはずだから一回聞いて見ようか…」
「そうだね………」
不安そうなリンは頷く
「リン……今日はもう遅いから休もう…?」
「わかったよ…お兄ちゃん……」
「あぁ…おやすみ…」
「おやすみ…」
「カズくん…大丈夫かな………?」
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シャッターを閉め切り真っ暗な寝室………
ぼくはあの日から手足を縛られベッドに拘束をされている…
「カズ……アタシのモノ………」
エレンは幸せそうな顔で……真っ黒に染まった目でぼくを抱きしめていた…………
本当に幸せそうで……
エレンの腕の中………
ぼくの安らぎ……エレンに抱きしめてもらっている間はなにも考えないでいられる…………
悪夢からも現実からも……ぜんぶぜんぶ逃げられる………
ぼくはエレンさえいれば監禁されても今日を生きていける…………
だけど……ぼくは…………ぼくは………………
エレンにぜんぶのお世話をしてもらって…………
負担を……心配を……………
なにもできない出来損ない…………
自分のこともろくに…………
捨てられる………?
あぁ…やだ……………
ぼく……もう……………
おとうさんも………おかあさんも……………
おじいちゃんも………………
ぜんぶぜんぶ……………………
エレンまで……………
やだ…………やめて…………………
「はっ…はっ…はっ……やだ…やだ……」
こわい……涙がとまらない………
やだ…やだやだやだ……
「ぎゅーっ………」
「へ……?」
あった……かい……?
「カズ…安心した……?」
エレンが…ぼくを抱きしめてくれた………
こんな弱いぼくを………
不甲斐ない…………
エレンに迷惑かけて…………
エレンの時間を奪って………………
僕なんかじゃ……僕なんかじゃ…………
エレンを幸せにできない……………
それならいっそ…………
「……えたい………」
「カズ…?」
「この世から…消えたい………」
「は……?」
「エレンの負担になってる……僕なんかじゃ……エレンを幸せにできない………もう……この世から…「絶対許さない」……」
「カズがアタシの前から消えるなんて絶対に許さない……何回も言ってるよね……?そんなに…不安……?アタシがカズを捨てるよう見える……?」
「ぼくなんか忘れて……良い人見つけて幸せになってよ………」
「はぁ……言ってもムダ…なら…もうわからせるしかないじゃん………」
エレンはぼくにそういうと馬乗りになる…
ひどく冷ややかな目でぼくを見つめているエレン……
「エレン……エレンには…ぼくなんなよりも…良いっ!」
エレンにぼくの口はふさがれる………
そしてぼくの口はどんどんエレンに蹂躙されて………
酸素もうすくて…………
あたまぽあぽあしてきた……………
あ……おちる…………
ぼくの視界が…どんどん黒に染まって……
意識を落としそうになったときだった…………
「ぷはぁ…………アタシには……アタシには……カズしかいないから…………」
「はぁ……はぁ……」
「カズ……目…トロンとしてる…………はぁ……かわいい…………」
「カズの目も鼻も顔も身体も…髪の毛一本から血の一滴までぜんぶ…ぜんぶぜんぶアタシのモノ………」
「はぁ……なのに……アタシの前から消えようとする悪い子は………お仕置きしないとね…………?」
あぁ…ぼくは…確信した……
もう……サメの胃袋から……出れないって………
「カズにアタシを刻み込むから………」
エレンにアイされるなら………もう……
いいや……………
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「はぁ……だる………」
「はやく帰ってカズ愛でたい……」
アタシはとろとろに蕩けてるカズの写真を眺めながらサボっていた……
正直、最近はヴィクトリア家政…なにも依頼ないし……とっとと帰りたい……………
はやくカズを抱きしめたい……………
エレンはそんなことを考えていると…
「あの…エレンさん……」
「ん…?なに…カリンちゃん…?」
「ライカンさんが…呼んでます……」
「わかったよ…ありがと…カリンちゃん。」
アタシはソファから立ち上がりボスのもとに向かう
「ボスに呼び出されるようなことやったっけ……?」
「まぁ…いっか……」
「ボス、入るよ?……って…リナもいんの…?」
部屋に入ったエレンは困惑しながら言う
「私がいてはまずかったかしら…?」
「そういうわけじゃないけどさ……少しびっくりしただけ……」
「あら…そう…?」
「…とりあえずエレン……話がありますので座って下さい…。」
「わかった……」
そしてアタシは椅子にすわる…
「ねぇ…えらく真面目な雰囲気なんだけど……なんかあったの…?アタシなんかした…?」
ボスも、リナも、すごい真面目そうな雰囲気でてるし………なんかやらかした…?検討もつかない………
「エレン……先日、プロキシ様から連絡が来ましてあなたのご友人様……沖田様がここ2週間、出勤していないとのことです……確かエレンは…沖田様と同居していたはず……なにかわかるのでは……?」
「うふふ……エレン…正直に話した方が良いわよ…?」
あぁ……やば……
もっと偽装しとけばよかった…………
まぁ…良いや………
「あぁ……それ、アタシがカズ監禁してるから…」
「は…?エレン……本当ですか…?」
「うん。あとカズはアタシの友達じゃなくてアタシの彼氏。」
エレンはあっけらかんと話す
「まぁ……エレンにも彼氏が………でも何故監禁してしまったの…?」
「あぁ……えっと……」
「なにか言えない事でも……?」
「いや…これ話して良いのかわかんないんだけど……さ……?カズが…自分で……命を絶とうとしてからさ……?その…怖くて監禁したんだよね……………」
「まぁ……」
「ボスとかリナとか知らないと思うんだけどあいつさ…結構……精神的に参ってて………最近は少しづつ回復してたんだけど………また酷くなっちゃって…………」
「ずっと一緒にいて……消えて欲しく無くて………」
「もう……傷ついて欲しく無くて…………」
「アタシの大切なモノだからさ…?もうアタシの元からだれも消えて欲しく無くて………監禁しちゃった………」
沈黙……
そしてライカンが口を開く
「エレン……よく頑張りました…………しかし大切なモノを守るために監禁するのは感心しません……」
「うん…ごめんボス……」
「えぇ……なので…沖田様を病院に連れて行きましょう…?聞いた所によると…おそらく心因性のものでしょう……薬を服用すれば必ず良くなる筈です。」
「ほんと…?ボス……?」
「私は専門家ではないですがよくなると思いますよ」
「ボスが…言うなら……所でプロキシにはなんて言うの…?」
「それなら先程プロキシ様に沖田様はエレンに看病されていると連絡しましたわ」
「リナ、お手柄です。エレン…これからはもっと私達を頼って下さいね?」
「うん……」
エレンは呟く……
「けど……いっぱい人がいる所にカズ連れて行きたくないなぁ………」
「あら…?どうして…?」
「だって…ほかの奴らにカズ見られたくないし……」
「エレン……」
ライカンは呆れながら呟く
「うふふ…エレンは独占欲が強いのね…」
そしてリナは笑っていた
どうやらエレンによるカズ監禁も解決に向かうみたいだ
そして一方カズはというと……
「ぼくは…仮面ライダーみたいに……本郷猛や…南光太郎みたいな…強い人間になれない…………」
「エレンみたいにカッコよくて…かわいくて…周りから必要とされている人間じゃない………」
「ぼくって……やっぱりだめな人間…………」
「もう……やだ…………」
「ぼくは必要とされない人間…………」
「自然豊かなソドー島で隠居したい……」
「ひっそりと…誰からも悟られず消えたい…………」
カズは暗闇の中、ベッドの上で呟く………
涙を流している彼の目は虚ろだった…………