真・転生したボクが新エリー都で凡夫になった件。


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作:レトルトところてん
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下・最終テスト:かっ飛ばせ! エーテリアス!


つい書いちまったぜ


 

 

 

 

 

『そこの空間の割れ目に入ると、おそらく目的地付近に飛ばされるはずだ。注意すべき点は小型エーテリアスが居るくらいだね。エーテル活性度が僅かに上昇しているし、これは間違いないはずだ』

「ンナ!(行ってみます!)」

『気を付けて行くんだよ? 普通エージェントとプロキシの二足のわらじなんて履かないんだからね』

 

 リンとアキラの誘導を受け続け、空間が飛び飛びに断続しているホロウ内をまるでお庭を散歩するかのようにすいすいと進んでいくと、紫に色んな色が混ざりあった空間が目に入った。

 

 どうやら目的地へと繋がる空間の割れ目を目撃したらしい。

 

 空間の割れ目。多くのプロキシやホロウレイダーを悩ませる4次元的空間移動ができる現象だ。上手いこと扱えればかなりのアドバンテージになるけど、逆に使えなければいつエーテリアスが出てくるかもわからない地雷である。

 

 ホロウ内は空間の連続性が否定される。ホロウはエーテル活性が強まるほど、空間の散乱性を強く保持するようになり、それは熟練プロキシでも上手いキャロットを作ることが難しくなる要因の一つだとか。

 

 ボクが地面を歩いて入って空から落下したのも空間が断続的に、散乱して接続しているせいだ。

 

 

 意を決して空間の割れ目に一息に飛び込むと、強い酩酊感と共に目的の家屋と思しき建物の前にテレポートした。

 

 

「ゴァァァ!」

「ンナ(やっぱ居るよねぇ……)」

 

 

『小型エーテリアスだね。んーっと……これはゴブリンかな?』

 

 

 ゴブリン。小型エーテリアスにして、両手に付いた物質を扱って攻撃してくる点から知能ある邪悪、ゴブリンとして名前が付けられた存在だ。ただ実際は知能あって腕の道具を使っているわけではなく、そういう形のエーテリアスらしい。

 

 

『気を付けて! なんなら逃げてもいいんだから! ……潤滑油とか色々やったけどドキドキするねお兄ちゃん!』

『ああ、リンの言う通りだ。あくまで僕たちの目的はマフラーの回収だからね。無理な戦闘は避けるべきだ』

 

「……ンナ!(戦います!)」

 

 

 たしかに無意味な戦闘は避けて、マフラーを回収する方がリスクマネジメントは取れている。だけど、それじゃあボクはきっと成長できないはずだ。

 

 ホロウ内で1人でエーテリアスと戦闘できることを示すことができれば、もっとできる仕事も増えるはず!

 

 ここで、倒す!

 

 

『ちょ! 無理しないでよね!?』

『……良い機会だ。幸い相手は小型エーテリアス1体のみ。戦闘用ボンプならこの程度なら倒せるし、リクの性能を見るのも悪くない。やれるかい?』

「ンナ(はい!)」

 

 

 既にゴブリンはボクの方に向けて走ってきている。いつ見ても不気味な外見だ。頭部の代わりに存在する黒い球体はきっとエーテルの塊だろう。ゴツゴツの腕を振りかぶり、ボクへと攻撃を放ってきた。

 

 

「ゴァァア!」

 

 

 ボクに降りかかる影。今まさに直撃しようとする腕の装甲はその勢いを強制的にピタリと止めることになる。

 

 

「ンナ(無限)」

 

 

『おおおおおお! 見てよお兄ちゃん凄いよ!』

『道中で軽く聞いていたけど、凄まじい性能だね。原理的にどんな攻撃もリクには届かない……欠点は電池の消耗が激しいくらいかな。まったく、ボンプの能力にしては逸脱しすぎているじゃないか?』

 

 

 えっ、電池の消耗激しいの? 初めて聞いた。普段は無下限呪術を使わないからなぁ。まぁ、最悪ボクには電池が切れても奥の手がある。

 

 突如静止した己の動きに困惑したエーテリアス。

 

 

「ンナ!(術式順転、蒼ッ!)」

 

 

 腕を起点に更に無下限呪術に呪力を流し込み、吸い込む効果を発現させる。蒼く光るブラックホールだッ! 周囲の廃車やポストも巻き込み、ゴブリンはボクの順転によって小さな球体と化した。

 

 戦闘終了。被害無し。戦闘評価Sランクってとこかな!

 

 

『……なんか、思ってたより大分強いねお兄ちゃん』

『あんなの喰らえば即死だろう。瞬間火力なら既に邪兎屋を越えているんじゃないか?』

『さすがになさそうだけど……ニコにはエーテル弾もあるし』

 

「ンナ!(討伐完了です! 目的のマフラーはこの中ですね!)」

 

『ああ。さっさと終わらせて帰ろう』

 

 

 

 こうして、ボクの初めての依頼は無事成功に終わったのである。

 

 特典:凡夫には無下限呪術の発動には掌印が必要だという知識が記録されているが、今の所ボクにそれが要求されたことはない。どういうことだろうか? めんどくさくて隙が生まれるし、無いことに越したことはないけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホロウを出たあと、リンに迎えに来てもらってビデオ屋へ帰った。今日はボクの依頼達成祝いにパーティをするらしい。ウキウキで楽しそうにボクに語るリンが運転する車は少し怖い。

 

 駐車場にまで付いたので、ビデオ屋に裏口から入るとスマホを持ったアキラとニコが待ち構えていた。

 

 えっ、ニコ!?

 

 

「おめでと! あんたやるじゃない! ひとりでホロウに入って依頼を達成するだなんて!」

「ンナ! ンナンナ!?(ありがとうございます! なんでニコが!?)」

「君のことを聞くついでに、テストのことを話したら凄い剣幕で怒られてね……心配ならはっきりそう言えばいいのに」

「う、うるさいわね! 当たり前でしょう!? 戦闘用ボンプでもないのにひとりでホロウ内に行かせるなんて! あんたたちパエトーンがバックアップに居なかったら速攻助けに行ってたわよ!」

 

 うんざりしたような顔でスマホを差し出すアキラ。後ろからリンがスマホを受け取れる位置までボクを持ち上げてくれた。

 

 

「最終テストクリアだ。おめでとう。君は立派なプロキシになれる」

「ンナ!(ありがとうございます! これからもっと頑張ります!)」

 

 

 ボクはスマホを受け取り、深く礼をする。やったぞぉ! これでボクはプロキシ兼エージェントととして依頼を受けることができる! ゆくゆくは邪兎屋の皆から依頼を受けたりなんかもできるかもしれない!

 

 感極まっていると、ドタドタと2回から音がした。何だろうか? 階段から赤い服に金属質な長い足が見えた。

 

 まさか!

 

 

「お! なんだ帰ってきてるじゃねぇか! やったなリク! たしかにお前の中にはスターライトの輝きが宿ってるぜ! ま、俺と覇を競い合ったお前なら大丈夫だと信じてたがな!」

 

 

 よろけながらビリーが降りてくる。数日の間にGOD Fingerで一緒にゲームをしたり、クレア様のミュージックビデオを見たり、使っている潤滑油について教えてもらったりしていたので実は結構仲が良いのだ。

 

 

「ビリー。ビデオ屋の床は薄いんだから、あんまりドタドタすると板が抜けちゃう。これ以上ニコの借金を増やすつもり?」

 

 

 ビリーの後ろからアンビーが顔を出す。あまり感情が動いているようには見えない。それがボクには信頼の証のように思えて嬉しかった。こっそり教えてもらったオススメの映画はまだ見れていないので、明日にでも見たいな。

 

 あ、口元にハンバーガーのケチャップが付いてる。きっとリンの部屋で映画でも見てたな……!

 

 

「あ、わりぃわりぃ、つい感極まっちまってよ」

「……リク。あなたの能力はホロウで活動できるレベルと実戦を経て証明されたわ。おめでとう」

「ンナ!(ありがとう! ビリー! アンビー! みんな!)」

 

 ボクはもうお祝いに嬉しすぎて倒れそうなくらいだった。

 

「ンナンナ!?(にしても、なんで皆が居るの!?)」

「何言ってんのよ、この前言ったじゃない。あんたは邪兎屋のメンバーの一人なのよ。社員の慶事を祝うのは社長として当然なんだから! ……アンビーとビリーまで来るのはよくわかんないけど。いつの間に仲良くなったのかしら……?

 

 ニコ……! そっか! ボクは捨てられたわけじゃなかったんだ! 言わばボクは邪兎屋からパエトーンに派遣された派遣社員ってことなんだね!

 

 

「ボンプにあげるには何がいいのかなーって思ったんだけどね。そしたらアンビーがね〜」

「そこからは私が説明するわ。リク、前に私の電気が美味しいって言ってたわよね」

「ンナ(うん)」

「たくさん食べていいわ。先程栄養補給も済ませたことだし」

 

 やっ、やったぁぁぁぁあ! 今のボクのボンプの身体には味覚が搭載されてないから、ボクだけ美味しいもの食べられないのかと思ってた!

 

 

「ンナ!(ありがとうアンビー! 大好きだよ!)」

 

 

 アンビーの口元は微かに歪んでいるように見えた。アンビーも少しはボクに心を開いてくれているのかもしれない。

 

 

 アキラとリンと、邪兎屋の皆は頼んでいたピザやハンバーガーを映画を見ながら食べて楽しんだ!

 

 

 

 明日からまた頑張ろう!

 

 

 

 

 

 





早く仲良くさせてぇなぁ。
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