真・転生したボクが新エリー都で凡夫になった件。


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作:レトルトところてん
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上・最終テスト:危機一髪!? 無限の距離!



0号ホロウも潜らないとなぁ。


 

 

 

 

 

 __ビデオ屋にて。

 

 

 

「んんぅ〜! おいひぃ〜!」

「余ったのはチョコ味か……悪くない」

「ンナ!(お気に召したなら良かったです!)」

 

 

 こうも美味しそうに食べてくれると、こっちも嬉しくなるというものだ。ラーメン屋のチョップ大将や喫茶店のティンさんが丁寧な仕事をする理由も何だかわかる気がする。

 

 彼らがアイスに舌鼓を打っている間に、ボクはパソコンに貼り付きインターノットの呟きを眺めておく。

 

 これもボクの日課だ。どんな依頼が出て、どんなことが呟かれるのか。インターノットでは数多くの情報が飛び交い続けている。

 

 プロキシとして働くことになるなら、今のうちにインターノットというツールに慣れていた方がいい。

 

 

『緊急速報です。新エリー都第八分街の居住区にてホロウが発生しました! 諸地域に住んでいる住民は治安局の指示に従い直ちに避難してください! 繰り返します! 諸地域に住んでいる住民は治安局の指示に従い直ちに避難してください!』

 

 

 付けっぱのテレビに突如速報が入ったようだ。

 

 

「んっ!……うっ、頭がキーンってする……」

「慌てて食べるからだよ。どんなときでも落ち着かないと」

「それはそうだけどさ! ほら、お仕事の匂いがしてきたね!」

「ああ、プロキシとしての出番が来るかもしれないね。リク、インターノットの様子に何か変化はある?」

 

 

 アキラから質問が入ったので視線を戻し、インターノットの投稿を流し見していく。

 

 

【雑談】最近ホロウ多くね?

 

【雑談】学生の間で宿題代行が流行ってるらしい。

 

【注意】怪しいアプリには気を付けろよ。ボンプが危ない。

 

【質問】本当にゴールドボンプなんて居るのか?

 

【質問】アルガリウス分校って実際どう?

 

【雑談】なぁ、深夜に公衆電話から、変な声が……

 

 

 

 発生直後だから、そこまで変わった様子は見られないな。おっと、これは。

 

 

 

 ユーザー:ケセランパサ美 ♡37

 

 【依頼】誰か! 私の、彼との思い出を取り返して!

 

:今年で4年目の彼と、つい先日まで上手くいってたはずだった。でも急に他の女が居ることが発覚して思わず振っちゃった。今は後悔してるわ。私は私が1番じゃなくたって、彼が傍にいればそれでいい。今発生したホロウの中に4周年記念で貰ったマフラーが取り残されてるの! いくらでも払うわ1

 

 

「ンナンナ!(早速細やかな依頼が続々と現れているようです!)」

「そうか。教えてくれてありがとう」

「あっ、そうだ! ねぇお兄ちゃん! 軽ーい依頼をリクの最終テストってことにしない?」

 

 

 り、リン!?

 とんでもないことを言い始めたリンを思わずぎょっと見つめてしまう。目と目があった瞬間、リンはウインクしてアキラへと向き直った。

 

 ええええええ! 流石にいきなりすぎると言うか、なんと言うか__いや、ここでビビるな! 何事にも立ち向かう勇気!

 

 

 __好機逸すべからず……義を見てせざるは勇無きなり。この言葉の意味が、お主にわかるか? 珍妙なボンプよ__

 

 

 ニューススタンドに大量に取り残されたブリンガー長官の新聞を、つまらなそうに眺めていたあの治安官さんの言葉を思い出せ!

 

 

「ンナ!(ボク、やります! 早く一人前になりたいんです! チャンスをください!)」

「ね! 本人もこう言ってるんだし、何より私たちがバックアップすればいけるよ!」

 

 ボクとリンの訴えに少し目を閉じて、アキラは諦めたようにため息をした。

 

「……全く、ボンプの甘え上手は恐ろしいな……わかったよ。リク、君を僕たちパエトーンは全力で支援する」

 

 試すような微笑みを浮かべるアキラ。

 

「本当ならHIUでエーテリアスを前にして最低限動けるかチェックする予定だったんだけど……仕方ないね。明日受ける依頼の完遂が、君のプロキシとしての一歩を踏み出す最終テストだ」

「ンナ!(がんばりますっ!)」

 

 

 よぉーし! 頑張るぞ! 上手いこといけば邪兎屋の皆の力になる第一歩になるはずだ。その為にも充電してこなくちゃ!

 

 勇んで部屋から飛び出すと、青髪ツインテールの少女ショウルが不思議そうに飛び出してきたボクを眺めていた。他のお客さんにビデオの説明もしていたし、ショウルはもしかしたらビデオ屋の店員に向いているのかもしれない。

 

 今はそんなことどうでもいいんだけどね!

 

 

「わわ、そんなに慌ててどうしたの?」

「ンナァァ!(何でもないよ〜!)」

「行っちゃったし……ふふ、何かボンプ・サーカスのワンシーンみたい。久しぶりに見たくなってきたし、18号! ボンプ・サーカスはあるかな!」

 

 

 アキラの部屋にある、充電スタンドに自分で入っていく。実は少し怖い。

 

 何故かって? 充電スタンドの形が人間の両手だからだよ! いつか頭を握りつぶされるんじゃないかという恐怖を耐えて、ボクは明日に向けて意識を霧散させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最終確認するね。今回の依頼は発生した共生ホロウ内の居住区に目的のブツがあるよ』

『目的のマフラーがある場所までは、僕たちがナビゲートする』

 

「ンナ!(はい! お願いします!)」

 

 球状の虚無が、建物を抉り取って存在している。ボクはこのホロウという空間の中で目覚めた。こんなに早く戻ってくることになるとは、流石のボクも予想外だったけど、やるだけやってやる!

 

『……実はこれ、本当はプロキシのやる仕事じゃないんだけどね』

「ンナ!?(そうなんですか!?)」

『プロキシは蓄積され続けた今までのホロウの構造データから、ホロウ内の空間のマッピングを行ってキャロットを作ったり、依頼人の案内を行うわけだけど……プロキシ単独でホロウ内に入ることは少ないかな。でもないわけじゃないから、そこは経験になると断言できるけどね』

 

 キャロットとは時間制限付きのホロウ内のマップデータである。累積されてきたホロウのデータから擬似的に作られたマップのことだ。あくまで膨大なデータによる予測に過ぎないので、たまに間違うこともあるらしい。噂では誤差データの積み重ねを修正できるロゼッタデータっていうのもあるんだとか……今はどうでもいいな。

 

 なるほど。普通のプロキシはホロウ内に入って実際に案内をするらしいから、てっきり単独で依頼をこなすこともあるんだと思ってた。

 

 

『イアスたちと同じように、一応君にも耐侵食塗装はしてあるけどそれは完全じゃない。エーテル活性は低い値を示しているけど、早めに帰ってくるに越したことはないからね』

 

「ンナ!(はい!)」

 

『いい返事だ。心の準備ができたら行くといい』

 

「ンナンナ!(行きます!)」

 

 アキラの言葉を聞くや否や、早速侵入。邪兎屋に連れられてホロウを出たときも感じたけど、やはり少しゾワッとする。この感覚には慣れそうにない__って、まずっ__!?

 

 

 逬る浮遊感。まさか、これは__!?

 

 

 歩いて入ったのに、

 

 

「ンナァァァァ!!!???(なんで空から入ることになるんだよぉぉぉぉ!!??)」

 

『やばいよお兄ちゃん?!』

『これは……予想外だ。まさか初めて入るホロウで誤差に見舞われるなんて』

『落ち着いてる場合じゃないでしょぉぉお!? どうしよ、リクが壊れちゃう!』

 

 リンがアキラを揺さぶっている音が聞こえる。ボクよりもリンの方が焦っているみたいだ。自分より焦っている人を見ると、何でか落ち着いてきた。

 

 

 落ちる。堕ちる。墜ちる。

 

 

 ボクは空中を回転しながら、辺りの風景を見回していた。

 

 

「ンナ!(大丈夫! 心配しないで!)」

 

『心配しないでって、このままじゃ!』

『リン、イアスの準備は終わってるね』

『それはOKだけど! リクには論理コアが無いんだよ!? もし壊れちゃったら!』

 

 

 急速に近付くコンクリートの大地。天へと伸びるビルや家が、ボクから見て下側に流れていく。

 

 もう地面まで10秒もない。

 

 

『……すまない、リク。これは僕らのミスだ』

 

 

「ンナンナ、ンナァ!(大丈夫です! 術式、起動ッ!)」

 

 

 広がる大地。地面へとぶつかる瞬間、突如ボクの膨大な運動エネルギーは空中にて静止した。

 

 

『イヤァァァァァァァ!!??! ……って、……あれ?』

『これは、一体……大丈夫かい? リク』

 

「ンナ!(はい!)」

 

 

 無下限呪術。どこにでもあるはずの無限を現実に収束させる術式効果だが、ボクはこれを無限の距離を生み出すものだと捉えている。

 

 ボクに近付けば近付くほど、無限の距離が収束するなら、ボクの落下による運動エネルギーも無限で吸収できるのだ。

 

『リク、その力は……? 地面に近付いた瞬間、突然落下が止まったように見えたけど……』

『__あっ! そっか無下限! えっ、あれってそういう効果だったんだ! すご!』

『……リン。知ってたんなら、僕に一度伝えるべきじゃないかな?』

『ごめんって! 私も忘れてたんだよ〜! ほら、リーグ・オブ・ボンプで使えるスキルがまさか現実で使えるなんてさ』

『言い訳は後で聞くよ。依頼は続行できそう?』

 

「ンナ!(もちろんです!)」

 

 辺りを見回すと、そこには廃棄された車や、破壊された民家などがあった。

 

 

『一度ホロウに入ってしまえばこっちのものだ。パエトーンの汚名返上と行こう。まずはそこの道路を直進したあと、右に__』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ビリー好きなんですけど火力が低いので困っています。5凸アンドー先輩を入れるしかないのか……?
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