しのごの言わないでやれ。
長崎在住の女性R様から「断捨離を手伝って欲しい。簡単にサボる私を叱って欲しい」とご連絡をいただいた。私の正しい使い方である。R様の部屋はモデルルームのように綺麗だったが、開かずの間がものすごいことになっていた。服と本と化粧品と書類と日用雑貨が散乱し、なにがなんだかわからなくなっていた。これだけのものに囲まれていると、やる気なんて簡単に削がれる。ものには怨念が宿る。ゴーストバスターズ(私)を呼んだのは正解だ。必殺仕事人の腕の見せ所である。
まずはR様のやり方を見守ることになった。R様は、引っ越してから未開封のままだった段ボール箱を開けながら「あ、ここにあったんだ!!」とか、いちいち忘れ物を発見していた。掃除は一向に捗らず、現実を直視したことで疲れ、その疲れだけで何かをやったつもりになり、いきなり「まずは一休み」と言ってお茶を淹れ始めた。ダメだこりゃ。この人は何もやらない。現実をチラ見して疲れて、その疲労感だけで何かをやったつもりになっている。これでは一向に物事は進まない。
鬼になった私は「整理する前に捨てろ。捨てる前に整理するからダメなんだ」と、まずは服を捨てさせた。物量を半分にすることがゴールだったから、一年着てないものは捨てろと言ったが、R様の往生際の悪さは異常だった。まだ着れるとか寝巻きにするとかこれは運動する時のためだとか、運動なんてまったくしないのに「いつか」とか言って、あらゆることを先送りにした。業を煮やした私は「デブに頑固なデブ職人。だからお前は太るんだ。しのごの言わずにやれ!!」と鞭を打った。泣きべそをかきながら服を捨てたR様は、一通り捨て終わった後に「捨てるとスッキリしますね!!何かを成し遂げた気分です!!今日は西陽が怖くない!!」と、調子の良いことを言った。
怠惰なR様だが、税金還付金とか生活給付金の書類だけは、敏速に書き上げた。ゲンキンな女だ。一円と五円と十円だけをかき集めた謎の貯金箱があったので、私は小銭を仕分けした。30キロくらいの重さがあった。両替するにも金がかかる。だが、私はその道のプロなので「小銭を札束に変えてくるから、この金でジンギスカンを食おう」と、自分たちにご褒美を用意した。余った金でスイカを買った。スイカは美味しい。スイカを食べると元気になる。カミングセンチュリーの夏のかけらを歌いながらスイカを食べると元気になる。
鬼になった私だが、ゴミに囲まれながら仕分けをするR様の姿に憐憫を覚えた。開かずの間には、大切な人から貰った手紙やおみくじが埃をかぶっていた。R様だって大事にしたい気持ちはある。気持ちはあるのにそれができない。どうしてもそれをやることができない人の痛みが胸を打った。拾った捨て猫を家で捨てているような、人間の哀しみを見た。R様よ、めっちゃ普通のことを言うが、大事にしてあげようよ。自分を大事にしないと、他人も大事にできないんだよ。ジンギスカンを食べながら、R様は「美味しいものを食べて、帰ったら好きな人が待っていたら、それだけで幸せになるんだね」と言った。そうなんだよ。その逆が地獄なんだよ。学校も職場も家庭もつまらなかったら地獄だよ。どうせなら天国を作ろうよ。泣いて一生。笑って一生。男一匹、今日も行く。
坂爪さん
こんにちは!⚪︎⚪︎です。先日沖縄でお会いした後、改めてお礼メールしようと思ったけど、手紙を書きたくなったので書きました。
沖縄でお会いしてたくさん喋って笑って本当に楽しく嬉しかったです。タイマンが初だったので、今のくすぶってる私だし一刀両断で泣きべそかくまでは想定してめっちゃキンチョーして行ったけど、思い返せばただただ愉快でアホで淫靡でハッピーなひと時だったなーと感じてます。
《余談:淫靡ついでに。坂爪さんがたくさん触れてくれた左肩、実はここ半年ほどずっと関節の痛みがあって通院していたのですが、翌朝なぜか痛みがほぼほぼなくなってて「!?」となりながら病院キャンセルしました。一体・・・?》
ビールを飲みすぎたせいもあってか、余計に夢か現実か分からなくなるような一夜だったけど、翌日Google検索立ち上げたら「暴れだぬきの鬼袋」ページが表示されて現実の実感がわきました。自分で言った記憶があるけど「ラブホの名前デュエル」ってなんやねん。あと、まだシラフだった最初のほうに「オレの顔で今どんな感じに見えるか」みたいなことを聞かれて真っすぐ顔ガン見してた時、正直「かっけーな」と俗っぽい感想しか出てこなかったので、ここで自白しておきます。
「⚪︎⚪︎さんは自分に退屈しているように見える」と言われ、率直に「せやな」と思い、とりあえず今勤めているお店を辞めて一人でフラフラとマッサージの仕事やってくことにしました。退職の背中を坂爪さんに押してもらうの(と勝手に感じているソレ)は人生3回目です。私にとっての「必殺!仕事やめさせ人」すぎる。強欲であること、安心安全を選ぶことについては自分でも別にええやんと思ってるのですが、ただただ自分が自分を「今のお前つまらん」と思ってしまってるならそれが一番きっついダッサい状態やなと。
そんな大それた話じゃなく、今日、明日のことを考えて「フフッ」ってウキウキの笑いがこぼれるような、未知で愉快な日々を生きていきたく小さじ1杯程度の勇気をふりしぼってみました。あと、微量ながら坂爪さんに「ダサい」「カッコ悪い」生きざま見せたないなーという気持ちもあるのですが、これは他者評価を気にする云々ではなくて「気になるあのコの前ではカッコよくいたくて背伸びしちゃうかわいい虚勢」です。スーパーひとり相撲。
「誰に頼まれずとも書いちゃう文章が⚪︎⚪︎さんの真骨頂」と、坂爪さんに言ってもらった言葉、お守りのような鈍器のようなインパクトを以て私の心に居座り続けています(余談:坂爪さんの言葉のセンスが、言葉フェチの私にはたまらん)。めちゃめちゃ調子づいたまま、また誰に頼まれずとも作った本を同封させてもらいました。
仕事や恋愛をはじめ、しくじりと恥辱まみれの黒歴史エピソードをまとめてみた本です。坂爪さんのことは、生き様とかはもちろんなのですが「書く人」として大リスペクトしている面も大きく、そんな御方に自分の“書く”をただただ見てほしいという一方的な願望で本をお送りしています。ひとり相撲の大横綱。いろんなところを飛び回る日々かなと思いますので、これがいつ坂爪さんの目に留まるのか分かりませんが、そのいつかの際には、チラ見(チラ読み)してもらえたら大鼻血で喜びます。3作目もつくったら勝手に送ります(予告)
その存在と、文章を以て、私の人生を何度も軌道修正してくれたり、漠然と、でも確かで深い肯定を届けてくれたり、単純に笑かせてくれたり、いつも、たくさんありがとうございます。引き続きどこかで今日も爆裂に生きてくれてたらなんだか嬉しいです。
おおまかな予定
5月27日(火)長崎県佐世保市界隈
以降、FREE!(呼ばれた場所に行きます)
連絡先・坂爪圭吾
LINE ID ibaya
keigosakatsume@gmail.com
SCHEDULE https://tinyurl.com/2y6ch66z
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