【死ぬか結婚か:テロリスト婚活作戦】
「テロリストを結婚させたら平和になるんじゃない?」
この考えからテロリストを引退させるために婚活パーティが開かれたことがある。
かつて「黒い九月」というテロ組織がいた。彼らの最も有名なテロはミュンヘンオリンピック事件で、人質とともに自爆までしている。
しかし風向きが変わってきた。
「黒い九月」の後ろ盾のパレスチナ解放機構
(PLO)がイスラエルとの共存に方針転換したのだ。そしてPLOは国連会議に参加が認められるようになった。もうテロで声をあげる必要はない。むしろ「黒い九月」を放置すると外交努力が無駄になりかねない。
しかし彼らは自爆をも厭わない冷酷な殺人機械であった。植え付けられた憎悪は簡単には拭えない。「黒い九月」をただ解散しただけでは他のテロ組織に再加入し、イスラエルとパレスチナに憎悪が向かいかねない。そのため「黒い九月」の抹殺命令がくだされた。
しかし「黒い九月」の司令官は抹殺命令を受け入れなかった。そして彼らを救う方法を模索した。そこで生まれたのが婚活作戦だ。
彼らに死ぬ理由でなく、生きる理由を与えることにしたんだ。
司令官達は各地のパレスチナ難民キャンプを巡り、若く美しいパレスチナ人女性を探し頼んだ。
「パレスチナを救って欲しい」
この呼びかけに応じた女性達がパレスチナのために集まった。
開かれたパーティは、大学のプロムパーティのようなものだった。若い男女が出会い、恋に落ち、結婚することが期待された。司令官達は出会いだけでなく祝い金、家、新しい仕事まで提供した。
この作戦は大成功した。全員が結婚し父となり、守る家族ができた元テロリスト達は二度と戦いの世界に身を戻すことはなかった。かつて死を恐れなかった彼らは、家族と離れることを恐れて国外出張の命令も拒否するようにもなったという。
『世界を変えるには、まず家に帰って家族を愛しなさい』これはマザー・テレサの言葉だ。このテロリストの結婚話はまさにその言葉を体現したものだろう。
愛は世界を本当に変えることができるのかもしれない。
だから今日は家族・恋人と過ごそう、世界をより良くするために。
参考:Bruce Hoffman. All You Need Is Love
How the terrorists stopped terrorism. The Atlantic. 2001