一般常識人に新エリー都は生きづらい


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作:こなひじきβ
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10.サメ肌は痛い


エレン大人気、ほんと良いキャラだと思います。
ここ解釈ズレるとめっちゃ怒られそうで怖いなー。


 学校、俺にとってはとても空虚な時間である。将来の目標とかそういうのが全然思いつかないから、しっかり勉強する気も起きない。誰かと特別仲良くなろうという気も無い。俺の欲しい日常と周囲の日常がどこか違うから。

 

 誰もいない教室で一人、真ん中で席についている静寂な空気は、まるで俺の心境を表しているようだ。在りもしない日常を求めて、結局何も得られない。空っぽの自分みたいで、考えれば考えるほど虚しくなっていく。

 

 

 

 ……ええい、止めだ止め。こんな事を考えたって何にもならない。俺は普通の日常を過ごすので忙し――。

 

「ねえ」

「……………………え?」

「いや反応おそ。あんたしかいないでしょ」

 

 席でボーっとしていたところに話しかけてきた一見無愛想に見える彼女は、エレン・ジョー。大きな鮫のしっぽとギザギザの歯からわかるように、彼女は鮫のシリオンである。裏でヴィクトリア家政に勤めているが、本業は俺と同じく学生である。学校では話したことが無かったのだが、今日はどういう風の吹き回しなのだろうか。

 

 

 

 

 彼女と初めて会ったのは『Random Play』の店内。店番として来た彼女はメイド服で、俺はクラスメイトの顔を覚えていなかったから完全に初めましてだった。けれど彼女からは俺の制服姿で同じ学校だと気づき、正体がバラされると危惧して俺にいきなり脅迫を始めてきたのである。

 

「な、なんでしょうか」

「はぁー。……面倒だから単刀直入に言うけどさ。あたしがこのバイトやってる事、もしバラしたら……」

「だだだ大丈夫だ! 俺にはバラすような仲の友達いないから!」

「…………それ、自分で言ってて悲しくなんない?」

「うん、なってきた。辛い、泣きそう」

「えー……」

 

 ビビり散らかす俺の返答が意外だったようで、ちょっと威圧感を減らすどころか憐みの目に変わっていた。

 

「あーもー、これで涙拭きなよ」

「ありがと……ってこれ床拭くやつでは?」

「一緒でしょ」

「んなわけあるかい。床と顔が一緒ってどういう事だよ」

 

 

 

 

 これが彼女との最初の会話だった。いや、何だこの会話。ひたすらに俺が情けないだけの回想だった。それからはビデオ屋で見かけることはあれど、そこまで話をするような仲でもないはず。

 

「悪い。まさか学校で俺に話しかけてくる人がいるとは思わなくて」

「そーね。あんた影薄いからこないだ会うまで気づかなかったし」

「何でそんな息を吐くように貶せるん?」

「影薄いのは事実でしょ」

「はい」

 

 本気で返す言葉が無さすぎてはいしか出なかった。

 

 しかし、エレンが1人でいるなんて珍しい。いつもなら女友達3人と一緒にいるからこちらに来ることなんてまずなかったはずだ。

 

「あれ、いつも話してる友達は良いのか?」

「あー……、皆昨日のカラオケオールでダウン中」

「あぁ、そういう……。エレンは平気なのか?」

「仕事に比べりゃ全然楽。てか皆が飛ばしすぎなだけ」

 

 なんとなく想像はつく。エレンの友達は端から見てもエネルギッシュだとわかる。ダルそうにしているエレンを引っ張り上げていくのがクラスの風物詩となっているのである。で、今はその友達がエネルギー切れを起こしているようだ。

 

「つまりあれか、友達がダウンしていて暇だからこっちに来たと」

「半分正解。……あと今日ビデオ屋行くから、予定教えて」

 

 一応予想は当たっていたようだ。ただもう一つの理由についてだが、ビデオ屋の予定なんてアキラかリンにDMでもなんでもして聞いたら良さそうなものだけど。……もしかして、そういうやつか?

 

「ああ、アキラなら今日は出かける予定無いらしいぞ」

「…………ねぇ、アキラの予定は別に聞いてないから。変な気利かすのやめてくんない?」

 

 

 は~ん、さてはこの子めんどくさ可愛いな? 強がっているように見えるけど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだな、へぇー。

 

 あからさまに目線合わなくなったし、しきりに前髪をいじっている。ちょっと見えづらいけど、頬も染めちゃってる。これが恋する乙女の顔というやつか。人誑し店長も罪なことをするなぁ。

 

 

 アキラの彼女に対する評価は『ちょっと口は悪いけど、友達思いの優しくて良い子だよ』らしい。俺も最初は怖いギャルかと思ったけど、話してみたら結構普通に返してくれる辺り良い子なのは間違いないと感じた。評価通りの子だと思う。

 

「……ウザ、何ニヤついてんの変態。喉笛齧るよ?」

「めっちゃ苦しんでから死ぬやつじゃんやめて」

 

 訂正、口はすこぶる悪い。いや、俺がまだ友達認定されてないだけかも。どちらにせよダメージでかいんだけど。

 

 

 

「エレーン!」

 

 しょうもないやり取りをしていたら、エレンを呼ぶ声が廊下の方から響いてきた。あれは間違いない、エレンの友達三人組だ。ルビーとモナと凛、だったっけ。どれが誰かわからんけど。

 

「そんな大声で呼ばなくていいから……、具合はもういいの?」

「ふっふー、エレンがくれた冷えピタとスポドリのお陰で復活した! 本当ありがとー!」

「……別に、たまたま持ってただけ」

「ふーん、たまたま3人分も持ってたのー?」

「や、本当偶然だから」

「……レシート、袋に入れっぱなしだったぞ」

「っ!?」

 

 友人達から詰められてどんどん顔が赤くなるエレン。心配しすぎてレシート回収し忘れたんだろうなー。ほんとめっちゃ良い子じゃん。そりゃ人気出るわ……人気って誰からの?

 

 何かエレンが友達とわちゃわちゃしだしたから、隙を見て教室から抜け出した。どうせビデオ屋で会うことになるから良いだろう。後ろから『ところでさっきの男誰ー? 制服着た不審者ー?』って聞こえてきたために深いダメージを負った。違うんです、俺はただ影薄いだけの制服着た同学年です。通報しないで頼むから。はー学校つらいわー。

 

 

 

 その後バイト中にエレンから『さっき見たことは忘れろ、あとアキラの予定聞いた事は絶対に言うな』って脅された、ひぃん。その様子を見たアキラが『エレンとサクが打ち解けたみたいで何よりだ』とか言ってたんだけど、ちょっと何言ってるかわかんないです。あれ打ち解けたって言うのかな。『いざとなったら始末するリストに入れられた』とかだと思う。




サクには彼女たちの口撃に耐えられる性能は無い、気の毒だが。

当初の目標である10話分があっさりと書けてしまいました。
ネタが浮かぶ限りはまだまだ書いていこうと思います。
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