一般常識人に新エリー都は生きづらい


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作:こなひじきβ
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9.推定、随一の苦労人


ヴィクトリア家政のメンバーもキャラ濃すぎる。
猫又のいいアイディアが浮かんだらそっちも作りたい。


 俺は今、とてもやるせない気持ちになっている。隣にいるリンとアキラもそんな感じだ。特にリンはそんなことしなくていいよと彼に懇願している。

 

 それでも彼の気は済まないらしく、頭を上げられない様子だった。俺はもう、こんな光景は二度と見たくない。

 

 

 

「ヴィクトリア家政を代表してどうか謝罪させてください。……先日は御三方に、リナが手料理で多大なるご迷惑をおかけして大変申し訳ありませんでした……っ」

 

 

 

 完璧な執事と言えるであろう狼のシリオン、ライカンさん。そんな彼が平謝りしている所なんて、本当に見ていられない。だってライカンさん何も悪くないんだもの。俺の中で数少ない常識人と認定している彼が、非常識人共の割を食っているこの状況に、俺もかなり心が痛む。

 

「もう頭を上げてよライカンさん! もう全然気にしてないから!」

「ライカンさんは何も悪くないじゃないか。寧ろリナさんを止められなかった僕らが悪いんだから」

「いえ、決してそのような事はありません! やはりリナだけを向かわせるべきでは無かった……」

 

 リンとアキラの説得も空しく、ずっと耳がシュンとしているライカンさん。本気で落ち込んでいてかわいそうすぎる。常識的な人ってこの世界だとほんと苦労するよね。

 

「ライカンさん、とりあえず俺はリナさんの手料理を見た瞬間から記憶が無いんですよ。だから正直怒ってるとかじゃ全然無いです」

「サク様……お待ちください、記憶が無いとは……?」

「やっぱりサクもそうだったのか。……実は言うとライカンさん、僕とリンも二人で店に帰ってきた辺りからの記憶が無い。だからリナさんと会ったかどうかもわからないんだ」

「そうそう、なんかスッポリと抜け落ちちゃってるんだよねー。だから別に怒ってないというか、怒れないというか……」

「……リナの料理が、それほどまでに……? そんなの、最早兵器じゃないか……っ!」

 

 あ、珍しくライカンさんの口調が崩れた。まあビビるよね、たかだかいち手料理で記憶障害引き起こしたとか俺も未だに信じらんないもん。

 

 もしエーテリアスがあの料理作れるようになったら人類はおしまいだね! ……これ洒落にならないから止めよう。

 

「それに私たち、一日臨時休業にしたみたいなんだけど……それも覚えてないんだよね」

「ああ、無意識で身を守る行動をしたのかもしれない。気づいた頃には翌々日の朝になっていただなんて、日付を何度も疑ったよ」

「でも私もお兄ちゃんも、ちゃんとそれぞれのベッドで起きたんだよね。不思議な体験だったなー」

「…………」

 

 あれ、なんか俺より二人のほうが重症っぽいぞ? 記憶が丸一日飛んでる上、放心状態のまま臨時休業のお触れまで出してるとかめっちゃ怖い。関係者全員にDMも送られていたから、てっきり無事なのかと思ってたのに……全然大丈夫じゃなかったのか。

 

 そしてあまりにも衝撃的な内容にライカンさん絶句。口を開けたまま固まってしまった。今日はライカンさんの珍しい表情がたくさん見られてお得。いや、言ってる場合じゃないんだけれども。

 

 

「本当に、なんとお詫びをしたら良いのか……」

「ライカンっ!」

「っ!?」

 

 どんどん落ち込んでいくライカンさんに、痺れを切らしたリンが一喝した。

 

「当事者である私たちが気にしてないんだから、この話はもう終わり! わかった?」

「し、しかしリン様。それではあまりにも……」

「だったら、これからもっと私のお出かけに連れまわすから! 時間が合わなかったらしょうがないけど、拒否権は無し! ……これでどうかな?」

「その程度であれば、是非させていただきますが……本当に、それだけでよろしいのですか?」

「うん! これまで以上に呼び出しちゃうから! ついでに色々おねだりとかもしちゃうから覚悟しといてね!」

「……ありがとうございます。リン様の寛大なお心に、心から感謝いたします」

「よろしい! それじゃあ今日はサクと一緒に店番お願いね!」

「かしこまりました、リン様、アキラ様。そしてサク様も。本日は一日空けておりますので、なんなりと」

 

 流石リン様、これまで幾多の男たちを落としてきた手腕は伊達じゃないぜ。この勢いで全ての男を手玉に取れちゃいそう。……後方腕組みお兄ちゃん面してるアキラさんや、頷いてないであなたはリナさんの方をどうにかしてくれや。男はリン、女はアキラ。役目でしょ。

 

 

 

 ちなみに、超時間差で二人の部屋が勝手に片付いていた事に気づいたリンとアキラはがっくりと肩を落としていた。リナさんが掃除をする時、俺はすでに料理にやられていた、という事にしたので責任を問われることは無かった。やったぜ。

 

「サク様、貴方へのお詫びとして本日の店番はお任せください。紅茶を入れましたので、どうぞ奥の部屋でおくつろぎくださいませ」

 

 そしてリナさんと並ぶであろう程に優秀すぎるライカンさんに、今日の俺の仕事ぜーんぶ取られちゃった。……たまには何もせず給料もらっちゃう日があっても良いよね?

 

 

 

「そういえばリナさんが作ったあの料理ってどうなったんだろう……?」

「それでしたら、厳重に梱包した後ホロウに置いてきましたのでご安心ください。あれを放置しているとどういう訳かエーテリアスが寄ってくるものですから」

「それはまたお疲れ様です……。あれ、ライカンさんは記憶とか大丈夫だったんですか?」

「お気遣い痛み入ります。多少の眩暈と一時的な嗅覚の麻痺には襲われましたが、記憶に問題はありませんでした。長年リナのあれを間近で見てきたものですから、恐らく免疫ができているのではないかと」

「免疫て」

 

 もうウイルス兵器の類じゃん。めちゃ強そうかつ免疫もあるライカンさんですら身体に異常をきたしちゃうレベルっておかしすぎる。俺よく生きてたなほんと……。というかライカンさん、あの兵器料理をホロウに置いてきた直後にビデオ屋来たってことは休んでなくない? 超人か?

 

「ライカンさんも、客のいない今ぐらいは休んでていいんじゃないですか?」

「サク様、ありがとうございます。ですが、ご心配には及びません。これ位出来なくてはヴィクトリア家政は務まりません故。……それよりもサク様のお体の調子はいかがでしょうか。お昼には胃腸の回復効果がある薬膳料理もご用意しておりますので、どうぞお召し上がりください」

「は、はい……」

 

 あまりにも配慮が行き渡りすぎていて男だけど惚れちゃいそう。これがヴィクトリア家政の成せる業か……。あ、リナさんの腕も確かなんだけどあの人はマイナスがちょっとでかすぎたからノーカンです。

 

 

 ちなみにライカンさんの働きによって、今日の売上は上々だったらしい。特に女性客にウケまくってた。これでアンビーの最低売上日の分が相殺されたんだって。よかったね。




さすがにリナの手料理は本家だとここまではひどくない……ですよね?
今のところサクのヒロインとかは全く考えてないです。彼は常識人なので。(?)
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