「人権侵害」か「罪証隠滅の恐れ」か 保釈判断に揺れる裁判官たち
刑事事件でなかなか保釈が認められなければ人権侵害の批判が起こる。ただ、保釈後に逃亡や罪証隠滅が実行されればそれもまた批判の対象となる。
刑事裁判官はこの「バランス」の間で常に難しい判断を迫られている。
東京地裁が保釈実務の運用変更を始めた。より良い制度へと向かう第一歩となるのか。
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「もっと早く保釈認める余地」
保釈実務の改善を求める声が強まったきっかけとなった冤罪(えんざい)事件がある。化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長ら3人が2020年3月に逮捕・起訴され、後に起訴が取り消された「大川原化工機事件」だ。
弁護側は東京地裁への保釈請求で、社長らが「口裏合わせ」を疑われないよう、他の社員と連絡を絶つことを約束した。しかし、裁判官は簡単に保釈を認めなかった。
否認していることを理由に検察側が「罪証隠滅の恐れがある」と反対したことが影響したとみられる。
逮捕から約11カ月後、社長と元取締役はやっと保釈が認められた。保釈保証金は社長が2000万円、元取締役は1000万円に上った。元顧問は勾留中に胃がんが見つかったのに保釈されず、被告の立場のまま亡くなった。
3人の保釈請求は計20回に及び、異議申し立てに対するものも合わせると、可否の判断に関わった裁判官は23人に上った。
ある中堅裁判官は取材に対し「保釈判断に被告が有罪となりそうな見込みがあるのかは関係がない。事件の関係者が多く、罪証隠滅の恐れがあると判断されやすいケースだったのだろう」と指摘する。
その上で、元顧問が無実の結論を得る前に亡くなったことを念頭に「結果的にはもっと早く保釈を認める余地があったのかもしれない」と話す。
当番制→担当制に変更
東京地裁は複数の裁判官が持ち回りで保釈審査をする「当番制」をやめて、24年から担当裁判官を固定するようにした。対象となるのは、初公判前に争点を整理する「公判前…
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