狭い路地裏を縫うように走っていく猫のシリオンらしき男と、治安局の服を着た男。
「はぁ…!はぁ…くそっ!止まれクソ猫!!!!!町中でぶっ放すぞ!!!」
『朱鳶班長!容疑者は四丁目の路地裏を通り交差点に出ました!』
『そのまま追跡してください!私が先回りします!』
『あのクソ猫すばしっこくて撒かれそうです長官…!』
「お前らひったくり相手にしつこいんだよ!!」
「うるせぇ…犯罪に軽いも重いもないんだよ!止まれ!(ノルマのために!!!!)」
交差点を右に曲がった瞬間、犯人の体が瞬時に押さえつけられ手錠をかけられる。
「13時48分、窃盗の現行犯で逮捕します!」
「はぁ…はぁ…いやぁ流石の朱鳶班長…まさか犯人の逃走経路を先回りするなんて。」
「周辺の地図を頭に入れて、一番逃走に使いそうなルートを割り出しただけですよユーリくん。」
「普通できないですよそれ…ま、なにはともあれ一件落着ですね!」
「えぇ、ユーリくんは犯人追跡中の言動について報告書でしっかり書いてくださいね。」
あ、絶対怒ってる朱鳶班長…無線付けっぱだったぁ…最悪だ
「ハイワカリマシタ」
「はぁ…お昼を食べそびれちゃいましたね。」
「あ、ならルミナススクエアに美味しいラーメン屋さんありますよ!」
「………」
「あれ?班長??」
え、いやすぎて無視…?流石に傷つきます朱鳶長官…
「(落ち着いて朱鳶…先輩も言ってたでしょ?後輩との円滑なコミュニケーションのためにも食事を共にしたりするのは普通だって)」
「あの…やっぱ一人で食べてきます…はい…」
「そ、そうですね!一緒に食べましょうか!」
「え?!いいんですか!案内しますね長官!(やったぞー!!!!!)」
さほど遠くもないため、犯人をさっさと他のチームに渡して(何故か変な目で見られた)長官と歩き始める。
「そういえば朱鳶班長はラーメンとか食べるんですか?」
「体調管理の面もあってなるべく自分で作るようにしていますね…嫌いというわけではないですけど。ユーリくんはどうですか?」
「自分はもっぱらコンビニか食堂ですね…簡単なのなら作れますが手の込んだものとなるとどうしても…スイーツは色々作れますよ!
「ふふっ…ユーリくんが甘い物を食べるところは、特捜班の日常風景ですから知ってますよ。」
「うっ…そう言われると恥ずかしい…」
中央交差点の角を曲がるとラーメンの匂いが食欲をそそってくる。店の規模は大きい訳では無いが隠れた名店というものだ。
「ここですここ、ここのトマトラーメンが美味しくてですね。」
「トマト…!じゃあそれにしましょう。」
「大将トマトラーメン二つ!」
トマト大好きなのはすでに把握済みなんですよ!近くの店調べといて本当に良かった…!
「そういえば…もうそろそろヤヌス区総監選挙のじきですね…恐らく特捜班もこれに駆り出されると思います。」
「…ブリンガー長官の票集めのためにですか?メディア、企業、ときて次は治安局を私物化なんて…さすか日和見主義の長官様ですね…あっ、す、すいません朱鳶班長…長官のことも考えず色々と…!」
「いえ…ブリンガー長官がどんな風に言われてるか私も知っています。ただ…あの旧都陥落の時に私を助け出してくれた長官のことを信じたいんです…いつかあの時のような長官に戻ってくれると信じて…。」
「朱鳶班長…」
「おいおい…お客さん達!そんな辛気臭い顔でラーメン食っても味わかんねぇぜ!」
2人の目の前にトマトのせいか真っ赤になったラーメンが置かれる
「はいよ!トマトラーメンあがり!」
「さ、食べましょうかユーリくん…!伸びちゃいますからね。」
「はい!大将いただきます!」
−数分後−
「中々の味でしたね…トマトの酸味とうまくマッチしたラーメンが最高でした。」
「えぇ、今度は四人で一緒にきたいですね。」
「あ、いいですね〜、赤牙組の件が片付いたら青衣先輩とセスも呼んで打ち上げラーメンしますか!」
「…………」
「班長?朱鳶班長?」
な、なにかまずいことを言ってしまったか…?
「ユーリ君は何故、青衣先輩と呼ぶのに私は長官なのですか?」
「へあっ?!」
「いえ…今話を聞いてるうちに、ふと気になって…何か理由があるのかな?と」
「い、いや、やはり長官は我等が特捜班のリーダーであらせられますので敬意を持ってですね…」
「むぅ…ここは先輩と同じく、私も朱鳶先輩とよんでみてください。さ、どうぞユーリくん。」
「え、えぇ急にそんな…」
「よ、呼んでくれたら今度報告書作成のお手伝いしてあげますよ?」
そんな顔反則じゃん…好き…
「しゅ、朱鳶先輩。あ、あはは…なんか急に変えると照れますね。」
「「……………」」
先輩の顔がみるみる赤く…めっちゃかわいい!!
「か、帰りましょう朱鳶長官!」
「そうてますね…はい。帰りましょう。(ただ先輩と同じ呼び方になっただけなのに…なんでこんなに恥ずかしいのかしら…///)」
「あついねぇ!治安局のお二人さん!」
茶化すように天狗の大将がちゃちゃをいれる
「大将あまり変なこと言うと逮捕しますよほんと」
「わ、わりぃわりぃユーリの旦那…ほら!また来いよ!」
「全く……朱鳶先輩?!顔めちゃくちゃ赤いですよ?!朱鳶先輩!朱鳶先輩ー!!!!!!!!」
結局この後、一分近くフリーズしていた先輩を待って署に帰ると、案の定だが青衣先輩に何があったのか楽しそうに聞かれたので、全て話すと更にからかわれたことをここに書いておく。
PS.セスにはバラさないよう釘を差しておいた。単純すぎて朱鳶先輩の前でいいそうだからな…