赤牙組の件も組のtop達がまだ捕まってないが一旦の収まりを見せ数日、我らが特捜班も連日の捜査から一度解放されてそれぞれの帰路につくこととなった。
「朱鳶班長、青衣先輩、自分こっちなんで先失礼します。セスもまた明日な」
「お疲れ様でしたユーリくん。報告書は明日の昼までに必ず。いいですか?必ずお願いします。」
「朱鳶よそう脅すでない。ユリ坊はちと報告書を書くのが下手なだけであってサボってるわけではなかろう…多分」
「ユーリ先輩お疲れ様でした!ちゃんと報告書書いてくださいね!」
「わーっとるわ!それに青衣先輩それフォローなってませんからね??」
三人共自分のことをなんだと思っているんだろうか?確かにちょっと報告書書いたり、書類仕事をするのが苦手だからパトロールに行ってはいるが…断じてサボってるわけではない!
「そんなに心配なら朱鳶よ、お主が家で教えてやればよいではないか。今週の休日は被ってる筈故な。」
「駄目です!ユーリくんは一人でしっかりと書けるようにならなくては成長しませんから。そ、それに異性が同じ屋根の下で二人きりというのも駄目です!」
「(相変わらずの初っぷりよ…こちらが心配になるわ)」
「と、いうことで残念じゃったのユリ坊よ二人きりになれなくて」
「青衣先輩?!何言ってるんですか?!」
「先輩!ユーリくんをからかって遊ばないでください!」
絶対からかってるよあの人…人?ロボ?いつもこうなのだから意地が悪い。
「帰りますからね!じゃ、お疲れ様でした!!」
早足で三人から離れ、地下鉄に乗り六分街に向かう。目当ては勿論あのビデオショップだ。ビデオの返却期限も過ぎてるから怒ってるだろうなぁ…
「こ、こんにちは〜…」
18号くんがこちらを見るなり短い手をこちらに向ける。
「ンナ!ンナナ!(ユーリさんが来ましたよ!店長さん!!)」
「あーっ!やっと来た!もぉー…返却期限守らないと駄目だよお兄さん!」
「ごめんリンちゃん仕事忙しくて家にも帰れなくてさ…あれ?アキラくんは?」
「ぼ、僕はここだよ…ユーリ」
疲れ果てた様子で入ってくる店長、これはまあ…いつものだろうな
「どうした?そんなボロボロで…誰かに襲われたのか?」
「お客さん達にちょっと捕まっててね…ご贔屓にしてくれるのはありがたいのだけど困っちゃうね。」
「お兄ちゃんモテモテだもんね〜?」
「リン…からかわないでくれよ…」
でたよ天然人たらしの店長…無自覚で常連客を堕としていくのだからたちが悪い。やっぱ逮捕しようかな…ムカついてきたぞ…うらやまけしからん!
「はいこれ延滞料金とビデオ、悪かったね店長達」
「ちゃんと返却してくれれば大丈夫だよ!それよりユーリお兄さんは体調大丈夫なの?家にも帰れないって…どんなお仕事?」
「ん?あー…えーっと…」
まずい…ここで治安局なんて言ったら変に怪しまれるし…かと言って何かいい職が…
「ほ、ホロウ調査協会の下っ端でね!いやぁ下っ端だから色々雑用が大変で…」
「え?!ユーリお兄さんホロウ調査協会の人だったの!すごいね!」
あぁなんていい子なんだ…今の新エリー都にこんな性格のいい子がいるなんて…パエトーンだけど
「リンちゃん達の方が凄いさ、自分と変わらない年齢でこんな立派なビデオ屋経営してるのは中々だよ?」
「あ、あはは…そう言ってもらえると嬉しいな」
恐らくここの収入はプロキシ業9.5割ビデオ屋0.5割といったところか…こんな立派な建物を二人で住むとは羨ましい…
「ところでアキラくんってそんなモテモテなの?」
「うちの常連客の殆どはお兄ちゃん目当てだもん!とーってもモテモテだよ!さながらこの前見たアニメのハーレム?ってやつ?」
「リン…僕はお客さんに丁寧に接客してるだけであって、そんなハーレムだとかじゃないからね…ユーリもからかわないでくれ」
「羨ましいねぇ…その歳で女性に囲まれてモテモテですか!」
「ユーリ?さすがに僕でも怒るからね??」
「ごめんごめん…じゃ、また来るよ店長達。あ、それと関係ないと思うけど最近、赤牙組が色々してるみたいだから気を付けてな。」
「夜道は気をつけるとするよ、ありがとうユーリ」
「今度は延滞しないでねー!ユーリお兄さん!」
見送ってくれた二人をあとに帰路につく。
「(この店は店長達二人とポンプが最低でも二体…話を聞くに店長達は運動神経がいいわけでもないから、制圧は自分一人でもできる…だけど…)」
「(何度も足を運んでわかったが…この街の人達に好かれてるし、あの子達も悪いやつには思えない…青衣先輩も前にポロッと言っていたが、プロキシ達の無差別逮捕は自分もどうかと思っている。)」
ブリンガーの日和見親父はそろそろ始まる選挙に向けて手柄が欲しいんだろうが…結局それだって自分達がブリンガーの手駒にされているようなものだ…本当にこれで良いのか?
「どちらにせよ今は保留…パエトーンはこちらに気づいてないのだから好きに手を打てる…なら今じゃなくてもいいだろう。」
長いため息を吐き、重い足取りで自身の家へと帰っていく。
朱鳶班長には悪いが…自分はブリンガーの親父を英雄とは見えない。過去がどうであろうと、企業に擦り寄り自派閥のために活動している奴を見ると反吐が出そうになる。
「今は赤牙組に集中しよう…奴らが研究所から盗んだってものが何かわからないが…街の人達が少しでも安全に暮らすためにも一刻も早く解決してやる…!」