君達はパエトーンを知っているだろうか。数年前インターノットに現れ、瞬く間に伝説のプロキシとなった人…それがパエトーンだ。
千面相だかなんだかと言った善悪関係ないカスとは違って、ホロウに迷い込んだ猫探しだったり『良い事』をしてくれるプロキシだってんだから、インターノットでもそりゃ大人気なわけよ。まあなんでこんな事話してるかって言うと…
「なになに?私の顔なにかついてた?!」
「…いや、次何を借りようか考えていてね」
「それならこの作品とかどうかな!これは数年前に有名なホラー映画監督が作ったものでー…」
この目の前で楽しそうに説明してくれる青髪の女の子と…
「リン、ユーリが困ってるよ」
何人もの女性を虜にしてそうなイケメンくん、この二人があの伝説のパエトーンかもしれないのだ…………。
きっかけは本当に偶然だった、偶々インターノットでみつけたプロキシの姿なんて銘打たれた、ホロウから助けられた人の動画に映っていたこのボンプ…どう見たってこのビデオ屋のボンプと瓜二つなのだ。いやわかるよ?ボンプなんてこの新エリー都に限ったって何体いるかわからないくらいいるんだから偶々だって言いたい気持ちもわかる!だけど店長達に聞いたら…
『え、うちのボンプ?そう!これ服とかスカーフとかうちのオリジナルなんだ!可愛いでしょ?』
とリンちゃんがあっさり結論を出してしまった…なんで?!なんで誰も気づかないの?!てか店長達もなんでそんなボンプに店番させてるの?!オニイサンワカンナイ…
「じゃ、じゃあこれ借りようかな?」
「はーい!ユーリお兄さんお得意様だからもう1本サービスしとくね!」
「うちを利用してくれて助かるよユーリ」
「そりゃここはビデオ愛好家からすれば穴場だからね。(怖い物見たさできてるだけです…すいませんでした)」
「ごめん店長ちょっといい!大事な話があるんだけど!」
でた…自分がこの二人をパエトーンだと決定づけた人にして太もものまぶしいお方、便利屋『邪兎屋』の社長…ニコ・デマラ。まだ二人がパエトーンかも?と疑いだけだった頃、この店でそれとなく18号くんを観察していた時、急に現れて言った彼女の一言で全てを確信してしまった。
『パエトーン…一生のお願い!手伝ってほしいことがあるの!』
『ニコ!シーッ!!!』
『あ、やば…ごめん店長…!』
もはや隠す気はないと思っていいのだろうか?この時は流石に、気づいてなかったふりをしながら心臓バクバクでお会計したあと逃げた。18号くんに怪しまれなかったのも奇跡だっただろう。
「じゃ、店長達またくるよ。頑張ってね。」
「ユーリお兄さんまたね〜!」
「あぁ…ユーリも頑張ってくれ」
店を出たあと、携帯が鳴り着信相手を見てつい顔をしかめてしまう。
「ヨシ…朱鳶班長、自分は今日休暇であった思うのですが…」
「ごめんなさいユーリくん、急な事案で人手が足りないの…申し訳ないけど来れないかしら。」
「(サヨナラキュウジツ…)わっかりました…着替えたらすぐ向かいます。」
「相手は赤牙組ですから銃の所持を忘れずに、あとホロウ内捜査用の薬も…万が一逃げた場合は追うようですから。」
研究所襲撃…本当に赤牙組がやったのか…?もはや強盗団の規模では無いような気もするが…
「了解しました班長。本官の休暇残り分は長官とのお食事でチャラということでよろしいでしょうか。」
「ふぇ…?な、ななな何を言ってるんですか?!」
携帯越しでも顔真っ赤のがわかるくらいの慌てっぷりだ、休日返上なのだからこれくらいは許してほしい。
「休日返上のちょっとした恨みからくる意地悪です!申し訳ありません長官。すぐ向かいます!」
「そ、そんなことする暇があるなら早く来ること!以上です!!!」
さて……パエトーンの件はまた今度だ…逮捕すれば大手柄だろうがそんな気にもなれないしな…。今は赤牙組の件に集中しよう、長年(大嘘)の勘がこの件は荒れると言っている。
「さて…ブリンガーの日和見親父は嫌いだが、他ならぬ我が愛しの朱鳶長官からの頼みだからな!ユーリ・ブラッドレイ!現場に急行します!」