看護マニュアルが誘導した過大請求
サンウェルズでは不正請求が報じられた後、2024年9月20日に外部の弁護士を委員とする特別調査委員会を設置し、調査を進めてきた。11月には決算発表を延期し、最終的に2月12日に特別調査委員会の調査報告書が公表された。
これを読むと、看護オペレーションマニュアルによって組織的に訪問看護の過大請求が行われたことが確認できる。
ざっくり言えば、1日3回訪問看護したら必ず記載せよ、複数人で訪問しても必ず記載せよ。1日3回やると、1人月81万円の売り上げにつながる、とマニュアルに記載されていた。現場は、記載を基に「必ず過剰な訪問看護を行うべきだ」と理解し、実践していた。
マニュアルの記述は次の通りだ。
◎教育部が作成・改訂を担当する「看護オペレーションマニュアル」の2023年4月改訂版では、訪問看護計画書の「訪問予定の職種」欄の記入例として「看護職員:1日3回、週7日訪問」と記載し、赤枠・赤字で「必須で記載」と表記されていた。
また、同行訪問に関しては、訪問看護計画書の記入例に「必要時複数名訪問にてケア実施」と記載し、赤枠で「複数名加算の内容を記載」と表記されている。
◎「看護オペレーションマニュアル」の訪問看護報告書の「特記すべき事項」欄の記入例として、「看護:1日3回、週7日訪問 パーキンソン病により、ADL介助を要する状態であり全身状態の観察が必要なため」と記載されている。
◎教育部が作成した「訪問看護概論研修」と題する施設の開設時研修の資料には、「PDハウスでは…毎日 1日3回(日中 夜間早朝 深夜) 複数名24時間対応体制あり で訪問看護を提供しています」と記載されており、訪問看護に関わる1カ月の利用者1名あたりの負担費用の例示として、1日3回及び複数名訪問を実施することを前提とした場合、81万680円であると記載されている。
また、「訪問看護の算定」と題する研修資料(2022年9月21日付)では、1日2回訪問と3回訪問の売上差異及び1日1回の複数名訪問、2回の複数名訪問、3回の複数名訪問の売上差異が示されている。
◎サンウェルズの役員及びマニュアルの作成に関与した従業員は、入居者の疾患の状況を踏まえ、必要性が認められない場合にまで1日3回及び複数名訪問を強いる趣旨で、これらのマニュアルの記載をしたものではなかった。
例えば、「看護オペレーションマニュアル」の「必須で記載」との記載は、「1日3回、週7日訪問」と記入することが必須という趣旨ではなく、訪問看護計画書等において当該欄の記入は必須であり、失念しないよう注意喚起する趣旨でなされたものであった。
また、その欄に「1日3回、週7日訪問」と記載していたのは、1日3回及び複数名訪問を標準とする訪問看護の方針に基づき、一番多い訪問形態である「1日3回、週7 日訪問」を記入例として示したものであった。
※著者注:役員やマニュアルの作成者は「必要に応じて、場合によっては1日3回または複数名で訪問看護ができるように」という意図でマニュアルを作成しただけであり、「必ず1日3回かつ複数名で実施せよ」と指示した覚えはないと弁明している。
そもそもマニュアルに「売上差異」が記載されていること自体が、医療行為という点から言えば、違和感があるが、1日3回訪問だと、30日間で加算額が21万6000円、1日2回だと12万円で、入居者50人だと月480万円の差となることが示されていた。この会社の経営陣はこうした記述を問題なしと理解していたようだ。
また、複数人での訪問についても、複数人で訪問すると1日1回の場合の加算が8万1000円、1日2回だと16万2000円、1日3回だと27万円と示されていた。入居者50人の場合、1日1回と3回の差は月945万円、2回と3回の差は540万円と分かりやすく記載されていた。
このような制度上の構造により「1日3回、複数人での訪問」が横行するに至った。