インデックスをヒロインとするオリ主転生系とある魔術の二次創作


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作:網浜
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12.イマジン・ブレイカ


 漆黒なる石板に、紅く染められし我が真名が踊っていた。

 

 要するに、黒板に赤のチョークで俺の名前が書かれていた。『影月暁夜』。書いたのは俺自身だ。右の手にて握りしめたるチョークにて、かつかつと書かせていただいた。

 

「皆様、俺の名前は影月暁夜! 好きな食べ物は羽付き餃子。予期せぬ病魔で頓挫し今日まで来れませんでしたが、これからはこのクラスの一員として登校させていただけるようになりました。どうぞよろしく」

 ここはとある高校、一年七組の教室。その前方、黒板の前に立ち、俺は精一杯の自己紹介を行なっていた。

 その勇姿を眺めるは、黒板横の出入口付近に控えるインデックス及び月詠小萌。そして、各々の席に座りぽかんと愉快な表情をこちらに向けてくれている、我が知られざるクラスメイト達(補習組)。

 彼ら彼女らのその眼差しが、俺の全身に痛々しくも突き刺さる。

 

 ひとまず、ここに至る経緯を整理しよう。

 前回、俺が月詠小萌に要求した『クラスのみんなへのご挨拶』は、実にすんなりと了承された。特に反対する理由もないとのこと。

 「補習に出てる子だけなので、全員は揃ってないですよ」と断りを入れる月詠小萌であったが、もちろんそれで構わなかった。上条当麻さえそこにいればよいのだ。

 そうと決まると月詠小萌の行動は早かった。文字通り早速、補習が行われているという彼女のクラス、一年七組の教室へと案内される俺及びインデックス。

 辿り着いた教室では、黄泉川愛穂が眠そうな顔で教卓にもたれかかり、補習生たちをぼんやりと眺めていた。月詠小萌の代理で自習の監督をしてくれていたらしい。

 我々の到着に気がついた彼女は教室の前方、黒板側の出入口より現れた我々に「おや、もうきたじゃんよ」などと呟きながら歩み寄る。そして月詠小萌と二、三言葉を交わした後に手をひらひらと振りながらその場を後にした。

 彼女に関しては、俺の出現により余計な仕事を増やしてしまった感があるので、そこは大変申し訳なく思う。それは月詠小萌にしても同じことだが。

 そうして、教室前方には月詠小萌と俺及びインデックスが残された。教室中の視線は必然、見知らぬ俺と珍奇なる白シスターに集中することとなる。何? 誰それ? 外人? シスター? コスプレ? ロリ? そんな声がそこかしこで囁かれるのが聞こえる。

「はいはーい、みなさん注目でーす」

 その視線を取り戻すかの如く、月詠小萌が手を叩きながら声を上げた。

「まず、今日はせっかくの補習なのに急に自習になってしまってごめんなさいでした。ですがー、それをかき消すビッグニュースが皆さんにありまーす。なんと、ずっと病気で学校に来れなかった仲間がついに復帰してくれる事になりましたー。影月暁夜ちゃんです」

 ではどうぞー、と月詠小萌の小さな手のひらが俺に向けられた。せっかく月詠小萌に向かっていた皆の視線が、再度俺に戻ってくる。

 なるほど、と俺は思った。それはそうだろう、とも。

 クラスのみんなにご挨拶をしたい、と俺が言ったのだ。であれば今から思う存分したまえ、そういうことだろう。

 大勢(というほどの人数でもないが)の前での挨拶。自分でやると言ったことだが、まるで慣れぬ行いである。マッハの速度で手汗に満たされる我が手の平。果たして、俺にこなせるものだろうか。

 俺はひとまず、インデックスを覗った。彼女は素早い目の動きで教室中に、そして窓の外に視線を向けている。学校の光景が珍しいのか、あるいは、敵対魔術師を警戒しているのかもしれない。

 そんなプロっぽいインデックスを見ながら、俺は腹を括る。できるか、ではない。やるのだ。この事態は結局、俺が招いたものなのだ。強く当たってあとは流れで――大相撲より受け継いだその崇高なる精神さえあらば、いける。

 覚悟を決めた俺は、勢いよく黒板の前に踊り出し、そして赤のチョークを引っ掴んだ。

 突然の動きに目を丸くする観衆、その視線を感じつつ、俺は一心不乱に己の名を黒板に書き殴る。チャットGPTより授けられし、神聖なるオリ主ネームを。

 

 そして、今に至る。

 微妙に韻を踏んでいた我が挨拶はどうやら滑り散らかしたようであった。なんとなくの沈黙が、教室を支配する。

 だが俺はめげない。心を強く保ち背筋を伸ばし、補習生達を見渡した。

 そうして、まばらに埋まる座席の中に、俺は主要メンバーを見つける。探すまでもない程に目立つ三人組。そのイカれたメンバーを紹介するぜ。ネタバレ注意。

 一人目。金髪、金ネックレス、青サングラスのチンピラ。手足の長い多重スパイの陰陽師。あれそのサングラス変装用じゃなかったっけいつまでかけてんのでお馴染みのロリコン・アンド・シスコン、土御門元春。ちなみに、さすがにアロハではなく学生服を着ている。というか彼、立場的に俺の存在知ってるのかな。知ってるよな。どう思ってんだろう。怖。考えんとこ。

 二人目。青髪、そしてピアスの大男。テノールボイスの性癖クソ煮込みうどん。似非関西弁を自在に操る米処出身。パン屋に下宿してる。よく二次創作でレベル5にされてる。藍花悦説有。そんな氏名不明の彼こそ、青髪ピアス氏。なにやらインデックスを凝視している。何故だろう。なにか知っているのか? もしや本当にレベル5なのか? 怖。触れんとこ。

 そして三人目。我らがカミやん。

 以上。まぎれもなき三馬鹿、デルタフォースがそこにいた。ちょっと感動した。

 

「……ええと」

 主に俺のせいで発生した沈黙がしばし続き、月詠小萌が困ったような声を出したその時である。

「あっ、お前、隣の!?」

 先生の言葉にかぶさる形で発せられた驚きの声。その主、上条当麻はその場で立ち上がり、俺を指差していた。

 あの上条当麻が、である。俺を認識し、あまつさえ指をさし、語りかけている。インデックスの時ともまた違う、深い感慨を覚える俺。今主人公と空間を共にしているのだ。

「なになに、カミやんの知り合いかにゃー?」

 上条当麻と俺、二人の顔を交互に見やりながら口を挟むのは土御門元春。口元はにやついているものの、その目つきについてはサングラスに阻まれて窺うこと能わず。

 上条当麻は「ああ、いや」と肯定とも否定ともつかぬ声を発し、続けた。

「知り合いっていうか、俺んちの隣に住んでる……っていうか、お前もご近所さんだろうが!」

「知らんにゃー。ご近所にヤロウが何人住んでようが、俺にゃどうでもいい事ですたい」

 なんとも言い難い独特の口調でへらりと笑う青サングラスの不良。だがその笑顔の下でどうせ碌でもない謀を考えているんだ。俺は詳しいんだ。

「そんなことより!」

 妙に興奮した低音が教室に響く。今度は青髪ピアス氏だ。彼もまた立ち上がり、唾を撒き散らしながら叫んだ。

「そこの聖職者属性の洋ロリの紹介がまだですが!」

「私?」

 突然水を向けられ、インデックスは目を瞬かせる。

「せや! フー・アー・ユー! ワッチュア・ネインッマ!?」

 勢い込む青髪ピアス氏。病休明けのクラスメイトの存在を『そんなこと』で片付ける彼の胆力には感心せざるを得ない。やはり只者ではない……本当にレベル5なのでは?

 疑念に囚われる俺をよそに、インデックスは前のめりな青髪ピアス氏に若干引きつつ自己紹介を行う。

「Index-Librorum-Prohibitorum、だよ」

「イン……なんて?」

「日本語では禁書目録だね」

「日本語ではってなんやねん」

 訝しむ青髪ピアス氏。俺はすかさず助け舟を出す。

「あっ、この子は宗教的に死ぬほど多くの名前があるので、あまりお気になさらず」

「死ぬほどは言い過ぎにも程があるんだよ」

「インデックスさんと、そう呼んであげてください」

「目次て。明らかに偽名やないかい」

「む。偽名じゃないもん!」

「せやかてくど……いや待てよ。そうか。コードネーム、っちゅうわけか。そういうミステリアスな要素を含んどるキャラ付け、っちゅう訳やね」

「そういう訳なのです」

 どういう訳かはわからなかったがとりあえず肯定することとした。ひとまず流れには乗る。これが俺一流の処世術にしてコミュニケーション・スキルというやつだ。

 果たしてそれは功を制したようで、青髪ピアス氏は感慨深げに何度も頷く。

「ほーん。ええやん……厨二・ミステリアス・ロリ・シスター。アリやで。アリよりのアリやと思います」

「わかる」

「全然わかんないんだけど」

「清純なはずのシスターに敢えてのミステリアス要素……背徳の香りを感じざるをえない。しかもロリ」

「わかる」

「背徳した覚えないんだけど!」

「なんやキミ、影月クンちゅうたか、随分話のわかるやつやないかい」

 インデックスの抗議の声など意にも介さず、ふっと笑みを浮かべる青髪ピアス氏。そして彼はやおら俺の傍へと歩み寄り、すっと右手を突き出した。

 シェイクハンド。挨拶の構え。そのまま、彼は謎にさわやかな笑みと共に言う。

「ボクの名前は    。影月暁夜クン、キミはどうやら『わかっとる』側の人間みたいやね。キミとはこれからも仲良うやっていけそうや」

「あっ、はい。どうも」

 右手の赤チョークを左手に避難させ、彼の手を握り頭を下げる俺。

     。なるほど、青髪ピアス氏はそういう名であったのか。名前があったのか。それは、とても不思議な意外さだった。意外に思うことが意外。そりゃあるだろう、名前ぐらい。人間だもの。

 なお、彼の名については原作未登場であることを踏まえ、今後は『青髪ピアス』と表記させていただく。ご承知おきください。

「ちゅうわけで、お友達になった記念にインデックスちゃんのこと紹介してくれへん? キミらどういう関係? まさか恋人同士とか言わんよな。言うたらキミ、儚き友情は早くも露と消え去るわけやけども。リア充には死」

 リア充って久しぶりに聞いた気がする。

 どうやらこの青髪ピアス氏、随分フレンドリーに接してくると思ったら、俺を介してインデックスとお近付きになろうという魂胆のようだ。本人そこにいるんだから直接行けばいいのに――などと無粋なことは言うまい。将を射んとする者はまず馬を射よという諺もあるわけだし、なによりこういう思春期特有の趣、童貞の侘び寂びなど嫌というほど知っている俺なのだから。

 しかし、それにつけてもこの青年、原作と比べ随分とインデックスに興味津々のように見受けられる。レベル5だからか?

「いや、恋人なんて、そういうアレではなく。言わば心の友といいますか」

「マブなんだよ!」

 それを聞き、青髪ピアス氏の目がきらりと光ったように感じられた。

「ほーん。お友達。ええね。じゃあ友達の友達は友達っちゅーことで、インデックスちゃんとボクもまたマブなんやなもはや」

「ええ……それはちょっと」

 インデックスが頬を引きつらせ、一歩退いた。あの博愛の権化たるインデックスがだ。それは青髪ピアス氏の溢れ出る変態性に起因するものであろうか。あるいはもっと深く恐ろしい何かを感じ取ったのか。レベル5……だからだというのか?

 すかさず彼と彼女の間に割って入る俺。

「あっ、すみませんちょっとお下がりください。うちのインデックスさんお触りNGなので」

「なんでや!」

「あっ、でも俺はお触りOKなので最悪それで我慢していただければ」

「なにが悲しうてヤロウ触らなあかんねん!」

「落ち着け青髪」

 大いに憤慨してみせる青髪ピアス氏を、さすがに見かねたのか上条当麻が抑えに入ってきた。

「せやかてカミやん、洋ロリやで! シスターやで! 今後永久に関わることのないかもしれん黄金の組み合わせなんやで!?」

「永遠に関わるな。お前の場合なんか犯罪の臭いするから」

「はー!? ボクは紳士ですよ?!」

「黙れ変態紳士!」

 上条当麻の一喝。変態紳士って久しぶりに聞いた気がする。

「お前のせいで話がおかしな方向に進んで滅茶苦茶になってんじゃねえか。見ろ、小萌先生なんてどうしたらいいかわからず半泣きになってるぞ」

 教室中の視線が一斉に月詠小萌に向く。そこには目をうるうるさせる女児(成人)がいた。

 泣かせた。その事実がクラス一同の心を一つにする。

 そうして糾弾の視線を浴びることとなった青髪ピアス氏である。原作では授業をガン無視していた上条当麻が浴びていたあの視線だ。

「ぐっ」

 さすがに劣勢を感じたのか、引き下がる青髪ピアス氏。彼を自席へと送り届け、上条当麻はやれやれと肩をすくめた。

「すまなかったな影月。自己紹介の途中だったのに、青髪ピアスが邪魔しちまって」

「口火を切ったのはカミやんだったけどにゃー」

「うっ。す、すんませんでした」

 土御門元春の茶々にバツの悪そうな表情を浮かべ、軽く頭を下げる上条当麻。

「あっ、いや、別にそんな。お気になさらず」

 そして、主人公様に頭を下げさせてしまったことに恐縮しきりな俺の言葉が響き、以降誰も喋らなくなった。

 自分の言葉を最後に沈黙が訪れるというのは、何度経験しても気まずく心細いものである。俺は言葉を探しながらも助けを求めるかのように周囲の人々へと視線を彷徨わせる。インデックス、月詠小萌、青髪ピアス氏、土御門元春、そして上条当麻。

 救いはやはりと言うべきか、ヒーローからもたらされた。

「ええと、この状態で続きをどうぞ、ってのもなんだしな」

 上条当麻は俺とインデックス、月詠小萌を順に見渡し、少し考えてから言った。

「せっかくだから、青髪ピアスじゃないけど、俺たちの方も自己紹介しといた方がいいんじゃないか……と、思うんだけど。影月、小萌先生、どうかな。補習時間は余計に使っちゃうことになるけど」

「あっ、はい。それは、ぜひ」

 前のめりに賛成する俺に、月詠小萌も「先生も賛成ですー」と同調してくれた。

 上条当麻は居住まいを正す。

「じゃ、まずは言い出しっぺの俺から、かな。俺は上条当麻。どこにでもいる平凡な男子高校生で、特技はええと……不幸?」

「フラグの乱造だにゃー」

「許されざる男やで」

「うるせえ! とにかく、よろしくな」

 そう言って、青髪ピアスと同じように右手を差し出す上条当麻。

 そして俺はやはり先ほどと同じように、特になにも考えずその手をとった。

 とってしまった。

 そして。

 

「そげぶっ!!」

 

 そんな断末魔の声を残し、俺はこの世界から姿を消した。

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