全国各地で人工知能(AI)などの情報処理を行うデータセンター(DC)の建設計画が持ち上がる中、事業者と住民の対立が顕在化している。DCの集積地となってきた千葉県印西市でも、駅前の商業地で浮上した計画に市長が異論を唱えるなど、物議を醸す状況だ。自治体側はDCの設置基準がつくれないか模索するが、難しさがあるという。それはなぜか。(中根政人、山田雄之)
◆「DC銀座」市長からも抗議の声
「市全体のまちづくりにとって極めて重要な場所。地域の状況にふさわしい施設が整備されるべきであり、それはデータセンターではないと考えています」
4月9日、千葉県印西市の藤代健吾市長がX(旧ツイッター)で、DC建設計画にかみついた。
建設予定地は、北総鉄道北総線千葉ニュータウン中央駅の北側。大型ショッピングモール東側の空き地だ。ここに高さ52.7メートルの地上6階建て、延べ床面積約3万平方メートルのDCを造る。工期は2026年1月から2028年2月とされている。
印西市は東京都心や成田空港へのアクセスの良さ、地盤の固さなどを理由に、グーグルやアマゾンなど外資系IT企業のDCが立地し、「DC銀座」とも呼ばれてきた。電力を大量に消費するDCのため、高圧送電のケーブルや変電所の整備なども進められてきた。
◆条例見直しなどは現時点で「白紙」
だが、固定資産税の増加などを念頭にDCの立地を好意的に受け止めてきた印西市でも、駅前商業地での建設計画を巡り、不安を示す住民の声が強まっている。
予定地近くに住む30代の男性は「業務用の車両の通行が増え、交通事故のリスクが高まらないだろうか。施設からの騒音や排熱も心配だ」と語る。
市によると、これまでに、このDC計画への懸念などに関する100件以上の意見が寄せられたという。
市は4月18日、DCを建設する際などの「市独自の新たなルールづくり」について、市民から意見募集を始めた。担当者は「最も好ましいやり方を検討していく」としつつ、条例見直しなど手法は現時点で「白紙」。「ちょっと四苦八苦している」と本音を漏らす。
◆「事業者側の住民への説明責任が不十分なまま」
今回の事業主体の「印西ファイブ特定目的会社」(東京都千代田区)は「用地取得前から、市と協議しながら法令に従って進めてきている。市や近隣の関係者と丁寧な対話を重ねながら取り組む」とコメントした。
千葉ニュータウン中央駅一帯では、西側の住宅地にも別のDC建設計画が存在する。こちらは、地上4階建て3棟などを建てる内容で高さは最高33.5メートル。延べ床面積は6万7000平方メートルを超え、工期は2028年12月までを予定するとしている。
駅北側のDC計画地から徒歩で15分程度しか離れていないが、こちらの計画地は印西市に市境を接した白井市桜台地区にある。従って、印西市の新たなルールづくりの対象外だ。
白井市の担当者は「(DC設置などに関する)何らかのガイドラインが必要との問題意識は印西市と共有しているものの、具体的に動いているわけではない」と答えるにとどまる。
このDC計画に対する市民の怒りも強まっている。住民組織「住みよい6番街をまもる会」の共同代表を務める長島悟さん(77)は「事業者側の住民への説明責任が不十分なまま、強引に事業が推し進められようとしている。日照権や排熱などの影響を考えれば、地域社会を揺るがす大問題だ」と強調する。
◆東京・江東区は「建設対応方針」を策定
DCには大量の計算を実行するための画像処理装置(GPU)を使ったサーバーが多数配置される。大量の電力消費を伴うだけでなく、...
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