なぜ政治家は失言するのか?失言対応で露呈した石破政権の危機管理能力
■永田町に伝わる気をつけるべき「6つの『た』」 今村氏が辞任した2日後、同氏が所属する二階派の定例会では、本人不在で重苦しい雰囲気の中、同派最高顧問の伊吹文明元衆院議長が所属議員に「ちょっと一呼吸入れて考えればそうおかしなことは起こらない」と話し、発言するときに特に注意すべき以下の「6つの『た』」を訓示した。これが今でも永田町の語り草となっている。 (1)立場をわきまえること (2)正しいと思っていることを話すとき (3)多人数の場で話すとき (4)旅先で話すとき (5)他人の批判をするとき (6)例え話をするとき 「コメを買ったことがない」という江藤前農水大臣の発言も、旅先(出張先)での、多人数の場で、大臣という立場をわきまえなかったため、失言となった。さらに7つめの「た」を加えるならば、米価が高騰しその対策の最中という「タイミング」も最悪だった。 今回の江藤氏の失言について、ある二階派の閣僚経験者は「江藤さんも6つの『た』に気をつけていればこんなことにはならなかったのに」と話すなど、いまも語り継がれている。 政治家が失言するのはほとんどが「政治資金パーティー」での「ウケ狙い」や「リップサービス」だ。江藤氏も「ウケを狙った」と話していたが結果は失言、そして次の例はリップサービスのつもりだったのだろう。 ■「復興絡みの失言は即アウト」命取りとなる失言とは? 今村氏の辞任から2年後の2019年4月10日、再び二階派所属の桜田オリンピック・パラリンピック担当大臣(当時)が自民党議員でのパーティーでの挨拶で、議員を持ち上げるつもりで「復興以上に大事なのが同僚議員だ」と発言した。また東日本大震災の復興に関連する失言だった。 今村氏の失言の時と同様、安倍政権の対応は迅速だった。午後6時過ぎの発言だったが、午後8時過ぎには菅官房長官(当時)が桜田大臣を呼び出し、発言の内容を確認、更迭の判断をしている。こちらも発言して2時間後に辞任となった。当時、官邸幹部は「復興がらみの失言は即アウトだ。安倍内閣は全大臣が復興大臣ということで最優先にしてやってるんだから」と更迭理由を明かしている。