中日“極貧打線”問題 本拠地を狭くするだけで解決できるとは…石川昂弥、ブライト健太らの“覚醒期待”も「本当にやるべきこと」は別にあり?
ソフトバンク、ロッテは本拠地の改修でホームラン量産
このように本拠地を狭くする施策はこれが初めてではない。2015年にはソフトバンクの本拠地であるヤフオクドーム(現・PayPayドーム)が「ホームランテラス」、2019年にはロットの本拠地であるZOZOマリンスタジアムが「ホームランラグーン」という名称で、同様の施策を行っている。 果たして、その影響はどの程度あったのだろうか。ホームランテラス、ホームランラグーン設置の前後3年のソフトバンク、ロッテの打撃成績を並べてみると以下のようになっている。 <ソフトバンク> 2012年:打率.252 70本塁打 452得点 2013年:打率.274 125本塁打 660得点 2014年:打率.280 95本塁打 607得点 ・ホームランテラス設置後 2015年:打率.267 141本塁打 651得点 2016年:打率.261 114本塁打 637得点 2017年:打率.259 164本塁打 638得点 <ロッテ> 2016年:打率.256 80本塁打 583得点 2017年:打率.233 95本塁打 479得点 2018年:打率.247 78本塁打 534得点 ・ホームランラグーン設置後> 2019年:打率.249 158本塁打 642得点 2020年:打率.235 90本塁打 461得点(※コロナ禍で23試合減少) 2021年:打率.239 126本塁打 584得点 こうして見るとソフトバンク、ロッテとも本拠地を狭くしたことでたしかにホームランが増えている。 とりわけ、2019年のロッテが顕著で、前年の倍以上のホームラン数となっている。ここまで劇的ではなくても、中日打線のホームラン数増加は十分に期待して良いのではないだろうか。
とはいえ、新戦力の補強は必須か
ただ、細かく見ていくと、本拠地が狭くなった以外の要素が大きいこともよく分かる。2019年のロッテは、前年まで日本ハムでプレーしていたレアードが加入し、チームトップとなる32本塁打を記録した。これに加えて、新外国人のマーティンも14本塁打を放った。 ソフトバンクも2017年にロッテからデスパイネが移籍し、いきなり35本塁打を放つ活躍を見せた。狭くなった本拠地の利点を最大化させる補強を実行することで、さらなる得点力のアップに成功したといえるだろう。 中日の長打力不足が課題と言われているのは、決してここ数年のことだけではない。それにもかかわらず、それを解消できないのは有効な補強ができていないからだ。 近年では、巨人から中田翔を獲得したが、高額年俸(推定年俸3億円)に見合うだけの働きを見せることは全くできていない。守り勝つイメージの強かった落合博満監督時代も、ウッズや和田一浩、ブランコといった長距離砲を獲得していなければ、黄金期は築くことはできなかったかもしれない。 ホームランウイングの設置は、大きな前進かもしれないが、それだけで勝てるほど簡単な話ではないはずだ。過去のソフトバンク、ロッテの事例を見ても、これを機に補強戦略を今一度、見直すことは必要不可欠と言えそうだ。 西尾典文(にしお・のりふみ) 野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。 デイリー新潮編集部
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