テーマ経済対策と消費税減税
野党からは物価高やトランプ関税への対応として、一時的な消費減税が提案されています。提案には食料品の軽減税率の一時的な引き下げも含まれます。
Q.
日本経済の現状を踏まえると、一時的な消費税減税を行うのは適切である。
集計結果・個別の意見
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減税を正当化するような景気後退局面ではない。消費税は社会保障財源として位置付けられているので、消費税収が減るような政策は好ましくない。百歩譲って、もし食料品への軽減税率を8%から5%あるいは0%に引き下げるのであれば、標準税率を引き上げ(例えば10%から12%)でバランスを取るべき。「物価高」といってもコメ、生鮮食品、電気代など特定品目の上昇率が高いことが特徴。影響を受ける世帯への現金給付が適切。
再分配政策として食料品の軽減税率は効果的ではない。一時的な消費減税は、人々の消費のパターンに歪みを与える影響が大きいだけである。
物価高・関税措置の先行きは不透明で、減税は時限的では済まず、恒久化せざるを得ないリスクが高い。将来消費税を元に戻す際の、景気への悪影響も懸念される。事業者・行政の事務負担も極めて大きい。(上の回答でも書いたように)対策をするなら生活困窮層に的を絞るべき。
消費税を減税すると、元の水準に戻すのが難しくなり財政再建が遠のく。長期的に財政を持続し社会保障を維持することが、短期的な景気対策より重要だ。
一時的な減税は税務コストが高く、また元に戻す際の政治的ハードルが高いので、減税は恒久的な税制改革の議論のほうが望ましいのではないか。現役世代の負担を減らすには、所得減税の方が望ましい。
「一時的」とはいっても「政治的」には一旦減税をすると増税には相当のエネルギーが必要となる。また、一時的減税は減税前の買い控えと、増税前の駆け込み需要を誘発するため経済の安定を却って損ないかねない。一時的な対応であれば、低所得層を対象とした給付や社会保険料の減免の方が望ましい
第1の問いと同じ理由。関税の被害が一部生産者や家計に留まるならば、そこに集中的に保障したほうがよい。例えば米中関税戦争がエスカレートして、行き場を失った米国産穀物などが大量に安値で流入した場合、国内消費者は恩恵を受ける。その場合にはむしろ消費増税して、被害を受けた国内生産者に所得補償すべき。一方、日本が全般的経済危機に陥るような場合には、全ての政策対応が検討対象になる。
こういった質問に答えるためには、減税財政出動が日本経済・財政に与える影響に関して信頼できる試算が必要。そういった試算を知らない。
消費税はタックスベースが広い、より公平な税である。所得格差に対応するのであれば、負の所得税導入など、ターゲットを絞った百年の礎となるような政策に関する議論が必要である。
2024年のエンゲル係数は40年ぶりの低水準であるが、最低所得10分位(平均年間収入217万円)は33.8%、最高分位(平均年間収入1,496万円)は23.9%である。こども食堂、フードバンク、炊き出し、年金生活者への支援が必要。消費税減税は支援が必要でない所得階層への支出になる。長期的な財政状況の考慮して判断するべき。
これまでの消費税率の引き上げの歴史を見ても、消費税率を減税後に元に戻すことは極めて困難である。その結果、財政規律が損なわれる危険性があり、そのリスクを考えれば、消費税減税は、経済対策としては、望ましい政策ではない。
財政が健全な状態とは思えない。なにかあるたびに減税を提案したり、細かく税制をいじることに、根本的な意義があるとは思えない。それについて語ることすらも、時間の無駄ではないか。
上記の問題への回答に挙げた対策の効果と公平性に対する疑問に加え、一時的に始まった消費税減税を予定通り終了することには、多くの政治的な困難が予想される。
コロナ前の2019年度決算から2024年度補正後予算まで一般会計税収は15兆円増加したが、歳出は同時期に25兆円増加し、税収を53兆円上回る。公共サービスの負担を先送りしないためには減税の余地はない。
コロナ禍において英国やドイツで時限的な消費減税を行ったが、効果は限定的だった。一時的な減税の間は消費が多少増えるが、減税が終了した後には消費が減ると考えられるため、全体的な効果は打ち消し合うと考えられる。コロナ禍という不確実性の高い状況とは言え、トランプ政権下でも同様に不確実性が高く、大きな効果は期待できない。また、消費税は逆進的であるため、高所得の家計へのサポートを増やすことにもなる。
子育て世代など若年の子持ち世帯のなかで、所得制約にある世帯に対して、一時的な減税を行うことは、あり得ると思われます。
上記の通り日本の景気の現状は景気刺激を必要とする状態にはない。また消費税率の引き下げは多額の消費を行う高所得者の税額をより多く削減するため、低所得者の生活を保障する施策として効率が悪い。
海外の研究で,消費税率を下げても相当分の物価減少につながらないとの報告があり,日本での消費減税の物価減少効果は限定的ではないかと考えるため.
先の質問の回答の繰り返しになるが、現時点で消費税減税にコミットするのは尚早かと思うが、消費税率を一律にせず、必需品と、それ以外で差別化することには賛成。
対処すべきは食料などの生活必需品であり、消費税の一律減税は妥当ではなく、軽減税率の対象となっている食料品の税率を0%にするのが一案だろう。ただし食料品対象とは言え、消費税減税の恩恵を比較的多く受けるのは支出の多い非低所得者層なので、より低所得者対策の色を濃くしつつ手続きコストを減らすなら、一律の給付金も考慮すべきだろう。
現状の経済的不確定性のもとでは、家計が貯蓄にまわす傾向にあるために、消費税減税の効果は限定的だと予想される。 消費税減税ではターゲティングの効果に限界があるため、例えば低所得者層へは別の政策で対応するほうが効果が高い。
こと消費税の減税ということを考えると、さまざまな政治的事情から一時的なものでなく恒久的なものになるであろう。したがって、消費税減税を打ち出すのであれば、金融所得課税や所得税率の見直しなどの恒久増税を前提とすべきであるが、そうした議論はまったくない。
時限的な消費税の減税によって、小売業者の設定する(税込)消費者価格を下げる効果がどこまであるかわからない。買い控えや駆け込み需要など、予測が難しい市場変動が増えることも望ましくない。
EU諸国における付加価値税の減税(一時減税を含む)の価格への影響に関して、学術研究の結果にはばらつきがあるものの、価格を低下させる効果は小さかったことが複数の研究で示されている。一時減税による価格低下が小さいだけでなく、減税の便益の大部分が企業側に帰着した(企業が利益を増加させた)ことを示した研究もある。そのため、物価高対策としての消費減税の効果は限定的で、税収の損失に見合わない可能性を懸念する。
効果は限定的であるだけでなく、一度下げたら上げるのが大変。
世界的にみて、債務増加に対する長期金利への影響をより注視するようになりつつあるように窺われる。英国にてトラス政権下で発生したようなことを避けるように、政策を運営する必要がある。
消費税減税はたとえ一時的でも賃金上昇への圧力を弱めることになり、人手不足の問題を長引かせる。
消費税減税といっても、10%を一律に8%に引き下げるなどは適切ではない。物価上昇に所得増加が見合っていない層、特に低所得層、にターゲットを絞った減税が適切である。その意味で、食料品の時限的消費税率引き下げは一案だと思うが、一律5%に引き下げるのは適切ではない。
問題が、インフレによる実質賃金の低下にあるのだとすれば、政策的に優先しなければならないのは、少なくとも物価上昇を相殺する程度の賃上げを促すことではないか。とくに、労働者の4割を占める非正規労働者が、この問題で苦しんでいると思われる。同一労働同一賃金の徹底と、非正規労働者の賃上げに注力すべきだ。実質賃金の低下のたびに減税で対応すれば、いくら財源があっても足りなくなる。
食料品の減税をするなら一時的ではなく恒常的減税をするべき。消費税は格差を助長する逆進性がある。食費が家計に占める割合は低収入世帯の方が高いので、恒常的な食料品免税は逆進性を緩和する効果がある。又一時的減税が価格減少に直結する保証はなく、食料品メーカーは他社メーカーとの競争に迫られなければ値段を上げる可能性もある。その企業行動が家計に与える影響について試算をした上で議論をするべきではないか。
消費減税を一時的に行うことによって、それが恒久化してしまう恐れがある。元に戻すのが政治的に難しくなり、また、戻せたとしても、選挙前などにいろいろな理由をつけて、減税するということが行われるようになってしまう。
現在の「一時的な消費税減税」の議論は、財源論・財政論として、A)赤字国債発行だけでなく、B)社会保障支出の抑制やC)財政の持続可能性など、様々な議論が混在している状況である。従って、a)短期的な拡張的マクロ経済政策としての議論とb)中長期な社会保障政策・財政政策としての議論を切り分けることが難しく、減税が実現した場合の制度的・政策的な帰着や社会経済的影響の範囲が見通し難く、妥当性の判断が難しい。
一時的な消費税減税は短期的な消費喚起には一定の効果が見込めるが、社会保障費の増加や財政の持続性を考えると、税収減によるリスクが高く、将来的な増税圧力を招く可能性がある。特に、働く世代への将来的な負担増加が懸念される。
減税するならば消費税ではなく、働き盛りの世代に影響の大きい所得税だと思います。社会保険と税の違いを無視してよければ、累進性のない社会保険料率を下げられるとなおよいと思います。
日本の財政の維持持続性を考慮すると、一時的とはいえ消費税減税を行うのは好ましくないようにも思える。より一層の物価高も懸念される。しかし、実体経済には良い影響がありそうなことも否定できない。
これまでの経緯を考えると「一時的な減税」に実際はならないと思います。
時間とともに消費税率を増減(減増?)させると異なった時点間の相対価格を歪めてしまうので消費税の経済学的なメリットが発揮できなくなくなるのではないか.また,一旦下げたとしても再び元に戻すことに政治的にコミットできるかも怪しい.仮に景気対策が必要であったとしても,他に効果的な手段がありそうだ.
一時的な減税を行う事務的コストも高い上に、消費税減税は現在もすでに非常に高い将来的な負担を負っている現役・将来世代の負担をさらに高めることになるため。
一般論として税率をコロコロ変えるのは不確実性を上げるのでよくないのではないかと思います(あまり自信ないですが)。また、特定のもの、たとえば食品だけ下げる、というようなことをするのには特に反対です。理由は、①他の財やサービスとの価格比率を歪めるので社会厚生を下げる、また②特定の商品の税率が下がると嬉しい利益団体などが運動をするというような社会的に無駄な行為を助長する懸念があるからです。
消費税は財政の中核を担う重要な歳入源のはず。これを一度でも景気対策や物価対策の手段として引き下げれば、今後、経済が悪化するたびに「前例」として再び減税を求める声が強まるおそれがある。こうした動きは、財政運営の予見可能性を損なう。
一時的と言いながらも、結局は元の税率に戻すことが難しくなり、恒久的な減税となる可能性がある点が気になります。ただ、日本では過去に消費減税を行ったことがないので、経済効果の測定だけでなく、きちんと政治的にコミットできるのかどうかを確認するために、実験的な意味も込めて減税を行うという発想もあるかもしれません。
テーマ
経済対策と消費税減税
一時的な消費減税「不適切」8割超 恒久化を懸念、経済学者調査
物価高やトランプ関税による景気悪化への懸念から、与野党が夏の参院選に向けて経済対策の検討を進めています。減税や給付といった経済対策の中身が争点です。
日本経済の現状を踏まえると、減税や財政出動などの経済対策を行うのが適切である。
日本経済の現状を踏まえると、一時的な消費税減税を行うのは適切である。
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