日本保守党の百田尚樹代表が自身のユーチューブ番組で少子化対策の議論になった際、女性は「30(歳)超えたら子宮摘出するとか」と発言した。
そうすれば女性は焦って子どもを産む―との趣旨だったようだ。批判を浴び、百田氏は発言を撤回し謝罪したが、それで済む話ではない。
女性に「産む役割」を強要し、その尊厳を傷つけた言語道断の蔑視発言である。暴言とすら言えよう。
百田氏は、故・安倍晋三元首相と共著本を出すなど親密な関係が知られた。家族などの伝統的価値観の重視を訴え、昨年設立した日本保守党は先の衆院選で3議席を獲得し、政党要件も満たした。税金を原資とする政党交付金の支給対象だ。
国政に責任を負う公党の代表としての品位を著しく欠き、少子化対策の議論をおとしめた。そうした人物をトップに置く党の見識も問われる。
8日配信の番組で、同党事務総長の有本香氏が「子どもがいることが幸せという価値観をどう取り戻すか」と尋ねた。
百田氏は「小説家のSFと考えてくださいよ」などと前置きし、「女性は18歳から大学に行かせない」「25歳を超えて独身の場合は生涯結婚できなくするとか。皆焦るで」と述べた。
物議を醸すことを織り込んだ「炎上」狙いだった可能性はあろう。経済的理由や社会構造に関する言及もあった。だとしても、右派論客として一定の影響力を持つ人物の発言を荒唐無稽だと見過ごしてはなるまい。
底流にある「若いうちに結婚、出産することが女性の生き方として望ましい」といった考えは、保守の政治家たちに今も根強く残る価値観だからだ。
女性と出産を巡る問題発言はこれまでも繰り返されてきた。
2007年に当時の柳沢伯夫厚生労働相は女性を「産む機械、装置」に例えた。その後も「たくさん産んでください」(菅義偉氏)、「子どもを産まなかった方が問題」(麻生太郎氏)といった発言がやまない。
しかし、性や出産では本人の意思が尊重されるべきだ。
国連の女性差別撤廃委員会は先月、選択的夫婦別姓の導入などを政府に求める勧告を行った。個人の多様な生き方を認めない日本の制度に対し、国際社会は厳しい視線を向けている。
自分の生き方を自分で決め、望む人は安心して子を産み育て、思う存分に働ける社会が求められている。
その実現こそが、あるべき少子化対策のはずだ。
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