月並みとは何か ASDと芸術
文学史に俳句が出てきて、俳句に興味を持ったので「20週俳句入門」という本を買ってみた。20週に分けて俳句の作り方を教えるという本だが、第一週目は「自分のために作る」と何度も念押しされていた。初めは自分のために作っている人が、選者の気に入るような句を詠むようになってダメになってしまうケースがあまりにも多いらしく、くどいほど書いていた。この前読んだ文学史の本にも同様のことが書かれていて、江戸時代で選者がいい句を選ぶという方式が出来てから、もうずっとあるっぽい。「月並み」という語源は「月並み俳句」から来ているらしい。全く知らなかった。月に一度選ばれるから月並みというらしい。正岡子規がこれを痛烈に批判した。他にも「点取り俳句」とも書かれていた。
俳句はあまり見ないが、現代の詩や短歌で全く同じようなものを感じる。3か月ほど毎日詩集を音読していたら、詩の鑑賞眼がかなり磨かれてきたと自分で思っているのだけれど、「これは嘘を書いているな」というの詩や短歌が物凄く多い。現代の文芸批判でもあるし、自戒でもある。noteや2ちゃんねるの詩スレを見ても「今回の選者は〇〇だから」みたいな書き込みを見ることがある。
画家の友人曰く、絵でもそういう傾向があるらしく「こういうのでいいだろ」みたいな絵を描いている人が多いらしい。点取り芸術。月並みアート。
それで社会が回っているから問題はないんだけれど、僕の美学には反するし、作品の質も落ちると思う。
僕や友人のように、そのような月並み芸術を蛇蝎のごとく嫌う人と、むしろ「寄せにいく人」の違いはなんなんだろうと思っていたのだが、発達障害が関係しているかもしれない。
ヘンリー・ダーガーという人は生前は掃除で生計を立てていたらしいが、自閉症っぽかったらしい(正確な診断は出てない)。死後に1万5千ページに渡る膨大な物語が発見されて、アウトサイダーアートのスターになった。もちろんどこにも発表していない。
発達障害についての本は数年前に結構読んだのだが、当時から知見や政治的立場がかなり変わっているようなので「ニューロマイノリティ:発達障害の子どもたちを内側から理解する」という本を読んだ。その本に「定型発達者はお金や他者の笑顔などがモチベーションになるが、ASDはそれらでは報酬回路が活性化せず、自分の好きなことをしているときに快楽を感じる」と書いてあった。自分の特性が脳科学で解説されていると感じた。ASDの人と話すとよく「健常者の話はつまらない、輪に入るのがしんどい」と聞くが、これは「会話」へ何を求めるのか、脳の構造から違っているからなんだと納得した。定型発達の人は「お互いに笑うこと」を会話の目的にしているっぽいが、僕は「興味深い話をすること、議論を通して人生や創作についての考えを深めること」を目的にしている。音楽やお笑いなど、趣味の話なども面白いが、一番面白いのは議論だ。だから友達ができない。
この報酬回路の違いが、芸術観に関わっているのかなと思った。安易な二分法はよくないが、あえてざっくりいうと、定型の人は作品を「社会貢献」「社会的地位」「金銭」を主眼にして作っているが、ASDの人は「好きだから」以外にない。だからASDの人から見れば、定型の人の作品は「月並み」で「大衆に迎合して自分を押し殺した作品」に見える。逆に定型の人から見れば、ASDの作品は「金にもならない独りよがりの作品」に見えると思う。どっちが良いとかではなく、脳が違うのだと思う。
もちろん人間は多種多様で、ASDもスペクトラムがあるので、僕にも「社会貢献」「社会的地位」「金銭」というモチベーションはあるにはあるのだが、かなり薄い。薄いけれど存在はしているので、その動機を剥きだしにしている人を見ると「羨ましい」と妬ましく思い、防衛機制で「媚びた作品」だとこき下ろしてしまう。
こういった負の感情はマインドフルネスで処理したい。僕はASDがかなり濃い方なので、社会や金銭目的で作品を創るのが苦手だ。自分が書きたいことしか書けない。ブログも10年以上しているが、書きたいことを書き散らしているだけで、お題を貰ったときなどは筆が乗らなくなってしまう。
現代詩や短歌の現状が終わっていると感じていたが、自分の感じ方、脳の作りの問題なのかもしれない。僕は僕の好きな詩を書いて、一番自分の好きな詩をメールで賞に応募しようと思う。選者に寄せるみたいなことは苦手なので、受からないかもしれないけれど、知名度があがれば瞑想の普及に役立つかもしれないし、100万円あれば好きな本がたくさん買えるし親孝行ができる。
ASDに生まれたことが幸なのか不幸なのか分からないが、好きなことをしているだけで楽しいというのは幸せなのかもしれない。



コメント
1会話に何を求めるか? の部分がとても好きです。asdをかかえているのでどの記事もとても共感できることばかりです。更新楽しみにしていますね。