“ハーバード大への留学不可に” 米国土安全保障省発表 経緯は

アメリカのトランプ政権は、ハーバード大学に対して留学生を受け入れる機関としての認定を取り消すと発表しました。
外国人の学生が新たにハーバード大学に留学できなくなるほか、在学中の外国人の学生もほかの大学に転出しなければ、アメリカでの滞在資格を失うと説明しています。

これはアメリカの国土安全保障省が22日に声明を出して明らかにしたもので「ハーバード大学の『学生・交流訪問者プログラム』の認定を取り消すようノーム長官が指示した」としています。

その上で「これにより、外国人の学生は新たにハーバード大学に留学できなくなり、在学中の外国人の学生についても、ほかの大学に転出しなければアメリカでの滞在資格を失う」と説明しています。

トランプ政権は4月に「ハーバード大学が反ユダヤ主義に屈服し、国家安全保障を脅かしている」などとして、外国人の学生に関する情報提供を大学側に要求していましたが、大学側が拒否したとしています。

国土安全保障省のノーム長官は「政権はハーバード大学が、キャンパス内で暴力や反ユダヤ主義を助長したことや、中国共産党と協調した責任を問う。この措置は、全国のすべての大学と学術機関に対する警告だ」として、ほかの大学にもくぎを刺しました。

またノーム長官はSNSで、ハーバード大学に対し資格を回復したければ、留学生が関わった抗議デモやルールに違反する行動について過去5年間の記録をすべて提出するよう改めて要求していることも明らかにしました。

アメリカメディアは、ハーバード大学にはおよそ7000人の留学生がいるとして、大学にとって重要な資金源となっている留学生からの授業料収入を絶つことも政権側のねらいにあると伝えています。

トランプ政権は、これまでにもハーバード大学への助成金の一部を凍結したほか、税制上の優遇措置を取り消すと表明するなど、大学側への圧力を強めていました。

ハーバード大「政府の措置は非合法 わが国に深刻な損害」

今回の措置についてハーバード大学はNHKの取材に対し「政府の措置は非合法だ。私たちは外国からの学生と研究者の受け入れが継続できるよう全面的に取り組んでいる。こうした留学生や外国からの研究者は140を超える国々から訪れていて、大学とこの国に計り知れない貢献をしている」としています。

そのうえで「今回の報復措置は、ハーバードのコミュニティーとわが国に深刻な損害を与える脅威であり、ハーバードの学問や研究の使命を損なうものだ」とコメントしています。

ハーバード大と政権対立の経緯は

トランプ政権とハーバード大学は、学生への対応などをめぐり、対立を続けていました。

【助成金の見直し発表】
ことし3月にはアメリカ教育省などが声明を出し、ハーバード大学とその関連団体に対して、総額およそ90億ドルの助成金や契約を見直すと発表しました。

去年、アメリカ各地の大学でイスラエルによるガザ地区への攻撃に対する学生らの抗議デモが相次ぎ、その際にユダヤ人学生たちが嫌がらせを受けたケースが報告されていたことをめぐり、政権側は「ハーバード大学は反ユダヤ主義的な差別から学生を守ってこなかった」と主張しました。

これに対しハーバード大学は、反ユダヤ主義への対策はすでに強化していると反論しました。

【要求拒否 助成金凍結 提訴】
4月14日、ハーバード大学はトランプ政権から助成金を拠出する条件として要求された、DEIと呼ばれる多様性などの推進をやめることや学生の取り締まりを強化することなどを拒否したと明らかにしました。

その直後、トランプ政権はハーバード大学への助成金の一部を凍結したと明らかにしました。

これに対してハーバード大学は4月21日、トランプ政権に対して助成金凍結の取り消しを求める訴えを、東部マサチューセッツ州にある連邦地方裁判所に起こしました。

大学側は「連邦政府は助成金の凍結を利用して、ハーバード大学の学問上の意思決定を支配しようとしている」などとしています。

【「税制上の優遇措置取り消す」表明】
5月、トランプ大統領はSNSに「ハーバード大学の非課税資格を廃止する。彼らにはそれがふさわしい」と投稿し、ハーバード大学の税制上の優遇措置を取り消すと表明しました。
大学への圧力をさらに強めた形になります。

これに対し大学側は声明で「優遇措置を取り消す法的根拠はない」と反論していました。

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