第223話 クリスマス大宴会 その十

「じゃ、二回目いきまーす。皆さん手を出してー。……はい、じゃーんけーん」


 俺、パー。四谷先輩、吹雪先輩、夜光先輩がチョキ。


「はい、残った三人でー、じゃーんけーん」


 俺、チョキ。夜光先輩、グー。


「あ、私だー」

「夜光先輩ですね。ちなみに、狙ってる番号とかはありますか?」

「うーん、特にないかなぁ。ただ良いやつがほしいなぁって」

「ド直球ですねー。では、回してくださーい」


 はい、ガラガラガラー。出た番号は……二番!


「二番! 二番をお願いしまーす!」

「二番は……あの青いラッピングの箱だねぇ」


:サイズは普通

:次はなんだろ

:ワクワク

:気になる

:はよ開けてくれー

:厚みもそこまでか?

:デカくはないな

:面白いやつだと良いなぁ

:山主さんのセンスが問われる

:ワクテカワクテカ

:ネタ枠だったりして

:くるぞくるぞ


 青いラッピング……あ、あー。あの箱かぁ。これまたなんというか、その、絶妙? 妙な運命を感じてしまう巡り合わせである。


「えー、二番の中身ですが……サオンの入浴剤、ボディスクラブ、バスボムなどが入ったクリスマスギフトボックスです!」

「サオンのギフトボックス!?」

「えっ、マジ!?」


 おおう。女性陣の食いつきが凄いな。夜光先輩より早く何人かが反応したぞ。

 そんでスタッフさんに持ってきてもらったら、わーっと皆集まってきた。……そんなに?


「……なんか江戸切子の時より反応良くないですか?」

「いやだって、サオンだよ?」

「そんな超高級ブランドでしたっけ?」

「そうじゃないけど、単純に馴染みあるブランドだし……。というか、山主君がサオン知ってることにビックリなんだけど」

「それ思った。ボタンそれどこ知識?」

「これぜってえ経験豊富じゃねぇと出てこないチョイスだぞ? お前やっぱりヤリチンか?」

「凄い風評被害」


 似合わないのは承知してるけど、バス用品チョイスしただけでここまで言われるか。


「ちょっと勉強しただけですよ」

「どうやって?」

「SNSとか見て。女性インフルエンサーが発信してる、モテない男向けのアレコレをばーっと眺めた感じです」

「え、ボタンそんなの見てんの? ウケるんだけど」

「でも、意外と見てて面白かったよ? 人によってはかなりズバズバ言ってたし」


 一から十まで鵜呑みにするつもりはないが、エンタメとして眺めるぶんにはああいうのって良い娯楽よね。のめり込みすぎると往々にして地獄見るけど。


「まあ、それでバス用品系に辿りついて、あとは流れで的な? 俺なりに女性受けしそうなプレゼントを考えた結果なんですけど、どうでした?」

「悪くないと思うッスよ。お世辞とか抜きで」

「うんうん。グラスの時も感じたけど、山主君センスあるよ! 私たちが保証する!」

「あざっす」


 先輩たちから高評価をいただけてなにより。……ただ、受け取った夜光先輩からの評価が気になるところではある。

 一応、ニコニコはしてるけど……。それで誤魔化されてはいけない。なにせこの人アレだから。


「いやー、こんな素敵なプレゼントをもらったらねぇ! 帰蝶も毎日風呂に入るっきゃないッスよ、ね、えー?」

「圧が凄いなー」

「圧もなにもねぇッスよ! 常識的なこと言ってんスよこっちは!」

「えー。お風呂きらーい」

「好き嫌いの話の問題じゃないって、何度言わせるんスかねぇ!?」


:草

:草

:草

:草

:風呂は入ってもろて

:草

:草

:草

:草

:これは氷雨が正しい

:草

:草


 風呂キャンの民なんだよなぁ、夜光先輩。本当に駄目人間すぎる。

 そして風呂キャン界隈の住民にバス用品が当たるとか、どんな巡り合わせだよって感じ。一周回って運命的だ。


「えーと、夜光先輩的には残念な感じですか?」

「ううん。普通に嬉しいよー。お風呂は嫌いだけど、入る時にはいろいろ使うし。良いのがあるとテンション上がるよねー。たまの贅沢ってやつ?」

「さいですか」

「ボタン君! キミからももっと言ってやってほしいッス! これを機に毎日風呂入れと!!」

「セクハラになりそうなんでパスさせてください」


 いくら吹雪先輩の主張がもっともだとしても、女性のお風呂事情についての言及はねぇ……。さすがにキツイですわ。

 てことで、危ない話題は流して次に回してしまいましょう!!


「それじゃあ、三回目いきまーす。皆さん、手を出してー。はい、じゃーんけーん」


 俺、グー。巫女乃先輩、パー。


「っしゃぁ!!」

「お、巫女乃先輩の一人勝ちですか。何か狙ってるやつはありますか?」

「そりゃもうデッカイのでしょ!!」

「常夏先輩と同じこと言ってる……」


 何でそんな大きさに拘るんだろうね? 一応言っておくけど、デカイやつ=当たり枠ではないからね? そこんところ分かってます?


「良いんだよ。でっかいプレゼントは浪漫なんだから」

「それはそう。んじゃ、回してください」

「あいよ」


 はい、ガラガラガラー。番号は……一番!


「一番! 一番をお願いしまーす!」

「チッ! 普通サイズか!」

「まあまあ。大きいとはいっても、他と比べたら比較的ってだけですし。ぶっちゃけそんな変わりませんよ」

「んー、確かに? 重要なのは中身か。それじゃあ、スタッフさん。開封お願いしまーす!」


 巫女乃先輩の声を合図に、ガサガサーっと黄色いラッピングが剥がされていく。

 そうして中から顔を出したのは、しっかりとした造りの木箱である。


「……ちなみに巫女乃先輩、アレ実は大当たりです」

「え、マジ!? 確かにすっごい高そう!! なになになに!?」

「一番の中身はこちら!! ──日本三大珍味が一つ、最高級からすみでございまーす!」

「……なんでだよ!!」


:草

:草

:草

:草

:草

:草

:草

:草

:草

:草

:草

:草

:草


 ネタ枠の一つをぶち抜くとは。さすが巫女乃先輩である。






ーーー

あとがき

風邪デバフ中なので短め。薬の眠くなる副作用のせいで頭がずっと回らぬ。



三巻買ってー。もちろん一巻と二巻もー。コミカライズの一巻もー。私に薬代を恵んでクレメンス〜。


あと、明日はコミカライズ版のWeb掲載のやつが更新でーす。みんな、カドコミ、ニコニコ漫画をチェックやで〜。


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