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【コラム】バフェット氏の商社投資、会社四季報きっかけ-リーディー

Berkshire-themed stickers on the exhibition floor inside the CHI Health Center during the Berkshire Hathaway annual shareholders meeting in Omaha, Nebraska, US, on Saturday, May 4, 2024. 

Berkshire-themed stickers on the exhibition floor inside the CHI Health Center during the Berkshire Hathaway annual shareholders meeting in Omaha, Nebraska, US, on Saturday, May 4, 2024. 

Photographer: Bloomberg/Bloomberg

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が2020年に始めた日本の大手商社5社への投資は、今や約3兆7100億円の価値となっている。そのきっかけは実にシンプルなものだった。

  バフェット氏は「2000-3000社ほどの日本企業が載っている小さなハンドブックを読んでいたが、その中に、ばかげたほど安値で売られている商社5社があった。それで約1年かけてそれらを買い集めた」と、ネブラスカ州オマハで開かれた株主総会で語ったバークシャー・ハサウェイの最高経営責任者(CEO)を年末に退任すると発表する直前のことだ。

  つまり、日本の個人投資家と同じ方法で銘柄選別をしたわけだ。小さなハンドブックとは「会社四季報」で、年4回発行される2800円の分厚い冊子には約4000社近い日本の上場企業の情報が掲載されている。

Bible of Japanese Stocks Sells Out as Nikkei Rally Wins Converts
会社四季報
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  バフェット氏が評価したことで、同氏の信奉者たちが英語版の会社四季報「ジャパン・カンパニー・ハンドブック」に殺到してもおかしくなかった。実際、同氏の机の上には12年前から英文四季報が置かれていたことも確認されている。

  ところが東洋経済新報社は昨年、この英語版を休刊にしてしまった。世界で最も有名な投資家が価値を認めた数カ月前のことだった。

  これで投資の「原石」を見つけるのは難しくなったかもしれないが、バフェット氏が長年支持してきた「忍耐強い投資家」にはむしろ、有利に働く。幸い、同氏が日本投資に関して示した教訓はこれだけではない。

    これまでバフェット氏は主に、投資そのもので語ってきたが、最近の発言からは日本投資について幅広く知られるべき幾つかの教訓がうかがえる。

機会の認識

バフェット氏はこう話している。アップルのティム・クックCEOなら日本での「iPhoneの売り上げは米国以外のどの国にも劣らないほど好調だと言うだろう。アメリカン・エキスプレスなら、日本で非常にうまくいっていると伝えるだろう。コカ・コーラもわれわれが投資している1社だが、日本で極めて良好な業績を上げている」

  このところ、ソフトパワーやインバウンド観光で日本に注目が集まっているとはいえ、人口動態や医療制度への取り組み、豊富な投資機会など、まだまだ日本には十分認識されていない部分がある。

  バフェット氏が指摘するように、日本はiPhoneやコカ・コーラにとってだけでなく、音楽では世界2位、映画では3位の巨大市場だ。パチンコ産業でさえ、ラスベガス全体のカジノ収入の10倍を稼ぎ出している。

  それにもかかわらず、文化的な障壁や変化の遅さ(あるいは、成長著しい周辺国の存在)が影響し、日本は本来受けるべき注目を得られていない。

  日本に長年投資してきたミッション・バリュー・パートナーズのアンドリュー・マクダーモット氏によると、バフェット氏は中国投資熱が高まったころ、「日本企業に安心感を深める一方、中国には不安を抱くようになった」という。マクダーモット氏はブログで、バフェット氏が12年に「世界中のどこよりも日本に投資したい」と語っていたと明かした。

  これだけでは足りないという人は、日本の国際的な立ち位置にも注目すべきだ。日本は自由貿易と公正な司法を掲げる戦略的に重要な国家。今や貴重な一国とも言える。

  バフェット氏はまた、日本銀行の追加利上げといったマクロ経済的な要因があっても、日本投資を続ける意向を示している。参考にしたいところだ。

違いを受け入れよう

「彼らには私たちと異なる習慣がある。日本ではコカ・コーラ製品の中で『ジョージア』が一番人気だ。私は彼らを『チェリーコーク』好きには変えられなかったし、彼らも私をジョージアコーヒー好きには変えられない。でも、それでいい。完璧な関係だ」

   ジョージアは日本全国の自動販売機やコンビニエンスストアで販売されている缶コーヒーのブランドだ。一方、チェリーコークは日本ではごくまれにしか見かけない。バフェット氏が示唆する通り、人それぞれだ。

  日本を知らずに日本に対して不満を抱く多くの人々とは異なり、バフェット氏は日本が独自の文化を持つ国であり、こうした違いこそが日本という国とその企業を魅力的にしていることを理解している。

  大手日本企業の成功は、独自性があるからこそ成し遂げられたものであり、それが妨げになったわけではない。例えばトヨタ自動車は投資家が求めた電気自動車(EV)への全面移行に抗い、ハイブリッド車を重視することで5年連続で世界販売トップの自動車メーカーとなった。

  任天堂もまた、自社製ハードウエアをやめモバイルゲームに注力すべきだとの圧力を退けた。結果、家庭用ゲーム機「スイッチ」で大成功を収め、株価は上場来高値に近い水準だ。

  これらの企業は株主最優先ではないかもしれないが、長期視点の投資家に報いてくれる持続可能なブランドを築いている。

短期間での変化を求めるな

 「彼らが築き上げてきたものを変えるつもりは一切ない。大成功しているからだ。われわれの主な役割は、ただ応援して拍手を送ることだ」

   日本市場では長期的な視点が不可欠だ。バークシャーのように数十年単位でみる必要はないとしても、急速な変化を期待すれば、失望するだけだ。バフェット氏に続きたいのであれば、優れた経営陣を見つけて、指図するのではなく、「応援して拍手」することが肝心だ。

  日本は外部の株主の声を受け入れつつあるが、短期的な利益を狙って経営陣と対立するのではなく、長期的に共に歩む投資家こそ成功しやすい。

  例えば、サード・ポイントのダン・ローブ氏が13年に保有していたソニーグループの株式7%をそのまま持ち続けていたなら、その価値は何もしなくても11億ドルから100億ドル超に膨らんでいた可能性がある。

   外国人投資家は日本に投資機会があることを世界に発信できる。こうした海外へのアピールは、日本企業の取締役会が苦手とする分野だ。バークシャーが投資するまで、日本の商社に注目する投資家はほとんどいなかった。

  日本への投資には覚悟がいる。それでもバフェット氏のように会社四季報のページを丁寧にめくるような投資家には最終的に、大きな見返りをもたらす。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:Buffett’s Little Japan Handbook and Other Lessons: Gearoid Reidy (抜粋)

    This column reflects the personal views of the author and does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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