小泉進次郎氏、農水相就任で農協とのバトル再燃か コメ価格引き下げへ改革要求も

江藤拓農水相の後任に決まり記者団の取材に応じる自民党の小泉進次郎氏=21日午後、首相官邸(春名中撮影)
江藤拓農水相の後任に決まり記者団の取材に応じる自民党の小泉進次郎氏=21日午後、首相官邸(春名中撮影)

高騰が続くコメを「買ったことがない」とする発言の責任をとって農林水産相を辞任した江藤拓氏の後任に、小泉進次郎元環境相が起用された。小泉氏は自民党農林部会長だった2016年に農協改革の議論を先導。その際、農産物の販売をほぼ独占する全国農業協同組合連合会(JA全農)に対し、販売手数料や流通構造の見直しを求め、JA側と対立した経緯がある。今回の米価高騰は、流通の大半を担うJA側にも問題があるとされ、最優先事項とするコメ価格の引き下げに向け、小泉氏が再びJA側に改革を迫る可能性もありそうだ。

コメ価格高騰「対応に全力」

「毎日の生活の中で日々感じておられるコメの高騰に対して、スピード感をもって対応できるように全力を尽くしていきたい」。小泉氏は21日午後、石破茂首相と面会後に記者団にこう語り、高止まりするコメ価格の下落を最優先課題に取り組む方針を強調した。

コメ価格の下落に向けて、政府は2月に保有する備蓄米を放出を決定。停滞するコメの流通を改善することで、米価下落を図った。その際、3月までに入札した計21万トンの備蓄米のうち、9割超をJA全農が落札した。

だが、放出後1カ月が経過しても、小売店に行き渡った備蓄米は放出量の1%程度にとどまった。JA全農と取引のある大手卸業者などにしか届かず、JA全農の流通面での課題も浮き彫りになった。一部有識者からは「米価下落による手数料収入の減少を危惧するJAが流通を調整している」と指摘する声もある。コメ価高騰の一因にJAの対応がやり玉に挙げられており、過去にJA全農の流通構造の見直しを求めた小泉氏が農水相就任を機に、再び改革を求める可能性も指摘される。

「手数料」巡り対立の過去

小泉氏とJA全農とは少なからず因縁がある。16年には、当時の自民党農林部会長だった小泉氏が、農協改革をめぐる議論の中で、農家が農産物を出荷する際に負担する手数料をめぐり、JA全農の幹部らとの対立が表面化した。当時のJA全農の神出元一専務が「手数料は(農協の)従業員や家族を養う財源で、簡単に切るのは賛成できない」と発言したことに小泉氏は憤慨。「手数料で食っているのがJAグループという意識があるなら、それは問題だ」と批判し、「農家が食べていけるから農協職員も食べていけるという認識で改革に取り組んでほしい」と苦言を呈した。

その後も、小泉氏はJA全農が農家に販売する肥料などの生産資材が町のホームセンターに比べて高いことなどを問題視。協同組合として独占禁止法が除外されていたJA全農を、競争原理が働く株式会社にするべく農協改革を進めた。だが、JAから支援を受ける自民党農林族の強い反発もあり、JA全農の株式会社化をもくろんだ農協改革は見送られ、JAグループトップである全国農業協同組合中央会(JA全中)の地域農協への監査権限はく奪といった骨抜き的な改革に終わった。

自民党農林部会で農業関係者から意見を聞く小泉進次郎部会長(中央左から2人目)=2015年11月5日、東京都千代田区
自民党農林部会で農業関係者から意見を聞く小泉進次郎部会長(中央左から2人目)=2015年11月5日、東京都千代田区

自民農水族の弱体化好機か

自民党農水族の強い政治力に阻まれ、JAに不利に作用する米価下落を招くような抜本的な農業政策の見直しは進んでいないのが現状だ。ただ、今回の江藤氏の失脚により、党農水族の弱体化も指摘される。

近年は西川公也氏や吉川貴盛氏といった農水族の重鎮が不祥事で相次ぎ辞任し、「実質的に党農水族は江藤氏が仕切る状況が続いていた」(農水省関係者)という。今回の江藤氏の辞任により、農水族のドンとされる森山裕幹事長や坂本哲志国対委員長が仕切り役になるとも予想されるが、「2人とも党の要職であり、農林行政に注力できないのではないか」(同)との見方もある。

一方でJA側もコメ高騰に関して、消費者感情を逆なでる発言を連発したことが問題となっている。

4月にJA全農山形が地元紙などに掲出した「それでもお米は高いと感じますか?」というメッセージを含む意見広告がSNS上で炎上。同月にはJAグループの活動などを報じる農業協同組合新聞で、「コメは高くない」と主張するために持ち出した「ごはん1杯はコンビニのサンドイッチより安い」との記述が、ネット上で「比較対照が間違っている」などと物議を醸した。

さらに、今月13日にはJA全中の山野徹会長が記者会見で、現在のコメ価格は「決して高いとは思っていない」と発言。コメ確保に苦労する消費者の反発を招き、JAに対する国民からの風当たりが強まった。与党関係者は「JAに逆風が吹いているのは間違いなく、それを追い風に小泉氏が体質の変わらないJAを断罪、改めて改革を迫る可能性は想定される」としている。(西村利也)

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