「大阪万博で生物多様性が損失する」と環境NGO: 夢洲は渡り鳥の楽園だった
記事のポイント ➀「大阪・関西万博」が4月13日に開幕し、10月13日まで開かれる ②同万博は、「いのち」をテーマに、持続可能な運営方針を掲げる ③しかし、夢洲の生物多様性について環境団体が懸念を表明する
「大阪・関西万博」が4月13日に開幕し、10月13日まで開かれる。「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、持続可能な運営方針を掲げる。しかし、会場となる夢洲(ゆめしま)の生物多様性について、WWFジャパン(東京・港)など複数の環境団体が懸念を表明している。(オルタナ輪番編集長=吉田広子) 万博の会場である夢洲は、大阪湾に造成された約390ヘクタールの人工島だ。1970年代に廃棄物処理場などとして埋め立てが始まり、開発計画が進んだ。大阪市などはオリンピック・パラリンピック誘致にも取り組んでいたが、2001年に落選。「負の遺産」として扱われるようになった。 その後、大阪府と大阪市は、夢洲を活用した大型開発として、万博と統合型リゾート(IR)の誘致を進めた。2025年には「大阪・関西万博」を開催し、2030年にはIRの開業を予定している。
■ 実は生物多様性が豊かだった夢洲
人工島である夢洲だが、実は生物多様性に恵まれた地域でもある。夢洲を含む大阪南港一帯は「渡り鳥の楽園」として知られ、シギやチドリ類、ガンカモ類などが飛来する重要な中継地だ。 しかし、埋め立て事業が進行するにつれ、南港周辺の環境は大きく変わった。この状況を受け、大阪湾岸に生息する野鳥の保護を目的に、大阪南港野鳥園が設立された。 夢洲はこの野鳥園とともに、大阪府が定める「生物多様性ホットスポット」の中でも、種の多様性が際立つAランクに分類されている。大阪自然環境保全協会(大阪市)の調査では、夢洲において鳥類112種(うち絶滅危惧種51種)、植物206種(うち絶滅危惧種および重要種12種)が確認された。 同協会によると、万博建設工事が進行していた2023年5月から2024年9月にかけての期間にも、残されたわずかな湿地で、レッドデータブックに記載されている鳥類51種を含む、合計71種の鳥類を確認したという。 さらに、大阪府と大阪市は、万博終了後の跡地活用策として民間事業者からの提案を募集。その結果、2025年2月に「夢洲第2期区域マスタープランVer.1.0(案)」を公表し、万博会場の外縁部に広がる「つながりの海」を完全に埋め立てる方針を打ち出した。 しかし、環境団体からは「大阪湾の渡来地の消失は、日本を通過するシギ・チドリ類の絶滅を加速させる」との懸念が出ている。 WWFジャパンや大阪自然環境保全協会、日本自然保護協会、日本野鳥の会など環境NGO6団体は、「大阪湾岸に生物多様性豊かな干潟や湿地を取り戻すための共同宣言」を発表。全国の賛同団体を募っている。 (全文はオルタナオンラインでお読み頂けます) ■万博跡地にはサーキット場やホテルも ■渡来地の消失は、絶滅を加速する