女性客に多額の借金を背負わせる悪質ホストクラブを取り締まる改正風営法が20日、成立した。女性たちを路上や性風俗店、時には海外への出稼ぎによる売春に追い込んできたことで、この1年半余り、悪質ホストクラブは社会問題となってきた。業界側は自主ルールを掲げたが、その実態は大きく変わっていない。女性客たちからは、「自浄」が形骸化している実情が聞こえてくる。
なくならない「掛け」払い
4月、東京・歌舞伎町のあるホストクラブで、女性(26)は小さな青い紙を渡された。日付もなく「240000円」とだけ書かれていた。「青伝」と呼ばれる明細のない請求書だ。
担当のホストからは「掛け(ツケ)でいい」と言われ、そのまま借金になった。返済のため、女性は歌舞伎町の一角に立ち、売春を続けている。
「ホストクラブは掛けをやめるって決めたはずなのにね。でも、実際は当たり前にやっている店はたくさんある」と言う。
3年前からホストクラブに通う女性(21)も「今もしょっちゅう掛け払いを持ちかけられる」と明かす。自身、一時は100万円近い掛けを背負い、路上や性風俗店での売春に明け暮れた。今は1回につき数万円以内で遊ぶようになり、その都度現金で払っている。
「ホストのやっていることは変わっていない。掛けを作らせて客をつなぎ留め、もっとたくさん使わせようという営業は一緒」と話す。「年齢確認だってろくにしていない店も多いですよ」
「売掛金制度、やめない」経営者も
2023年、歌舞伎町の路上に立って売春をする女性たちが激増し、背景にあった悪質ホストクラブは大きな批判にさらされた。
そこで経営者らがこの年の12月に掲げたのが、売掛金制度の廃止や20歳未満の入店禁止といった自主ルールだ。約5カ月後には、一般社団法人「日本ホストクラブ健全化推進協議会」を設立した。
だが、取り組みの実効性はおぼつかない。
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歌舞伎町のホストクラブの前で戯れる男女=東京都新宿区で2025年5月17日、春増翔太撮影