防衛省によりますと、14日午後、航空自衛隊のT4練習機が愛知県犬山市の入鹿池に墜落しました。
機体には1等空尉と2等空尉の男性隊員2人が乗っていて、午後3時6分に愛知県の小牧基地を離陸し、およそ2分後の午後3時8分ごろ、基地の北東およそ13キロの地点でレーダーから航跡が消えたということです。
入鹿池では機体の一部やヘルメット、帽子などが見つかりましたが、午後10時時点で2人の発見には至っていないということです。
当時は、所属している宮崎県の新田原基地に向かうため小牧基地を北に向けて離陸したあと、東の方向に旋回して太平洋上に出る計画だったということです。
T4練習機はエンジンが2基あり、飛行前の点検では機体に異常はなく、当時の天候にも問題はなかったということです。
また、T4練習機にはフライトレコーダーやボイスレコーダーが搭載されている機体がありますがこの機体はいずれも搭載されていないということです。
自衛隊は夜を徹して2人の捜索を続けるとともに、事故調査委員会を立ち上げ、詳しい状況の確認を進めています。
航空自衛隊は今回の事故を受けておよそ200機あるすべてのT4練習機について飛行を見合わせています。
【詳報】自衛隊練習機が墜落 機体の一部発見 航空幕僚長が会見
14日午後愛知県犬山市にある池に航空自衛隊の練習機が墜落し、乗っていた隊員2人が行方不明になっています。自衛隊が2人の捜索を続けるとともに、詳しい状況の確認を進めています。
《航空幕僚長 記者会見》
隊員2人の飛行時間は
航空自衛隊トップの内倉浩昭航空幕僚長は防衛省で記者会見を開き、T4練習機に乗っていた隊員2人について、1等空尉と2等空尉のいずれも男性で、これまでの飛行時間は、1等空尉が1170時間、2等空尉が480時間だと説明しました。
その上で「1等空尉は1000時間超えているのでベテラン、中堅と言える。2等空尉は初級と中堅の間。2人とも、T4練習機を操縦する資格はある」と述べました。
当時、どちらが機体を操縦していたかについては確認中だとしています。
「T4練習機は飛行見合わせ」
内倉航空幕僚長はほかのT4練習機については飛行を見合わせていることを明らかにしました。
「レコーダー搭載されず」
内倉航空幕僚長は墜落した機体にはフライトレコーダーやボイスレコーダーは搭載されていないと説明しました。
「ヘルメットや帽子など見つかった」
内倉航空幕僚長は現場付近で機体の残骸や救命装備品、ヘルメット、帽子などが見つかったことを明らかにしました。
一方、隊員2人については発見に至っていないということです。
飛行の経緯は
内倉航空幕僚長は事故が起きるまでのいきさつについて「きょう午前、新田原基地からF15戦闘機の定期修理のためF15戦闘機に随伴する形でT4練習機が小牧基地に飛行した。F15戦闘機を三菱重工業に搬入したあと、2人の操縦者は小牧基地で休憩を取り、T4練習機に乗って、新田原基地へ向かうため午後3時6分ごろ離陸したが、北東方向およそ13キロ付近で航跡が消失した」と説明しました。
「心よりおわび申し上げる」
内倉航空幕僚長は「T4練習機が午後3時8分ごろ入鹿池付近で墜落しました。ご心配をおかけしていることを心よりおわび申し上げます」と述べ、陳謝しました。
NHKが県営名古屋空港に設置したカメラには、午後3時すぎに航空自衛隊小牧基地を離陸するT4練習機とみられる機体が写っています。警察や自衛隊などは、墜落した機体の飛行状況について調べています。
“入鹿池付近でレーダーから消えた” 航空自衛隊
航空自衛隊によりますと、T4練習機は午後3時6分に愛知県の小牧基地を離陸したあと、およそ2分後の午後3時8分ごろに犬山市の入鹿池付近でレーダーから航跡が消えたということです。
機体は宮崎県の新田原基地の所属で、当時は2人が乗っていたということです。
飛行の目的は訓練ではなく、隊員の移動などのための「要務飛行」だとしていますが、詳細については確認中だとしています。
防衛相「現場付近で機体の一部発見」
中谷防衛大臣は14日7時すぎ、防衛省で記者団に対し「現場付近で、機体の一部が発見された。今回、関係者に大変なご迷惑をかけ、心からおわび申し上げる」と述べました。
その上で、状況の把握や搭乗員の救助、周辺の被害状況の確認、それに関係自治体への迅速な情報提供を行うよう指示したことを明らかにし、自衛隊のヘリコプターや陸上部隊が、警察や消防とともに現地で活動にあたっていると説明しました。
中谷大臣は「現時点で墜落した原因などは不明だが、人命の救助に全力を尽くしていく」と述べました。
防衛省 航空自衛隊に事故調査委員会を設置
防衛省は、レーダーから航跡が消えた航空自衛隊のT4練習機について、愛知県犬山市の入鹿池付近で機体の一部が見つかったことを明らかにしました。現場の状況などから墜落したとしています。
機体には隊員2人が乗っていましたが、午後7時時点で発見には至らず、捜索を続けているということです。また、航空自衛隊に事故調査委員会を設置して原因などを調べています。
T4練習機とは
航空自衛隊のT4練習機は、隊員の操縦訓練などのために使われる機体で、乗員は2人です。エンジンは2基あり、燃料を補給しないで飛行できる航続距離はおよそ1300キロです。
T4練習機は過去にも墜落事故
航空自衛隊によりますと、T4練習機はこれまでにも墜落事故が起きています。
このうち2000年7月には、宮城県の松島基地に所属する2機が訓練飛行中に牡鹿半島の山に墜落し、乗っていた隊員3人が死亡しました。
この2機はアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」の機体で、悪天候のなか、パイロットが機体の位置を誤って認識していたことが原因とみられています。
1991年には、訓練飛行をしていた機体が海に墜落する事故が2件起きていて、それぞれ隊員2人が死亡しています。
【動画】基地と入鹿池の位置関係は(17秒)
航空自衛隊の練習機が墜落した「入鹿池」は、航空自衛隊小牧基地から北東に10キロあまり離れた場所にあります。
「入鹿池」は、愛知県犬山市にある農業用の人工の「ため池」です。博物館「明治村」の隣にあり釣りやボート遊びも楽しめるため、観光客や市民の憩いの場所にもなっています。
池の水を管理する「入鹿用水土地改良区」によりますと、犬山市や小牧市などの農地、およそ620ヘクタールに農業用水を供給していているということです。
香川の「満濃池」などとともに日本で1、2の規模を誇る農業用の「ため池」で、2015年に歴史的にも技術的にも価値がある施設として「世界かんがい施設遺産」に登録されました。
名鉄犬山駅からは南東に5キロあまり離れていて、周辺には博物館「明治村」などの観光施設や小学校があり、住宅も点在する地域です。
ボートに乗っていた人「大きな音 水柱あがっていた」
事故があった当時、池でボートに乗っていた男性は「大きな音がしてその方向を見ると水柱があがっていた。落ちた機体は見えませんでした」と話していました。
ボートに乗って釣りをしていたという別の男性は「午後3時すぎに飛行機が低い位置で池の上を飛んでいて、何だろうと思っていた。耳をふさぐくらい音がうるさかったので、相当低い位置を飛んでいたのではないか。機体の破片のようなものが浮かんでいるのを見たが人の姿は見ていない。事故かなと思うといたたまれない気持ちです」と話していました。
墜落した時に入鹿池の中で釣りをしていた男性は「ドーンドーンという低い音が2回聞こえて、どこかで事故があったのかなと思いました。油のにおいがすごかったです。機体はバラバラな状態に見え、人が乗っているかはわからなかったです」と話していました。
近くでは「ドーンという音」「落雷のような音」
入鹿池の湖畔にあるホテルの従業員は「少し前にドーンという音が聞こえてなんだろうと思った。その後、パトカーが走っている音が聞こえて外がざわついている様子だったが、ここからは何が起きているか見えない」と話していました。
また、近くにある犬山池野簡易郵便局では「雷が落ちたようなすごく大きな音が聞こえて、天気がいいのに変だなと局内で話していた。その後しばらくたってからパトカーや消防車が通る音が聞こえている」と話していました。
入鹿池の近くで貸ボート店を営む男性は「ちょうど出かけていて、帰ったときに墜落したという話を聞きました。ボートを貸したお客さんが巻き込まれていないか心配でしたが、全員無事に戻ってきました」と話していました。
池に隣接する「明治村」被害なし
入鹿池に隣接する博物館「明治村」の湯田晃久所長によりますと、客や建物に被害はないということです。
当時の状況について湯田所長は「事務所で打ち合わせをしていたところ、爆発するようなバリバリという音がした。何人もの客から『池に飛行機が落ちるような音がした』という情報があったのですぐに通報した。施設内にはオイルのような匂いが充満していて、職員が池に様子を見に行ったところ、水面から何かはわからないが、浮かんでいた」と話しています。
当時、施設内には大勢の客がいたということで、「たくさんの客が驚いた様子だったのですぐに安全を確認したが、客や建物に被害はなかった」と話していました。
自衛隊機 事故相次ぐ
自衛隊機をめぐっては、ここ数年、事故が相次いでいます。
▽去年4月には、海上自衛隊のSH60哨戒ヘリコプター2機が伊豆諸島の鳥島の沖合で夜間訓練中に衝突して墜落し、隊員8人が死亡しました。
▽おととし4月には、陸上自衛隊のUH60ヘリコプターが沖縄県の宮古島沖で墜落し、隊員10人が死亡する事故が起きています。
▽2022年1月には、航空自衛隊のF15戦闘機が石川県沖の日本海に墜落し、隊員2人が死亡しました。
▽2019年4月は、航空自衛隊のF35戦闘機が青森県沖で墜落してパイロット1人が死亡しました。
▽2018年2月は、陸上自衛隊のヘリコプターが佐賀県内の住宅地に墜落して隊員2人が死亡しています。
練習機所属の基地 宮崎でも心配の声
航空自衛隊の練習機が所属していた新田原基地のある宮崎県新富町では、心配の声が聞かれました。
新富町の80代の女性は「怖いなと思う。こうした事故は起きてほしくない」と話していました。
新富町に隣接する西都市の40代の男性は「原因がわからないのでなんとも言えないが人命が心配。しっかりと原因を解明して安全策を考えることが大切だと思う」と話していました。