マッチングアプリ悪用 ぼったくり行為か バーの従業員3人逮捕

マッチングアプリで知り合った男性を東京・渋谷の飲食店に誘い込み、代金として現金110万円などを支払わせるぼったくり行為をしたとして、警視庁は従業員3人を逮捕しました。

障害者向けのマッチングアプリを悪用し、障害者の男性が被害に遭ったケースも確認されているということで、警視庁が違法な営業の実態を調べています。

逮捕されたのは、東京・渋谷にあるバーの従業員、佐古壮汰容疑者(22)と柴田小太郎容疑者(21)、それに菅原梨那容疑者(24)の3人です。

警視庁によりますと、ことし1月、マッチングアプリで知り合った20代の男性を自分たちの飲食店に誘い込み、代金や賠償金などの名目で現金110万円を支払わせたり、クレジットカードでネックレスなど75万相当を購入させたりしたとして、都のぼったくり防止条例違反の疑いがもたれています。

菅原容疑者が従業員であることを隠して、「行きたい店がある」と言って誘い込む手口で、被害はこれまでに男性客54人、合わせておよそ8000万円に上るとみられています。

中には、障害者向けのマッチングアプリを悪用し、足が不自由な障害者などを誘い込んで高額な料金を請求し、支払えない場合にはサウナ施設で監禁状態にして翌日、消費者金融で金を借りさせたケースもあったということです。

警視庁がグループの役割分担や違法な営業の実態を調べています。

3人の認否は明らかにしていません。

“ぼったくり”手口は

警視庁への取材で明らかになった逮捕されたグループの手口です。

【複数のマッチングアプリで男性を募る】

グループは複数のマッチングアプリで女性のアカウントを作成し、男性と会う約束をしていました。
障害者向けのマッチングアプリも利用し、身体障害者などを偽って登録していました。
捜査関係者は「容疑者たちは、障害者であれば高額な支払いを請求した際に逃げ出しにくく、言うことを聞くと考えたとみている」と話しています。
ターゲットにした男性と「マッチング」したあとはLINEでのやりとりに移行し、2人で飲みに行くことを提案します。

【待ち合わせて店に誘い込む】
食事やデートの約束をして渋谷駅周辺で待ち合わせると、自分が従業員であることは隠して店に向かいます。

【頼んだ酒は別料金】
店では従業員が「飲み放題5000円です」などと料金を説明したうえで、トランプを使ったゲームをするように持ちかけます。
客を装っている女の容疑者は、罰ゲームとして別料金になっている酒を大量に注文。
会計の際には、従業員が「あなたたちが飲んでいた酒は別料金です。支払いは現金のみで受け付ける」などと言って、高額な請求を行っていたとみられています。

【賠償金も請求 サウナ施設に監禁も】
従業員は、男性をコンビニのATMに連れて行き金を引き出させますが、逃げ出さないように見張り役も用意していたということです。
さらに「支払い対応のために、ほかの予約客をキャンセルしないといけなくなった」として賠償金を支払うよう迫ります。
支払いができない場合、携帯電話などを取り上げ、サウナ施設で一晩、監禁状態にしたうえで、翌日、消費者金融で金を借りさせていたということです。

被害に遭った男性 “怒り・恨みを感じる”

今回逮捕されたグループからぼったくりの被害に遭った20代の男性がNHKの取材に応じました。男性は視覚障害2級で、ふだん外を歩くときには白じょうを使っています。

男性は、ことし2月、障害者や障害に理解のある人向けのマッチングアプリ「IRODORI」で「りさ」と名乗っていた菅原梨那 容疑者とやりとりを始めると、その日のうちに会うことになったといいます。

LINEでは、「きょう楽しみにしてます」というメッセージのあと、「ふだんどういうお酒を飲まれるんですか?」とか「私もお茶割りとかカクテルをよく飲みます!」などと好きな酒についてやりとりをしていました。

男性
「いい人と出会えたらいいなと思って始めました。やりとりをした日が仕事が休みで、ちょっとご飯行きませんかという話になって、その日にご飯行くことになりました」

待ち合わせをしたのは、渋谷のハチ公前。
食事をする店は事前に決めていませんでしたが、合流した「りさ」は「以前から気になっているお店がある」と伝えてきたといいます。

男性
「女性のほうから『私ちょっと気になっているバーがあるから、2人でお酒を飲みに行かないか』という話になって、連れて行かれるがまま行ってしまいました。薄暗くてBGMがうるさい店で、少し見えづらかったですが、まったく見えないわけではありませんでした」

店では、従業員から「飲み放題は1人5000円」と説明を受けましたが、しばらくすると従業員が持ってきたトランプを使って、「りさ」がゲームをしようと持ちかけてきて、負けたほうが罰ゲームとしてリキュールのショットを飲むことになったということです。
男性は飲み放題に含まれる酒だと思い込んでいましたが、「飲み放題の対象外」だとして最終的に68万円を請求され、お金を持っていないならATMでおろすよう迫られたということです。
このとき「りさ」は「カードで支払いできますか?」と従業員に確認して自分も支払おうとする様子を見せていましたが、「カードは使えない」と言われ、男性が全額を支払うことになったということです。

男性
「酔っ払っていて、冷静ではなかったので支払ってしまったんだと思います」

男性は「りさ」に対し、後日でいいので半額を支払うよう求め、「りさ」からはLINEで「迷惑をかけてごめんなさい」とか「次会う日に必ず持っていきます」とメッセージが来ましたが、数日後に連絡が取れなくなったということです。

男性
「悪質なやり方でだまされてしまった。障害年金や自分で働いてためたお金を一切悪びれることなく、だまし取っていて、怒りと恨みを感じます。自分に障害があるとわかって接触してきているので、悪質極まりない」

「きょうされん」専務理事 “卑劣な行為”

全国の障害者事業所が加盟する「きょうされん」の藤井克徳 専務理事は「障害者の弱みにつけこんだ卑劣な行為で許しがたい。障害の種類や程度によってはぼったくりだと気付いても逃げられないし、被害に気付けないケースもあると思う」と話していました。

「きょうされん」が去年公表した調査では、配偶者やパートナーと暮らす障害者の割合は3.4%で、障害者の恋愛や結婚には高い壁があると指摘しています。

そのうえで「障害者にも恋愛や結婚をしたいという願望はもちろんあり、マッチングアプリが出会いの機会として悪いわけではない。障害者と障害のない人は教育の場などで分離されてきた歴史があり、障害者の恋愛に対して偏見がある人もいると思う。より多くの障害者が恋愛や結婚、さらには子育てをしていくためには、住まいや働く場、所得保障など総合的な支援の拡充が必要だ」と話していました。

相次ぐトラブル相談

東京都消費生活総合センターによりますと、マッチングアプリに関するトラブルの相談は相次いでいて、昨年度は2835件に上っています。

このうち、飲食店などでぼったくりに遭ったとみられるケースは133件で、相談者の9割は10代から30代でした。

東京都消費生活総合センターは「一度、お金を支払ってしまうと返ってこないケースがほとんどです。マッチングアプリで知り合った人と会うときは、『知り合いの店がある』などと言われても、どんな店なのか事前にネットなどで調べてほしい」と呼びかけています。

弁護士 “支払わないことが重要”

ぼったくり被害に関する相談に応じている青島克行弁護士によりますと、ここ数年、寄せられる相談のほとんどがマッチングアプリを使ったものだといいます。

青島弁護士は、被害者の心理について「被害者は請求を受けるとびっくりして思考停止してしまう。店側は被害者が困惑している状況で冷静に請求するので、被害者はいいなりになってしまう。どれだけ丁寧なことばで請求されても、被害者としては恐怖でしかない」と指摘しました。

そのうえで、被害に遭ったとしても、金を支払わないことが重要だと指摘し、「支払わなければ金銭的な被害はゼロだということをどこかで思い出して、110番通報したり交番に行ったりして、支払わずにその日を終えることをまずは考えてほしい」と話していました。

また、被害者が消費者金融での借り入れを強要され、その後返済を求められるケースもあることについては、「こうした被害があると世の中の知識として一般化してほしい。消費者金融は、正規の借り入れなのか犯罪被害なのかということを真剣に考えて被害者を救う判断をするべきだ」と訴えました。

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