「相鉄線以外も運行する=JR直通対応の13000系」の可能性と課題
(タイトル画像はプレスリリースより)
先日発表された相鉄13000系の詳細は、自社専用の8両編成で登場するというものでした。しかしこの発表で新たな疑問も出てきました。今回はそれについて書いていきます。
「2025年度は相鉄線内のみを運行する車両として」導入
今回、プレスリリースの冒頭にはこう書かれています。
なお、2025年度は相鉄線内のみを運行する車両として1編成(8両)を導入します。
裏を返せば、「相鉄線内以外も運行する車両=直通対応」が計画されているように読めます。JRベースの形式・車体であるため、乗り入れ先は自ずとJRになるでしょう。JRベースの拡幅車体であることから東急直通はありえないため、「相鉄線内のみを運行するわけではない編成」はおのずとJR直通対応になります。では13000系はJR直通を考慮しているのでしょうか?
ATACSアンテナ台座?
側面のイメージ画像を見ると、ATACSアンテナ用と思われる台座が描かれています。8両編成でJRに直通することはないはずなので、JR直通対応の10両編成と極力共通化した設計、ということになるでしょうか。しかし、仮に13000系がJR直通を考慮している場合、いくつかの疑問が出てきます。
衝撃吸収構造ではない先頭車
13000系は相鉄線内のホームドアの制約から先頭車が衝撃吸収構造ではないのですが、これがJRへ直通するには制約となることが考えられます。言うまでもなく埼京線のE233系7000番台は衝撃吸収構造で、同じく埼京線系統へ乗り入れるりんかい線もこれから導入する71-000形は衝撃吸収構造を採用しています。JR線内で今後進められるホームドアの導入にあたり、衝撃吸収構造ではない先頭車は問題にならないでしょうか。
対応するホームドアはある
衝撃吸収構造の先頭車とそうでない先頭車の共存に対応するホームドアは、既にJRで導入されています。8両編成の横浜線が乗り入れる京浜東北線・根岸線東神奈川駅~大船駅間で、8両編成の先頭車が10両編成用のホーム途中に止まる箇所のための大開口タイプのホームドアが開発・設置が進んでいます。13000系の先頭車は全てのドア間が中間車と同じ7人がけであるため、中間車と同じドア配置が見込まれており、JRが品鶴線・山手貨物線などで埼京線系統の停止位置にこれを展開すれば、13000系が衝撃吸収構造ではない先頭車でも乗り入れのハードルを1つクリアできます。
13000系が乗り入れるとそのためだけに大開口が求められる箇所も多い
現在JRに乗り入れる12000系のJR線内の定期運用範囲は、羽沢横浜国大駅~武蔵小杉駅~大崎駅~新宿駅~池袋駅となります。この区間は2028年度末までにホームドアの導入を予定していますが、湘南新宿ライン・横須賀線・各種特急の多様な車両が混走する見込みです。こうしたことから、先述の大開口タイプのホームドアがこれらのほぼ全ての駅で、それも複数必要になることが見込まれ、先頭車ドア位置の異なる13000系が乗り入れても際立って特異な存在となるわけではありません。
それでも、例えば新宿駅1・2番線など現状でも15両編成と10両編成の先頭車が揃う箇所もあり、そうしたところでは衝撃吸収構造の先頭車ドア配置だけを考えたホームドアを設置するほうがコストは下がります。また、相鉄車両の定期運用はないもののダイヤ乱れの際などに12000系の入線例がある板橋駅以北の各駅は13000系を考慮しなければ現状のE233系7000番台に基づくドア配置のホームドアだけで済む見込みだったので、現状相鉄車両の定期運用がない区間でこれから衝撃吸収構造を採用せず登場する13000系を考慮してくれるのかは疑問です。一方逆の見方をすれば、せっかく開発した大開口タイプを少しでも多く設置して量産単価を下げるために、13000系を受け入れてその入線区間に大開口タイプを設置するということも考えられます。
「衝撃吸収構造の13000系」はおそらく13000系ではない
では、JR直通のために先頭車を衝撃吸収構造とした13000系が出てくるのでしょうか。そうした車両が出てくる場合、それはもう13000系ではなく別形式になるでしょう。つい最近も、「東急目黒線直通用の20000系8両編成」として計画されていたものが別形式の21000系として導入されたばかり。その20000系と21000系の差異よりも、先頭車の衝撃吸収構造の有無は大きな違いです。そうした展開が予定されているならば「2025年度は相鉄線内のみを運行する車両として」といった文言が13000系の発表には出て来ることはなく、淡々と自社専用として13000系が導入されるでしょう。だとすれば、見かけの上では両数以外に違いのない13000系の直通対応車両を予定していると考えるのが自然だと思います。
JR長編成ワンマン対応の考慮は?
13000系がJR直通に対応するならば、JRで予定される長編成ワンマン運転への対応は必須となります。先日、現在JRに乗り入れている12000系においてこの長編成ワンマン対応で難しそうなポイントを書きました。
これについては「ホーム検知装置は必須ではないと思う」という反応が複数あり、私も確かに必須ではなさそうな気がしてきました。とはいえ乗務員室内の形状からホーム監視用モニターが難しそうであったり、JR線内のホームドア設置までに改造が間に合わないかもしれないところは引き続き懸念点です。13000系が乗務員室内の形状をE233系に合わせて登場するのか、それが13000系のJR直通対応を考えるうえでもポイントとなります。
イメージ画像を見る限り、13000系も12000系と同じく高運転台ではなさそうです。ではE231系500番台のようにホーム監視用モニターを設置するのでしょうか。例えば20000系と21000系のようにモニターと重なる領域の前面窓をスモーク化するなど、新製対応だからできる方策はあると思います。
答えはもう少し先か
このようにホームドアの話やワンマン運転の話、その対応に必要な時間まで考えなければならないということは、12000系の乗り入れ継続か否か、13000系を新たな直通用として見込んでいるか、相鉄とJRの間で結論が出ていると思います。もし13000系の直通対応車両が登場するなら、JRはドア位置などの差異を了承したことになります。
では答えが明らかになるのは何時なのか。まずは13000系の実車登場のタイミングです。報道公開を待たずとも、実車によって見えてくる範囲でJR直通対応想定の可否が見えてくることもあるでしょう。報道公開時に言及があるかもしれません。
それより前に、何の予告もなく12000系のワンマン対応車両が出てくる可能性もあります。前にも書いたように12000系を改造するならJRのホームドア設置予定から逆算してそろそろ時間的に間に合わなくなります。あるいは、埼京線系統の10両編成専用となる池袋駅1・4番線以北のホームドア設置工事に着手した駅が出てくれば、その様子も1つの答えになるでしょう。それらを持ってしても今年度中に判断がつかなければ、2026年度以降の設備投資計画で、となります。
まだまだ謎が多い相鉄13000系、楽しみです。
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