私はもうすぐ本田技術研究所を退職します。何故かって? 何故なら自動運転開発の惨状に絶望したからです。
ホンダといえば自動運転レベル3のレジェンドを作った会社です。そして、本田技術研究所の先進技術研究所では「レジェンドの後継となりうるホンダ独自の協調人工知能を搭載した次世代の自動運転を研究している」、求人にはそう書かれていました。
「レジェンドの技術を生み出した研究所では最先端の研究開発と社会実装に取り組んでいる」と私は入社前に期待していました。しかし、残念ながら本田技術研究所には自動運転の技術なんてものはありませんでした。
何故かって?それはニュースにもなった通り、数年前の組織解体でレジェンドの開発部隊が本田技研工業に丸ごと移管されてしまったからです。さらに、ホンダはクルーズと手を組むことを選んで研究所の自動運転開発機能をリセットをしてしまいました。
今のホンダの研究所は既に抜け殻となった状態です。辛うじて残った残党勢力が研究所の存在意義をPRするために「協調人工知能」というブランディングワードを使って実態の無い外部PRをしているにすぎません。中身は空っぽです。「マイクロモビリティ」というワードも実態は空っぽで、ほとんど開発が進んでいません。外向けに外見だけを整えて動かしているにすぎず、実態は詐欺に近い状況です。
研究所で内製を続けてはいますが、自動車開発未経験のかき集めの大勢の新入社員と四輪部隊のわずかな生き残りがいるにすぎず、世界どころか国内のどの会社よりも劣っています。一般道も走れなければテストコース内の無人走行もできず、満足な実車開発すらできていない。それどころか閉鎖空間の自動運転も実績がありません。
自動車開発のノウハウは失われていて、安全性やモラルに欠けた危険な開発を続けている。ソフトウェアはスパゲティコードと化していて、研究開発といえど車に載せていいような品質になっていない。他の自動車メーカーであれば叱責さえるような開発のやり方をローカルルールを制定して推進しています。
開発技術もろくなモノではありません。先進技術開発と言いながら、センシングシステムは過去の外注品をリバースエンジニアリングしているにすぎません。数年前の化石化した外注品をリバースエンジニアして内製化しようとしていますが、ソフト開発能力が無いのでまともに動いていません。そもそも外注品自体が時代遅れのシロモノなのに、それを内製にして果たして自動運転できるのでしょうか?
パスプランナーも開発がロクに進んでおらず、社内のリーダーエンジニアが各々やりたいことを主張するだけ主張して社内抗争しています。何もソフトを動かさず、ただただ社内政治に明け暮れている。たまにソフトを作ったかと思えば、学生が書いたと言わんばかりのクオリティ。エンジニアは「アジャイル」というワードを盾にして、ソフトの仕様書やドキュメントを作ることを嫌い、秘伝のタレを作ることを好みます。エンジニアは研究にしか興味がなく、実用化や先行開発を一切しようとしません。一般道どころかテストコースすら一度も車を満足に動かせていない。
車体開発も研究所独自でやっていますが、正直なところ車体メーカーにあるまじき体たらくです。技研工業と切り離されているせいで自動運転向けの車体を供給してもらえず、スタートアップのように市販車をハッキングして動かしています。車体開発をしたことない素人が手作りのハッキングデバイスを組んで車体を動かしているので安全性のカケラもないです。謎の自信とプライドがあるので、サプライヤともやり取りせずに自力でなんとかしようとしています。要求仕様書も何も作らず、ただ気合いで推進していくめちゃくちゃな開発。そんなモノで一般道に出てシステムが異常終了した時に果たして安全に実験できるのでしょうか?
それが今の本田技術研究所です。挙句の果てに社内で大規模な社内抗争も起きていて、開発の主権を握るためにリーダークラスのエンジニアが日夜社内政治で暗躍しています。開発方針の変更も1度や2度ではなく、度重なる方針変更により今まで作ったモノは全て無に帰してきました。機能リーダーも1年で4回も変更になりました。体制変更と方針決め会議が長々と続くだけで車は動かない。偉い人は自分達がちゃんとした自動運転を作れてないにも関わらず、他社の自動運転を小馬鹿にして悦に浸っている。何も作れていないのに、国内のスタートアップや海外の自動運転をバカにするだけバカにして「俺たちホンダの方が安全なモノを作れる」と謎の自信に満ちています。
はっきり言って今の本田技術研究所は世界と戦えません。オープンソースの方がよっぽど高品質で安全なソフトです。今の研究所は社内の役員向けのデモのための自動運転車を作っています。それは世の中のための開発ではなく、「ホンダグループで研究所を存続させるための社内政治のための開発」です。ホンダの役員向け試乗デモのためのみてくれだけの良い、実態の伴っていないハリボテを作るだけの日々。そうこうしている間に海外との差は開くばかり。もはや勝ち目はどこにもありません。やっていることは正直詐欺に近いです。追い詰められたスタートアップが資金調達目的に詐欺に近いデモをしているのと大差ありません。
最近はクルーズが自動運転から撤退したことで研究所技術の自動運転のサービスインも政府から少し期待されてきましたが、満足に動くソフトは存在せず、今なお政治のためのハリボテを拵えています。技研工業も研究所の技術が空っぽなことに気づいているのかわかりませんが、研究所とは別に自動運転の開発を技研工業独自に進めようとしています。研究所はそれに焦って下積みが何もないにも関わらず、無理矢理車を外で走らせようとしています。
ホンダに限らず他の国内自動車メーカーや国内サプライヤの偉い人はいつもこういったことを主張しています。
「スタートアップや海外勢は自動運転車の実証実験を強行して、不完全で危険な車を公道で走らせて街の人間を実験台にしている」
「俺たちはアイツらとは違う。安全と品質を考えている。街の人間を実験台にしない」
研究所存続のために海外や国内スタートアップよりもはるかに低品質で安全性の欠けた車を急いで公道走行させようとしている。ホンダの方こそ街の人間を実験台にして、危険に晒しているのではないでしょうか?
私はホンダに入って日本の自動運転に絶望しました。そして何故日本の自動運転が遅れているかもわかりました。この記事をみなさんが読む頃には私はホンダを退職しているでしょう。
もう疲れました。研究所が他社を馬鹿にするだけ馬鹿にしてめちゃくちゃなことをするのも、めちゃくちゃな開発に振り回されるのも、リーダーの主権争いに振り回されるのも。なにより、ホンダに振り回され続けることに疲れました。
昔は内製開発に憧れていましたが、今は違います。もはや「自動運転は外部から買ってくるしか日本を守る術はない」、そう思いました。ブランディングワードの先行した見てくれだけで実態の何もない危険な自動運転車が街中を走行するよりもよっぽど安全です。そう思わずにはいられませんでした。
ホンダの自動運転は三部敏宏社長の脳を培養してGPU代わりにしてるってマ?
そうだよ、だから日産車が前にいると煽り気味になる
え、大丈夫これ?
自動運転とは違うが、ソフトウェアエンジニアの記事も話題になってたな。 もう削除したようだけど。
こういう社内抗争が本当なら、その人らどんなメンタルしてんだろ メッキ剥がれたときのこととか考えてないんかな 全部現場に押し付けてただただキレんるんかな
自動運転については研究所と本体(本田技研工業)を分ける意味がない、むしろ分ける弊害の方が多かったんだろうな それをわかっている人たちが↓をやったんだろうな 数年前の組織...