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京都府舞鶴市のポンプ場工事が中止になった。着工後に何度も設計変更を重ねた結果、工費が2.5倍以上に膨れ上がったからだ。大手建設コンサルタントが関わった設計で、数々の不手際が判明した。

 工事を中止したのは市が西舞鶴地区で建設を計画していた静渓(しずたに)ポンプ場だ(資料1)。市が設置した検証会議(座長:田篭明弁護士)は2025年3月26日、地盤調査の不備などを指摘した報告書をまとめた。

資料1■ 建設を予定していた静渓ポンプ場の完成イメージ(出所:舞鶴市)
資料1■ 建設を予定していた静渓ポンプ場の完成イメージ(出所:舞鶴市)
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 静渓ポンプ場は、静渓川の水を本流の高野川に排出する施設だ。高野川からの逆流を防ぐ水門の機能を併せ持つ。周辺でポンプ場用地の確保が困難だったことから、建屋を含む全ての施設を静渓川の上に建設するよう計画した。

 市は18年4月に基本設計をパシフィックコンサルタンツ、19年8月に詳細設計をNJSへ委託した。21年5月には施工を鶴美建設・ホクタン建設工業・サン開発JV(共同企業体)に発注した。

 工費増大の主な要因は、土質が当初の想定と異なったことだ。基本設計の段階で支持地盤の設定を誤った。京都府が近隣で実施した土質調査で軟弱な沖積層(Ag層)と判定した資料があったにもかかわらず、それよりも古い調査結果を基に硬い洪積層(Dg層)だと判断した。

 続いて、詳細設計で実施したボーリング調査にも不備があった。当初は陸上と河川内の2カ所でボーリングする予定だったが、係留船舶の支障になるとの理由で2カ所とも陸上で実施。その結果から、基本設計の土質判定を踏襲した。

 基礎形式には、地盤改良併用の直接基礎を採用した。支持層よりも上の地盤に改良材を高圧で噴射し、円柱状の改良体を敷き詰めるように構築。その上に直接基礎を載せる方式だ。杭基礎と比べて仮設構台の規模が小さく、施工期間が短くて済む利点がある。

 着工後に施工者が現場を試掘すると、土質が設計で想定した砂質土ではなく、ヘドロであることが判明。基礎を構築する河川内の土質を設計時に調査していないことから、不安を覚えた施工者が追加のボーリング調査を市に提案した。

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