“赤字解消は困難”兵庫県立のがん治療施設 廃止含め検討へ
兵庫県たつの市にあるがんの治療施設、県立粒子線医療センターについて県は「経営状況が厳しく、令和9年度末(まつ)までに運営から撤退することが望ましい」などとする有識者会議の報告書を受けて、廃止を含めて検討を行うことになりました。
県によりますと県立粒子線医療センターは、放射線の一種の粒子線を使ってがんを治療する施設で平成13年(2001年)にたつの市に開設され、これまでに1万人余りの患者の治療にあたってきました。
しかし、同様の治療施設が神戸市や大阪市など全国で26か所に増えたこともあり、年間の患者数は、令和5年度で332人とピーク時の半数以下に減少しています。
さらに維持費や人件費の上昇を受け令和5年度の経常損益はおよそ9億2000万円の赤字になったうえ、今後、設備の大規模な改修が必要になるということです。
こうした状況を受けて、県の有識者会議は今月(5月)、報告書をまとめ、「赤字の解消は極めて難しい」と指摘したうえで、「患者数の増加は見込みがたく、厳しい経営状況も踏まえると治療の継続は困難で、令和9年度末(まつ)までに施設の運営から撤退することが望ましい」と提言しました。
報告書を受けて県病院局は施設の廃止を含めて検討を行うことにしています。
これについて斎藤知事は20日の記者会見で、「がんの治療は県民の関心やニーズが高く、県内でのがん患者の粒子線治療などのあり方も形づくっていく必要があると思っている。患者の不安もケアをしながら、報告書の方向性を踏まえて対応を検討していきたい」と述べました。