「声の奉仕」続け35年 録音図書ボランティアの塩﨑さん 分かりやすく、聞き取りやすく 長崎

長崎新聞 2024/09/12 [12:15] 公開

35年間、「声」の奉仕を続ける塩﨑さん=長崎市橋口町

35年間、「声」の奉仕を続ける塩﨑さん=長崎市橋口町

  • 35年間、「声」の奉仕を続ける塩﨑さん=長崎市橋口町
  • これまで読み上げた書籍と録音CD、カセットテープの一部
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聞き手をびっくりさせないようにメリハリは利かせ過ぎない。間違うと意味が変わってしまうから、アクセントや息継ぎの場所には特に注意する。「上手下手はない。『よく分かったよ、聞き取りやすかった』が最高の褒め言葉です」
 ボランティア団体「声の奉仕会・マリア文庫」(長崎市橋口町、西田祐尚(まさなり)代表)のメンバー。マイクの向こう側にいるのは目や体が不自由で読書が困難な人たちだ。文章を読むだけでなく、写真やイラストの情景を丁寧に説明したり、図表のデータなども一つ一つ読み上げたりする。「録音図書」の活動を始めてから35年が過ぎた。
 マリア文庫は、シスターで初代代表の故野﨑博子さんが、指先の感覚を失ったハンセン病患者が舌先で点字を読むことを知り、1979年に設立した。壁には歴代メンバーが読み上げた4千タイトル以上のカセットテープやCDがびっしりと並ぶ。作品は全国に無料で貸し出し、施設へ寄贈してきた。
 カトリック信者だった夫の弘明さん(今年2月死去)と同じ墓に入ろうと、30代で洗礼を受けた。宗教の勉強のため、シスターの元へ通ううちに録音ボランティアを知った。両親に苦労をかけて大学の教育学部を出たが、すぐ家庭に入り、せっかくの学びを役に立てられていないという思いがあった。読書好きも相まって、録音図書に引き込まれていった。
 情報を楽しみに待つ人たちがいる。新聞は1週間以内に音声化するという「締め切り」があり、発熱した場合でも声が出る限り録音する。ユーザーから電話で読んでほしい書籍のリクエストや感想が寄せられることもある。「この本まで読んだら辞めよう」と思いながら、明るい仲間に支えられて続けてきた。音訳指導者資格を取得し、後進の育成にも注力。教職の学びは生かされた。
 35年間で録音した時間の累計は、雑誌を除き1092時間。長年の功績が評価され、視覚障害者福祉の向上に取り組む鉄道弘済会から、今月末に東京で全国表彰される。
 「主人が受賞を知ったら何て言ったかな」。視線を上に向けて想像し、聖書の一節を引いた。「人に親切にする時には、右手が何をしているのか、左手でさえ気付かないくらいに、こっそりとしなさい」-。褒められようとしたり、賞をもらったりしたら駄目だよと夫に戒められるだろう。賞は歴代メンバーの代表として受け取ることにした。
 先輩たちもつえをついたり、亡くなったりして現在実際に活動しているのは約30人。1人でも欠けると活動が維持できないため「もう辞められない」のが正直なところ。「小さくてもいいから本物のグループを作りたい」と始めた野﨑シスターの志を引き継ぎ、5年後の設立50周年まで頑張ろう。みんなで、そう声をかけ合っている。