「配慮に欠ける」校歌指導3校 不登校など可能性1件 埼玉県立高校

杉原里美

 埼玉県立浦和高校で上級生による新入生への「不適切」な校歌指導があったと元生徒が県側に訴えていた問題で、県教育委員会は19日、全137の県立高校で過去3年間に実施された校歌指導の調査結果をまとめ、発表した。浦和、川越、松山の3校で、大声で怒鳴りつけるなどの「配慮に欠ける指導」があった。過去25年間を調査した浦和高校では、校歌指導が不登校や退学などにつながった可能性がある事案が1件あったとしている。

 校歌指導をめぐっては、昨春、二十数年前に入学した元生徒が1人で歌うように求められ、竹刀を持った応援団員から暴言を受けて心的外傷後ストレス障害(PTSD)になり、中退したと県側に調査を要望した。朝日新聞の報道を受け、県教委の日吉亨教育長は2月、同校に対して25年前までの調査を指示すると同時に、全137校の調査を表明していた。

 2022~24年度の全校調査結果によると、上級生が新入生に対して校歌や応援歌の歌唱指導をしていた高校は8校。このうち、浦和、川越、松山の3校で、生徒や保護者から指導方法について改善を求める意見があった。3校の調査結果では、「上級生が新入生の近くに寄り大声で怒鳴りつける」(3校)、「新入生を個別に指名して1人で歌わせる」(浦和)「竹刀で床をたたく」(浦和)など「配慮に欠ける指導」があったとしている。

 00年度から24年度までを調査した浦和高校では、同校に勤務経験のある複数の教員への聞き取りや過去の資料から、「校歌指導が不登校や退学などの理由の一つとなった可能性のある事案」が1件確認されたという。県教委が保護者に尋ねたところ、「本人が特定される恐れがある」と公表は望まなかったとして、詳細は明らかにしていない。県の調査を求めていた元生徒の男性は、「県教委から接触はない」としており、別の事案とみられる。

 県教委は、「一部配慮に欠ける指導が行われ、実際に苦痛を感じている生徒がいたことから、上級生に対する指導が不十分だった」「校長や教頭も教員の管理・監督が不十分だった」と結論づけている。

 上級生が指導する8校に対しては、3月末までに今年度の校歌指導で威圧的な言動をしないことや人権に配慮して実施するように指導したという。

 今後は、校長会議などでも改めて指導していくという。

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この記事を書いた人
杉原里美
さいたま総局|県政・教育担当
専門・関心分野
家族政策、司法のジェンダー、少子社会、教育