江藤農水相

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 コメの高騰に関するJA関係者の“言葉”に、多くの消費者が怒りをあらわにしている。まずは4月24日、JA組合員などを主要読者とする農業協同組合新聞が電子版でも配信した記事が問題視された。同紙はJA松本ハイランドの田中均・組合長の寄稿を掲載し、そこに「ごはん1杯はコンビニのサンドイッチより安い」との記述があった(註1)。たちまちネット上では「比較対象が間違っている」と炎上した。(全2回の第1回)

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【写真】コメ価格「高くない」発言が取り沙汰されるJA全中「山野徹会長」。なぜか記者会見でコシヒカリをほおばったことも

 さらに週刊女性PRIMEが5月11日、JA全農山形が掲載した新聞の全面広告に《それでもお米は高いと感じますか?》との一文があり、これもネット上で炎上していると報じた(註2)。担当記者が言う。

江藤農水相

「JA山形の広告がやり玉に挙げられた理由の一つは、田中組合長の寄稿と同じく比較対象の問題でした。《ごはんお茶碗1杯の価格は約49円。菓子パン約231円、カップ麺約187円、ハンバーガーは約231円》との記述があったのです。菓子パンなら100円台も珍しくありませんし、ごはん1杯49円も首を傾げる価格です。三菱総合研究所が4月3日に配信した記事によると、2月の小売物価統計『コメ5キロ=4363円』で計算するとコメ1杯は57円。この価格だとパンやパスタのほうが安い場合があると明らかにしたのです(註3)」

 そして“ラスボス”として登場したのがJA全中(全国農業協同組合中央会)の山野徹会長だ。5月13日の定例記者会見で現在のコメ価格は「決して高いとは思っていない」と言い放った。

「JA全中は公式サイトで『わが国のJAが結集した組織』と書いています。要するにJAのトップとして君臨しているのが山野会長なのです。備蓄米の放出では入札が実施されましたが、その9割をJAが落札しました。ところが、いつまでたっても都市部のスーパーに備蓄米は並びません。さらにメディアの詳報でコメ農家が価格高騰の恩恵を全く受けていないことも明らかになりました。今、国民はJAの存在意義を問うていますし、SNSにはJA解体を求める投稿が殺到しています」

安く思えない備蓄米

 JAは備蓄米を消費者に届けられず、農家を搾取し、コメ価格の高止りで中抜き利益を貪っている──このような批判がXでは次から次へと表示される。

「確かに投稿には真偽不明の内容も目立ちます。しかしJAに巨大な逆風が吹いているのは紛れもない事実です。それを知ってか知らずか、山野会長はコメの価格は高くはないと発言しました。これで消費者が反発しないほうがよほどおかしいのではないでしょうか。JA全中は東京都千代田区大手町1丁目という超一等地にそびえたつJAビルの中にあります。2009年に竣工した地上37階の超高層ビルは圧倒的な存在感です。JA全中の職員は100円でも安いコメを求めてスーパーをハシゴする庶民とは別世界に生きている……そんなことさえ考えてしまいます」(同・記者)

 山野会長の「高くない発言」が飛び出した翌日、さる関係者は1日をかけて都内のスーパーを回り、コメ5キロがいくらで売られているか調べてみたという。

「山野会長の発言が、どれほど現実と乖離しているか改めて実感しました。いわゆる山手線の内側や湾岸地帯のスーパーでコメは5キロ4250円から5000円の間でした。最も高かったのは新宿区の老舗スーパーでコシヒカリが5999円。もちろん備蓄米など影も形もありません。一方、埼玉県や千葉県の県境に位置するスーパーや、イオンやイトーヨーカドーといった大手小売店では備蓄米と思しき複数原料米が3600円で売られていました。私は備蓄米を初めて見たのですが、最初の感想は『意外に安くない』で、これは自分でも驚きました」

コメ5キロの適正価格

 この関係者は、業務用食材が豊富に取り扱われている都心の専門店も訪れたという。オリーブ油がリットル単位、豚バラ肉がキロ単位で売られている店内では、タイ産の高級ジャスミンライスが備蓄米と同じ5キロ3600円で売られており、カルフォルニア米は、それより安い3300円だった。

「江藤拓・農林水産大臣は備蓄米を、コメの価格を押し下げる切り札のように説明してきました。ところが店頭に並んだ複数原料米を見ても、それほどインパクトがないのです。実は朝日新聞が3月19日の朝刊でコメの適正価格を独自に試算し、5キロ2265円と発表して議論になりました(註4)。朝日の試算は安すぎるという批判もあり、民放キー局が街頭インタビューで適正価格を質問すると、かなりの消費者が『5キロ3000円』と答えます。2200円から3000円が消費者にとっての適正価格だとすれば、備蓄米でも高いというのが庶民の本音でしょう」

 SNSを見ると、3000円の支払先についても明確な希望を持つ消費者が多いことが分かる。卸業者やJAを通さず、コメ農家に直接、支払いたいというのだ。

 実際、コメ農家による直販はネット通販や流通システムの発達により、今も成長を続けている。JAが権勢を誇っていた昭和の時代には考えられなかった動きだ。JAにとっては脅威に違いない。

 今のような高騰を放置していると、やがて日本人はコメそのものを食べなくなる──こんな危機感を表明する財界人も出てきた。

 第2回【食糧法に“価格の安定”は「書いていない」と答弁した江藤農水相…消費者が「2キロのコメ」で節約もJA全中会長は「コメ価格は高くない」で大炎上】では、山野会長の「高くない」という現状認識とは全く異なる女性副社長の警鐘、江藤農水相にコメの高騰を抑えることは可能なのか、詳細をお伝えする。

註1:【どうするのか?崩壊寸前 食料安保】米の安定供給は長期的視点で JA松本ハイランド組合長 田中均氏(農業協同組合新聞・電子版:2025年4月24日)

註2:《それでもお米は高いと感じますか?》皮肉まじりのJA全農新聞広告に「買い占めたお前が言うな」と批判殺到(週刊女性PRIME:2025年5月11日)

註3:「おコメが高いから、パンにしました」ってホント? 食料安全保障と農業のキホンの「キ」(8)(三菱総合研究所:2025年4月3日)

註4:24年産のコメ、適正価格は「2265円」 朝日新聞が試算(朝日新聞・電子版:2025年3月17日)

デイリー新潮編集部