名前:アスフローシャ
年齢:20
身長:179cm
便宜上の母:フロップユーラ
複製元:同上
養父:ボクモウショク
便宜上の妹:ユーフロシータ
便宜上の叔母:ユラーシャロップ
出身:ミエヌソラ
宇宙船:バリク級悌岳（ていがく）遊覧船 アスフロッサ

アスフローシャはフロップユーラの複製体で、ユーフロシータの価値観上の姉。
21年前、フロップユーラは子に恵まれず、ある結社が提唱する遺伝子複製の計画に参加した。
参加した背景には子が欲しいという主だった理由以外にも、自身が複製計画に参加しようがしまいが必ずこの世から一人遺伝子複製実験のための素体が選ばれるのであれば、自らが素体となり、誕生してくる個体に不幸な人生を歩ませる可能性を可能な限りなくしたいという、同計画に参加したセーラシータや日夕（じつせき）と同様の思いがあった。

また、フロップユーラは人間として同世代の誰よりも健康な個体である自覚と自信を持っており、そんな己が素体となれば、自身と同様に健康な複製体が生まれてくる可能性が高いと考えていた。
斯くして、フロップユーラは遺伝子複製培養の素体となり、処置を受けた。

ところが、フロップユーラが遺伝子複製の処置を受けた翌日に奇しくもその腹に命が宿っていることが判明し、自身と夫との間にできたその子の生物学上の親となることを自覚した母は、やがて誕生する実子と複製個体を二人とも育てていくことを決意した。
夫のボクモウショクも、生まれた子に兄弟姉妹がいれば互いの情操に良い影響を与えるだろうと二人の養育に前向きであり、フロップユーラもそう考えていた。
簡潔に表現すれば、一人より二人の方が楽しいだろうと。

複製元であるフロップユーラは、実子と同年に誕生した複製体のアスフローシャを自らの子供として育てはしたものの、当該固体発生の背景が父親を必要とする自然な生殖とは全く異なる遺伝子操作に係るものであったため、価値観上の長子を娘と見做しつつ、年の離れた妹でもあると、その母であり姉である彼女は思っている。
次子の、しかし実際には生物学上の長子であるユーフロシータはフロップユーラ自身が十月十日かけ腹を痛めて産んだ子であるため、その経験を経ずしてこの世に出現したアスフローシャを尚更妹として見ている面があるようだ。
とは言え、二人に対する思いの深さに相違はなく、フロップユーラ曰く「妹も娘も変わらない」とのこと。

また、フロップユーラには大事にしている仲の良い生物学上の妹が一人いるため、その背景を踏まえて先の発言を聞いた者は、実子と複製体に対するフロップユーラの扱いに差を認め難いものと受け取るだろう。

夫のボクモウショクに至っては、アスフローシャはもちろんのこと、いずれの子も己が苦痛を得て産んだ子ではないため、特段二人に対する感覚の差はないという。
彼は娘が二人いるものと認識している。

離れた遺伝子を持つ個体と交配を繰り返し、様々な形質を次世代に伝え免疫力や能力を獲得発展させていく生物の摂理から観れば、複製体であるアスフローシャの免疫力や性質は母のものと相違無く、父の遺伝子情報を併せ持つユーフロシータに劣る。
アスフローシャの体質は、良くも悪くもフロップユーラのものである。
つまり生物としては、複製元からの発展がない。
思春期のアスフローシャはそれを心配し、母に嘆いたことがある。
しかし、そもそもフロップユーラという個体が存在している時点で、彼女の一族が太古から何代も交配を繰り返し生を紡いできたことは明白であり、その母が受け継いだ遺伝子には既にこれ以上無い程の壮健性が育まれているであろうこと、そして、フロップユーラ自身も肉体が強壮で極めて健康体で生きてこられたことが取り柄にして誇りであるため、それをそのまま受け継いだアスフローシャは、ユーフロシータと遺伝情報が異なることを気にしなくて大丈夫だと、母は妹兼娘を諭した。

アスフローシャはフロップユーラの複製体であるにも関わらず、その毛髪は複製元と異なる色を呈していた。
これはフロップユーラの先祖の形質が発現したものとボングサ博士は推測したが、博士に言われるまでもなく素体となったフロップユーラはそのことを察していた。
各個体に現れる形質は、同じ遺伝子を持っていても発生段階で異なるためである。
また、アスフローシャは共通する遺伝子を持つフロップユーラを凌ぐ反射神経や空間把握能力を示し、例え複製個体であろうと複製元と能力が拮抗するわけではないという希少な研究材料となった。
やがてボングサ博士は、複製個体の各能力は摂取した栄養素含む個体の発生状況、生育環境によって左右されると結論づけた。


初稿:2022/11/5 1:51
更新:2023/5/31 13:37
更新(出身星ミエヌソラを追加し所有船のラムバリク級を初案のバリク級に戻した以外、文意そのものは初稿から変わらない):2025/5/19 1:43