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都市伝説解体センターにミステリクラスタとして思うこと(ネガティブ感想)

都市伝説解体センターに関して、色々と悲しい思いをしていたところnoteに複数の似た思いをしていた方々の感想を発見しました。大変励まされたので、一ミステリ民としての感想をこちらに投稿いたします。

結論から言えば
「都市伝説解体センターというゲーム自体は別にこれはこれで悪くない」
「本作が"ミステリーADV"としてもてはやされている風潮が苦しい」
です。

本稿はただの繰り言ですが、決してミステリ愛好者が本作を受け入れている訳ではない、ということは記録しておいた方が今後のミステリADV界隈のためにはよいと思い、書き残しておく次第です。

自己紹介

りりぱと申します。本格ミステリの面倒くさいオタクです。ゴリゴリのクリスティ派です。
一般に「ミステリ」と呼ばれる作品全般にはうっすら博愛を抱いていますが、「"本格"ミステリ」と名乗られると途端に心が狭くなります。
好きな作家は順不同でアガサ・クリスティ、J.L.ボルヘス、澤村伊智、殊能将之、島田荘司、西澤保彦、米澤穂信、チェスタトン、アンソニー・ホロヴィッツ 等です。
嫌いな作品はヴァン・ダインの二十則のうち十則以上に違反する作品、特に第三則違反の作品です。

最近はミステリ好きが高じて自分でも本格を書いております。
短編はこちら。

連載中の長編はこちら。カクヨムにもTalesにもあります。

「都市伝説解体センター」のなにがダメだったか

「UI/UXと物語体験の合ってなさ」が個人的にもっともモヤりました。こういう物語が"ミステリ"と銘打たれてもてはやされている空気に「ミステリ」という文芸カテゴリに対する大きな軽視を感じます。

捜査が物語として根本的に無意味なら捜査をさせるな

この作品を完走した方ならお分かりかと思いますが、はっきりいって真相は推理不能です。まともな伏線は一切なく、解釈の問題などというレベルではない明らかな矛盾点が散見され、真相を提示されて納得できる余地はありません。この点において、同作はフェアネス・推理可能性のかけらもありません。ここはミステリ民・非ミステリ民の双方同意いただけるところかと思います。

その一方で、本作はユーザーに「捜査」という行為が要求されます。P&C形式でかなり細かな部分まで証拠を積み上げさせられ、(おそらく)綿密さのために推理の合理性、妥当な範囲の推論のショートカットは捨象されます。
実は本作、わたしは体験版をプレイしていました。その時、この部分のもっさりさが理由で「やらないな~」と思っていたのですが、周囲からの「ミステリだからやれ!」圧に屈して本編をプレイしたものです。

そう、最初は「綿密さのためにこんなもっさりしてるんだな」と解釈し、本格としてのフェアネスを追求するためなら我慢しようと思っていました。しかし雲行きは第三章からどんどんおかしくなり、最終的に提示された真相はアレです。
「え?じゃあ今まで自分が積み上げてきた捜査や推理はなんだったの??」
今までの努力を全否定された気分でした。端的に言ってバカにしている。

プレイヤー自らに行動させる「ゲーム」という媒体は、小説や漫画、映像作品とは違ってかなりの没入感をもたらすものです。そういう媒体で、世界観自体に裏切られるのはかなりきつい。マーダーミステリー等でもそうですが、ユーザーのコミットには誠意をもって報いてもらいたいです。

アートの品質と物語の品質が釣り合っていない

都市伝説解体センターが評価される理由のひとつに優れたアートワークがあります。キャラデザ、色彩のクールなドット絵風イラスト、ムービー、サウンド、滑らかに動くSNS画面、どれをとっても素晴らしい。

しかし、それらによって彩られるミステリとしての物語強度は前述の通り酷いものです。アートによって醸し出されていたシリアスで知的な空気は、あまりにもバカげた真相によって滑稽なものとなってしまいました。
更に天眼錠が事件そのものに積極的にかかわってくる小道具でなかったことも大きなモヤポイントです。じゃああれ演出上のカッコイイアイテム以上のあれじゃなかったんだ?!レッドへリングですらなかったなんて!!ねぇチェーホフの銃って知ってる??

もし、これらのアートによって醸し出されるスタイリッシュな雰囲気自体がゲームの魅力の本体なのであれば、こんな「捜査」UIを実装する必要はなかった。サウンドノベルか、もっと言えば映像作品でもよかったはずです。
優れたアートに裏切られるのは結構悲しい。

それでも「都市伝説解体センター」という作品は別に悪くない、という理由

表現は自由だからです。
どんな作品を作り世に問おうが、それは憲法で保障された自由です。
ですから本作をミステリとして批判はすれど、本作自体になんらかの罪があるとは思っていません。嫌なら遊ばなければいいんです。

わたしが耐えがたいのはあくまで本作が「ミステリーADV」としてもてはやされる風潮であり、本当に批判したいのも本作を"ミステリ"だと思っている層です。
都市伝説解体センターが流行るのは一向に構いません。スタイリッシュで素敵なアートの作品だと思います。でもあれを「ミステリ」と呼ばれたくはありません。

今後集英社ゲームズに求めること

集英社の"ミステリ"と銘打たれた作品をプレイするのはこれが初めてではありません。集英社のマーダーミステリーレーベルである集英社マーダーミステリーエクスプレスの『ゲッコウ島サバイバル』、ならびに集英社ゲームズのマダミス『キミと青いヨルの』を通過済みです。

正直言って両作ともひどい品質でした。余計な情報が多いわりに肝心なことが書かれておらず、推理不能です。「エモいことをやりたいんだな??」みたいなことはかろうじて伝わってくるのですが、いかんせんキャラクター造形すらしっかりなされていないため人間関係RPを楽しもうとも不可能です。

これは好みの問題ではなく、品質管理の問題です。
「推理に最低限必要な情報はちゃんと作中に記載されているか?」
「各伏線や情報に矛盾点はないか?」
「意図せぬ誤解・ミスリードを招く表現はないか?」
ミステリには他の文芸ジャンルとは違い、本格であろうがなかろうが、こうした点でのある程度厳格な品質管理が求められます。
しかし集英社のミステリゲームレーベルには、こうした品質管理が行われていないのだな、というのが上記マダミスをプレイした時の印象でした。
その悪い部分が都市伝説解体センターでは炸裂しています。

集英社ゲームズは今後"ミステリ"に該当する作品を出版する際、開発チームに品質管理担当者を置いてください。物の分かったミステリ編集者が一人入るだけで、集英社ゲームズが得意とする素晴らしいアートを生かした優れたミステリーゲームが生まれるはずです。
集英社ゲームズはこれ以上、優れたアートを破綻したシナリオで棒に振らないでください。

それでは何のミステリーADVをやればよいのか

特定作品をdisって終わるのもなんなので、一介のミステリ民としてスタンディングオベーションだったミステリーADVの名作をいくつかご紹介いたします。いずれも必ずしも本格ではないですが、ミステリとしての品質と優れたゲーム性、エンターテインメント性を併せ持つ名作です。

未解決事件は終わらせないといけないから

韓国発の短編ミステリーADVです。都市伝説解体センターのSNS調査だけをやるような感じのインタフェースで、物語体験と合致したUIが楽しいです。真相解明のとある手掛かりには「本格」の矜持と祈りを感じて震えました.

パラノマサイト FILE23 本所七不思議

「捜査」と「推理」のバランスがとてもよく、テンポよく進められます。提示された真相はメタ的ですが、伏線十分で没入感とカタルシスが手放しで楽しめます。もちろんアートも最高、ミヲちゃんが可愛すぎる。

428 ~封鎖された渋谷で~

スパイク・チュンソフトと言えばダンガンロンパシリーズやかまいたちの夜シリーズ等優れたミステリーADVを数多く出していますが、ミステリとしての品質の高さという点からは428を推します。続編が楽しみですね!

他にも逆転裁判1-3星影の館殺人事件もいいぞ。

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コメント

5
神山六人
神山六人

①双方同意いただける、というには提示情報が少なく、検証不能と思いますが、指摘内容については理解できます。しかし、本格ミステリの国内作品においては某作や某作のように、信頼できない語り手により読者に対して作中世界の現実が歪められて伝えられることはままあります。福来あざみが見ている幽霊(のようなもの)は読者が実体験不可能ではあるものの、特殊設定ミステリとしてはある程度のルールが敷かれていると感じます。つまびらかに明らかな矛盾点や伏線がないことを踏まえると、いささか強い表現でしかないな、という印象です。
②国内作品においては某作(略)など、連作短編において各短編が個別にミステリと成立していながらも、最終作によりその構造が反転する(そして、その反転の成否の検証を実演する機会はない)作品はあり、それによってそれまでの操作や推理が無為になる、というのは言いがかりかと思います。もちろん、巧拙はあるにせよ「ミステリとして成立する余地がある」程度の言明は可能と思います。

神山六人
神山六人

③「ミステリ」への造詣はさておき「ゲーム」については専門でないことを踏まえつつ、世界観自体があなたを裏切った、というよりは、あなたがコンテンツを裏切ったに過ぎないのでは、と感じます。ユーザーのコミットが実は良い結果をもたらしていない、という作品は国内ゲームにおいては某作(略)などもあり、都市伝説解体センターがゲーム業界において全くあたらしい手法を用いたということでもないと思います。
④チェーホフの銃については『涼宮ハルヒの直観』で古泉一樹が述べた程度のことしかわかりませんが、たとえば眼鏡、たとえばカード、たとえばSNSといった要素の扱い方をみるに、製作陣は「チェーホフの銃」的なモノを理解していると思います。少なくとも、天眼錠が事件そのものに積極的にかかわってくる小道具として、どういったものであればよかったのか例示がないことには、乱暴な議論だなという印象になりますね。

神山六人
神山六人

⑤「ゲーム」について専門(略)ですが、本作がプレイヤーの操作があることで、物語の展開に意味があることは明白(それは、結果的に裏切りに繋がっているとしても、それまでの信頼に意味はある)。インディーゲーム・フリーゲームの隆盛により、小説とは別の形での物語表現が跋扈している2020年代に、PS2・3時代のFFやMGSに向けられていたような言葉が出てくるのは少し、時代錯誤とも思います。

ひとまず、ざっと読んだ感想です。本作がミステリか、ADVゲームか、ということについては別に記事を書きますので、ここでは具体的記述に対する所感のみ残します。

liliput
liliput

これは……反論記事を待てばいい流れ????(楽しみにしています

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都市伝説解体センターにミステリクラスタとして思うこと(ネガティブ感想)|liliput
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