「『竹田くん』で社会的制裁を受けた」と主張

注目すべきは、『脳外科医 竹田くん』にも言及し、このように主張していることだ。

〈松井被告は、原告らが作成に関与したウェブ漫画により信用を毀損され、相当な範囲を超えて社会的制裁を受けている。このことは慰謝料減額事由として考慮されるべきである〉

これらの主張は、昨年9月に同法廷で行われた証人尋問でも、松井医師本人が発言していた。当時の様子は、本誌の記事【赤穂市民病院『脳外科医 竹田くん』モデル医師、ついに法廷へ…!「ドリルで神経を巻き込んだ」痛ましい事故は「自分の責任ではない」と断言】を参照いただきたい。

この証人尋問で、松井医師は「事故は上級医の朝日医師のせいでもある」「嘘の説明をしたわけではない」「ミスを正直に言わなかったのは、ドリルで神経を巻き込んだ、という"パワーワード"を伝えることでリハビリの意欲を失わせたくなかったから」との主張を展開したが、それに加えて今回は「『脳外科医 竹田くん』により、社会的制裁を受けたことを考慮してほしい」とも主張したわけだ。

では、これらの争点について裁判所はどのような判断を下したのか。それぞれ見ていこう。

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まず1の技量不足については「著しい注意義務違反」があったことを認め、「朝日医師の指示があったとしても、注意義務違反の程度を軽減する理由となるものではない」とし、松井医師の主張を退けた。

〈被告松井は、本件手術において、出血などにより視認性の確保が十分でないのに止血をこまめにしないままスチールバーによる骨切除を進め、本件医療事故を起こしたというのであり、証拠(編集部注・外部の専門家による検証)によれば、その手技は、経験のある医師において危険を感じさせるものであったと認められることからすると、被告松井の本件医療事故における注意義務違反の程度は著しいといえる。

この点、被告松井は、朝日医師が水をかけ過ぎたことやスチールバーの使用を指示したことも本件医療事故の原因であると主張するが、仮にそのような事実があるとしても、被告松井の執刀医としての原告Aに対する注意義務違反の程度を軽減する理由となるものではない〉

また、赤穂市民病院での他の事例についても、「技量の稚拙さをうかがわせる」とした。

〈脳外科医の手術には合併症・偶発症のリスクもあることからすると、(編集部注・松井医師が関与したその他の)上記11事例があることのみをもって直ちに被告に本件手術の執刀をしてはならなかったほどの技量不足があったとまで認めることはできないが、上記11事例の医療安全の観点から検証すべき事例であったことからすると、被告の技量が稚拙であったことをうかがわせる事情とはいえ、被告の本件医療事故における注意義務違反の程度が著しいものであったことを裏付ける事情というべきである〉

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