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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「文句あるんかコラア!」超大物俳優2人が大ゲンカ、原因は? 元プロ野球選手・八名信夫が“悪役スター”になるまで「40年間、1回もラブシーンなかった」
text by

岡野誠Makoto Okano
photograph byNumberWeb
posted2025/05/18 11:01
“名悪役”として知られる八名信夫、89歳
「役者を一般公募したの。そしたら、『私は刑務所に入ってましたから、事情はよく知ってます』というヤツが何人も来たよ。『何を勘違いしてるんだ、おまえ』と言うと、『いや、これも入れてますから』と刺青を見せる。“悪役”と“悪人”は違うんだ」
同年5月、原宿で『悪役商会の店』を始めた。松田聖子、中森明菜、中山美穂、工藤静香、酒井法子などアイドルの店が並ぶ中で、丹波哲郎の『大霊界』と共に異色のタレントショップとして注目された。
「所属俳優が100人くらいになったの。でも、食えない俳優がたくさんいたから、店の売り上げを生活費にさせた。俺も時間が合えば店に立ったし、グッズの仕入れの交渉もした。『若手を一人前にするために店を作ったんです』と言うと、安くしてくれたな。修学旅行生が面白がって、キーホルダーとか買ってくれたよ。4~5年やったかな」
青汁メーカー社長に直接「まずい!」
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55歳の90年、ひょんなことから代表作が生まれる。九州地区限定のキューサイ青汁のCM出演を依頼され、撮影現場で初めて喉に入れた。その瞬間、八名は苦虫を噛み潰した。
「あんなマズいもん、飲めへんよ(笑)。最初、『コイツは悪役にもいいなあ』というセリフだった。これじゃあ、面白くないなと思ったの」
八名は、現場に同行していた長谷川常雄社長に「セリフ変えていいですか?」と言った。「なんかいいのありますか?」と聞かれると、まさかの本音を吐き出した。
「……マズい!」
社長は困惑した。
「慌ててたな(笑)。重役たちと30分くらい話し込んでいた。その後、『フォローも入れてください』と言われた」
一気に飲み干した後、「マズい!」と険しい顔をしながら、「もう一杯!」とリクエスト。意外なセリフが絶大なインパクトをもたらし、青汁の売り上げは伸長。CMも全国放送になり、八名の知名度もさらに拡大した。長年、自分の頭で演技を熟考してきた成果がアドリブとなって現れた。
「40年間、一回もラブシーンなかった」
悪役生活に身を捧げながら、男として隠しきれない願望もあった。一度くらいキスシーンを演じてみたい――。2000年、NHK連続テレビ小説『私の青空』でその夢が叶う。

