【報道の現場から】
堀川 雅子 様(読売テレビ報道局 記者) ご寄稿
入社してから報道記者として20年。ノートやファイルは100冊を超えている。
その大半が「犯罪被害者問題」そして「子どもの境遇」に関するものだ。
たまに開くことがあるが、ノートからは、自ら訴えることのできない“社会的弱者”と呼ばれる立場の方々の「声なき声」が叫びとして伝わってくる。
大学では英文学専攻でシェークスピアを学んでいた。司法や福祉については全くの門外漢。
そんな私が犯罪や児童虐待の問題に足を踏み入れた原点は、97年の神戸連続児童殺傷事件の遺族取材だ。
その後、犯罪の背景や原因を探り始め「暴力の連鎖」というテーマにたどり着いた。
児童虐待でドキュメンタリーを制作し、次に「家庭内の暴力問題、DV」。
その後は、DVを「子どもの視点」から捉えた番組制作、最近では離婚後の「面会交流」の問題へとテーマは様変わりしていった。
平井先生には、「面会交流」という離婚後の親子の問題の取材でご縁ができた。
子どもの本音、心底にある思いを専門的な視点で捉えることの重要性は、近年ますます増加していると感じる。
ゆえに「子どもの心理療法支援会」という組織があることを知り大変感銘を受けた。
携わっておられる皆様に、心の底から敬意を表する。
犯罪被害、児童虐待、DV・・・弱いところに暴力が向く現実は、まさに「高いところから低いところに流れる」川の水のようだと感じている。
私自身は、富山という田舎育ちゆえ、地域とのつながりは深く、暴力とは無縁の環境で育った。
だからこそ、取材で目の当りにした過酷な現実から目を背けてはならないと考えている。
取材中、「虐待の連鎖」という言葉を幾度となく耳にしたが、「負の連鎖」は、「人の絆」によって断ち切ることができることも知った。
私は今でも、その「優しさの連鎖」を信じたい。
私事で恐縮だが、2年前に男児を出産した。
自我の芽生えが嬉しい半面、あまりの腕白ぶりに日々苦戦しているが、子を持つことで気づかされたことは多い。
子どもの未来を大人の身勝手な感情や都合で歪めることは、決してあってはならないと強く感じている。
(2011-2012年度 会報誌より抜粋)
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