上がらぬ物価、日銀どう動く リフレ派3氏に聞く
日銀は20日の金融政策決定会合で物価見通しを引き下げる見込みだ。5月の消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合で前年同月比0.4%の上昇、さらにエネルギーの影響も除く指数では横ばいにとどまる。2013年の異次元緩和の開始から4年が経過しても、日銀が掲げる2%の物価上昇目標は遠い。量的緩和を主張してきたリフレ派のエコノミスト3氏に日銀が打つべき手を聞いた。
「年80兆円メドの国債買い入れ維持を」 三菱UFJモルガン・スタンレー証券 嶋中雄二景気循環研究所長
――日銀が大規模な金融緩和を続けているのに、物価が伸び悩んでいるのなぜでしょう。
「原油価格の急落が主因だ。CPIの下落要因を分析すると原油価格の下落の影響が一番大きい。米原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は14年6月に1バレル107ドルだったが、16年初めには一時20ドル台まで下がった。その後は戻しつつあるが、現在も40ドル台半ばにとどまる。日本にとどまらず、世界全体で物価が上がりにくい状況になっている。原油価格の急落がなければ2%の物価目標はすでに達成していただろう」
――物価目標の達成のために日銀は今何をすべきでしょうか。
「原油価格自体は日銀はどうすることもできないが、中国の景気回復などで原油価格はいずれ上昇してくる。日銀は大規模な金融緩和政策を後退させることなく、当面続けるべきだ。特に年間80兆円をメドとする保有国債の増額ペースは掲げ続けるべきだ。私は物価目標よりも名目国内総生産(GDP)を重視すべきだと考えている。政府は20年に名目GDP600兆円を目標に据えている。これを達成するには年間で約3%の名目成長率が必要で、年間80兆円のマネタリーベース(資金供給量)の拡大が必要になる。そのうえで原油価格が持ち直せば、物価目標の達成も見えてくるはずだ」
「日銀保有国債の永久債化も選択肢」 第一生命経済研究所 永浜利広首席エコノミスト
――物価が伸び悩んでいます。
「企業の価格転嫁メカニズムが破壊されている。過去15年以上のデフレのトラウマで企業経営者が値上げに臆病になっているためだ。合理的な経営判断では値上げをして収益を確保した方がいいのに、値上げをすると売れなくなると過剰に心配している。欧米は量的緩和政策をやり、デフレを阻止した。日本は染みついたデフレマインドの払拭のために相当大胆なことをやらないといけない」
――金融政策でこれ以上何ができますか。
「今の金融政策の枠組みは限界が来ている。今は船の帆を張って、米景気回復などの追い風が吹いて前に進んでいるが、向かい風が吹くと後退する。早ければ再来年にも米国の景気後退が始まり、米国が緩和に動く可能性がある。今の仕組みのままでは間違いなく円高になるだろう」
「すぐにもう一段の緩和を日銀がやるべきだとは考えていないが、米国が緩和に再び動いたときには新たな政策が必要になる。国債を買う量を増やすことは限界が近づいている。海外から『為替介入だ』と言われなければ、外債購入がよい。それが無理なら日銀保有国債の永久債化に踏み込むしかなくなる。日銀が勝手にできることではないので、政府と新しいアコード(政策協定)を結ぶことを考えないといけない」
「日銀は外債購入を」 丸三証券 安達誠司経済調査部長
――大規模な緩和をしている割には物価の上昇が鈍いのはなぜでしょうか。
「13年に異次元緩和を始めて、最初はインフレになるのではないかと人々の期待が高まったが、14年4月の消費税率引き上げ、16年2月のマイナス金利導入で円高になってインフレ期待は急激に後退した。現在はトランプ相場などを経て、期待が戻りつつある段階だ」
――物価の先行きをどう見ますか。
「原油価格が上がるとか、1ドル=120円くらいまで円安が進行すればインフレ期待が高まり、物価は上昇してくる。物価上昇率1.9%くらいまでいく可能性はある。しかし、米経済の動向や原油価格などあくまでも外部環境に依存する。日銀は毎年、楽観的な物価見通しを示して予想を外してきた。日銀はもっと能動的に動いてもよいのではないか」
――日銀が打てる追加の金融緩和策はあるのでしょうか。
「マイナス金利の深掘りは円高につながるので厳しい。国債買い入れはこれ以上の増額は難しく、外債購入でマネタリーベースを増やすのが望ましい。為替介入との批判を海外から受ける可能性があるので現実的には難しいかもしれないが、制度上できないことはない。あとは上場投資信託(ETF)の購入も今は年間6兆円だが、10兆円くらいまでいけるのではないか」
(聞き手は福岡幸太郎)...