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VRChatクリエイターエコノミーの会計処理の実務①ー弊社事例のご紹介

VRChatは、バーチャル空間における表現と創作活動の幅を広げるプラットフォームとして、世界中のクリエイターに支持されています。中でも、公式の「クリエイターエコノミー制度」(Creator Economy Program)は、ワールド制作やイベント運営などの活動に収益化の道を開いています。

一方で、日本国内においてこの制度を活用した場合、「この収益はどう処理すべきか?」という会計・税務上の疑問も多く見かけるようになりました。

アメリカの税法や日本の輸出の特例等を調査し、税理士と検討した結果、弊社では以下のように会計処理を行う予定です。結論としては、売上の計上方法は非常にシンプルになりました。今回は、VRChat Creditの弊社の会計上の扱いについてご紹介します。

弊社のVRChat Creditの会計処理の実務の結論

 弊社の実務上の結論を最初の述べておきます。

  • VRChat Creditの売上は、ルールの記載上は「VRChat社から払い出し(Payout)されたタイミング」。ただし、日本国内の会計ルールと税務署から収入の実態に即した申告がもとめられることを考慮し、「日ごともしくは月ごとの計算上の売上額」を売上として計上する。ドル円の換算は金融機関が提供しているレートの「仲値」(日ごと、月平均)を用いる。参考:七十七銀行の「米ドル対円相場(仲値)一覧表 (2025年)」(ただし、この点は税務署および税理士での判断による部分が大きい)

  • VRChatのクリエイターエコノミーは、会計上はアメリカのVRChat社とクリエイターエコノミーセラーの取引(アメリカ企業へのコンテンツ輸出)となっており、インボイス事業者でも輸出特例の消費税課税対象外の売上として計上(非課税事業者の場合は意識する必要なし)

上記はあくまでもわたしの会社の判断であり、個別の状況や税務当局の見解にもよるため、税務上の取り扱いにの正しさを保証するものではないことは書き添えておきます。また、このような取引自体が珍しいため、税理士さんからのコメントを絶賛募集中です。

以下にこのような判断に至った経過や根拠も記載しておきますので、判断の参考にしていただければ幸いです。

VRChat Creditの位置づけと売り上げの扱い

 わたしの会社は10月末決算なので、すでにVRChat クリエイターエコノミーの売上を含めた決算を行っているのですが、VRChat社から文書で「Creator Economy Program Rules」が正式に出たのが2024年11月18日だったため、前期はVRChat Creditが「デジタル通貨」の一種と考え、想定される中で一番厳しいルールでの会計処理(毎日の売上を円換算して計上等)を行っていました。

 しかし、このガイドを見てみると、VRChat Creditは「デジタル通貨」ではなく、VRChat Creditは、実際には「条件付きの売上分配請求権」とでもいうべき内容となっていました。直接的に書かれているのは以下です。

5. Revenue Share. The term “exchange” as used in the Terms and these CE Rules with regards to Credits means a transaction in which a Seller forfeits VRChat Credits in order to receive a revenue share from VRChat in U.S. Dollars calculated based on the number of VRChat Credits forfeited and the then-in-effect exchange rate. VRChat does not directly exchange or convert Credits to U.S. Dollars. “Payouts” in U.S. Dollars represent a share of the revenue that VRChat has earned through the VRC Creator Economy based on a Seller’s contributions, which are quantified through the Seller’s Earned Credits.

5. 収益分配 本規約や利用規約で使用される「交換」とは、「VRChatクレジットを放棄して、米ドルでの収益分配を受ける」ことを指します。VRChatはクレジットを直接米ドルに交換することはありません。Payoutは、販売者の貢献(獲得クレジット量)に基づく、VRChatの収益からの分配です。

https://hello.vrchat.com/legal/economy(日本語訳は筆者による、強調も筆者)

 これの補足として見ておくべき項目も以下に記載します。

1. Acceptance of Terms. In order to become and maintain status as a Seller in the VRC Creator Economy, you agree to the following terms and conditions (these “CE Rules”). If you do not agree to these CE Rules, you may not participate in the VRC Creator Economy as a Seller. We reserve the right to deny a Payout Request from any Seller that is or that we suspect to be in violation of these CE Rules.

1. 規約の受諾 VRC Creator Economyで「販売者」としての地位を得て維持するには、本CE規約に同意する必要があります。これに同意しない場合、販売者としての参加はできません。私たちは、CE規約に違反している、または違反していると疑われる販売者からの「支払リクエスト(Payout Request)」を拒否する権利を留保します。

2. Modifications to the VRC Creator Economy. VRChat reserves the right to modify, amend, or cancel the VRC Creator Economy, add, remove, or modify the eligibility requirements, and change the exchange rate of Earned Credits, at any time and for any reason. The existence of the VRC Creator Economy today in no way creates an obligation for us to continue providing and maintaining the VRC Creator Economy in the future, nor does it guarantee that Credits can be exchanged in the future. We reserve the right to review activity of any Account to assess the validity of Credit balances, investigate complaints, or if we believe in our discretion that the Account’s owner has been involved in a violation of the Terms or any applicable law. We may deny payment to any User that we believe has violated the Terms, the Community Guidelines, these CE Rules or any applicable law.

2. VRC Creator Economyの変更 VRChatは、VRC Creator Economyの変更・改正・中止、参加資格の追加・削除・変更、獲得クレジットの交換レートの変更などを、理由を問わずいつでも行う権利を有します。VRC Creator Economyの現在の提供は、将来も継続的に提供する義務を意味するものではなく、クレジットが将来交換可能であることも保証しません。アカウントの活動は、クレジット残高の正当性の確認、苦情対応、または利用規約や関連法規に違反していると当社が判断した場合に調査されることがあります。違反が認められたユーザーへの支払いは拒否される可能性があります。

https://hello.vrchat.com/legal/economy(日本語訳は筆者による、強調も筆者)

 こちらを見ると、「収益分配」では、VRChat Creditは「VRChatクレジットを放棄して、米ドルでの収益分配を受ける」ものと書かれており、そのタイミングまでは法定通貨(円やドルなど)上の価値が確定しないようになっています。さらに「規約の許諾」「VRC Creator Economyの変更」の項目を見ると、VRChat CreditについてはVRChat社がいつでも変更でき、支払いを拒否する権利も持っていると明記されています。このことから、VRChat Creditはそれ自体は通貨ではなく、「条件付きの売上分配請求権」の数値でしかないことが明確化されています。
 この条件は文面だけ見ると、一見クリエイターエコノミーセラーに売り上げが保証されない不利な記述に見えます。しかし、ここで法定通貨との交換が保証されている「デジタル通貨」だったり、それ単体で価値のある「暗号資産(仮想通貨)」としてしまうと、各国の規制要件(たとえば日本では資金決済法などが該当)も厳しくなり、VRChat社側もクリエイターエコノミーセラー側も利用上の制約が非常に多くなってしまうため、それを避ける意図での位置づけだと思われます。これがVRChat Creditの位置づけの基本になります。

売上における消費税の扱いと輸出特例の適用

 上記のようなルールを踏まえて、まずは消費税の扱いについて考えてみます。こちらはインボイス事業者のみが対象となるものなので、非課税事業者であれば読み飛ばしてしまっても問題ありません。
 先にみたようにVRChat Creditから得られる収益は個々のユーザーとの取引時には発生しておらず、VRChat社からPayoutされた時点で発生するため、VRChat Creditを払ったユーザーとの直接取引ではなく、アメリカのVRChat社にコンテンツを納め、その結果、VRChat社が得た収益の配分という形で得られるものということになっています。そのため、会計上はクリエイターエコノミーセラーからアメリカ企業へのコンテンツ輸出という位置づけとなり、その売り上げには輸出の特例が適用され、消費税課税対象外の取引となります。
 ここで海外取引になることに困惑する方も多いとは思いますが、これが国内取引になると消費税の特例が適用されず、個々のユーザーからのVRChat Credit支払いに消費税の計算が求められる可能性が発生します。その場合は、個々のユーザーの所在地を把握して、日本国外であれば課税対象外とするなどの判断ができれば非課税部分も発生する可能性がありますが、それはVRChat上では現実的ではなく、すべてを消費税の対象として扱わざるを得ないことになりかねません。そのため、このようにお金のやり取りをVRChat社に一元化することで、日本の事業者にとっては消費税の特例が適用されると同時に居住地の違いをVRChat社側で吸収してもらうことができるというメリットが得られる形になっています。
 また、消費税課税事業者で、本則課税を行っている場合は輸出企業として経費として掛かった消費税の還付の申請も理論上は可能と思われます。ただし、規模が小さい場合、本則課税にした上で還付申請する費用が還付される金額を大きく上回ってしまうため、弊社では簡易課税での対応を予定しており、こちらは実務的には未実施となりますので、そのケースの解説はここでは割愛させてください。

余談ですが、いわゆるトランプ関税で消費税の撤廃が議論になりましたが、なぜ消費税が関税と関係あるのかを疑問に思った人もいるのではないでしょうか。その中身が上記の消費税の輸出特例になります。

売上発生のタイミングと申告の実務

 次に売上発生のタイミングを検討します。
 VRChat Creator Economyのルールだけで見ると、VRChat Creditでの売上そのものは法定通貨との交換が保証されていないため、Payoutをしなければ会計上の売り上げはないという記載になっています
 ただ、ということはこのルールを悪用して、いつまでもPayoutしなければ、売上は上がらないので、自分に一番都合がよい(≒税金の支払いが少なくて済む)タイミングで売り上げを上げてもよいのでしょうか。
 この点は非常に難しい問題で、このようなことが理論上は可能であっても、日本の会計および税務の原則(企業会計原則・法人税法等)では、収益は「役務の提供が完了し、対価を受け取る権利が発生した時点(実現主義)」での計上が求められており、税務署は収入の実態に即した申告を求めてくるため、上記のように意図的に売上の繰り延べや隠ぺいを意図して売り上げを立てていると思われると、それが「脱税」として扱われるリスクがあります。
 そのため、そのような税法の趣旨に反するような税金逃れを疑われないようVRChat Creditのルールの記載に関わらず、「日ごと、もしくは、月ごとの計算上の売上額」を売上として記録したり、「期末にPayoutを行ってその期の売上を確定」して、最低限確定申告のタイミングでの収入実態に近い形で売り上げを計上すべきだというのが弊社の判断です。
 その結果が最初のまとめの内容になります。

まとめ

 今回は、クリエイターエコノミーセラーの会計処理について、VRChat社のルールを見てきました。

 関連する法規制が多岐にわたり、かつ、国をまたぐため、適切な会計処理の方法を見つけることは容易ではありませんが、一つ一つ紐解いていくと、グローバルにクリエイターエコノミーを展開するための非常に練られた仕組みであることがわかります。
 また、結論だけ見れば、海外取引であることが税制上も有利な建付けとなっていて、売上も日次・月次でつけることで、一般的な取引と同様にシンプルに運用できる、というのが弊社の見解です。
 このほか、クリエイターエコノミーには各国の法制度を考慮した非常に巧妙な仕組みが多数含まれています。また、これからクリエイターエコノミーセラーに登録される方は、Payoutの方法なども気になるところだと思います。
 基本の説明だけでも長くなってしまったので、それらはまた改めての解説としたいと思います。

 会計処理は、みなさん気になるところだと思うので、参考になれば幸いです。最初にも述べましたが、前例の少ない取引形態で、各種金融関連法規、税法から解き起こしたものも多いので、知識のある方からのあたたかな、ときに厳しいツッコミをお待ちしています。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!


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コメント

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VRChatクリエイターエコノミーの会計処理の実務①ー弊社事例のご紹介|せちろー@デジタルリージョンCEO
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