逮捕状や証拠書類を電子化、刑事IT化法が成立 遠隔出廷も可能に
刑事事件の捜査や裁判の手続きをIT(情報技術)化する刑事訴訟法などの改正案が16日の参院本会議で可決・成立した。逮捕・捜索令状や証拠書類を電子化し、証人や被告が遠隔出廷できる仕組みを導入することで手続きの迅速化や効率化を図る。
政府は26年度中に段階的に運用を始め、同年度末までに全面施行したい考えだ。
今回の法改正によって、警察官らが管内の裁判所に出向いていた逮捕・捜索令状の請求手続きはオンラインで可能になる。令状は電子データで発付され、執行の際はタブレット端末などで示す。地方では裁判所への移動だけで数時間かかるケースもあり、現場の負担となっていた。
供述調書など証拠書類も電子化する。オンラインで閲覧・謄写できるようになるため被告側のメリットも大きい。現在は弁護人らが検察庁や裁判所が書面で所有する証拠をお金を払ってコピーしており、証拠が多い事件ではコピー代が数百万円に上ることもあった。
病気などで出廷が困難な証人や被害者参加制度を利用した遺族にも「ビデオリンク方式」でのオンライン出廷を認めるなど対象を拡大する。
令状や証拠書類の改ざんを防ぐ手立てとして、電子データの文書偽造罪にあたる公電磁的記録文書等偽造罪なども刑法に新たに創設する。
関連して私電磁的記録文書等偽造罪なども創設し、社会問題化するSNS型投資詐欺などを処罰できるようにする。
サイバー攻撃などによって情報が漏洩する懸念も指摘されており、法務省はデジタル庁と連携してセキュリティーを確保したシステムの開発や設計を進めるとしている。
裁判手続きのIT化は民事で先に進んでおり、2026年5月までに訴状の提出や訴訟記録の閲覧、判決文の送達もオンライン化され、全面的導入される見通しだ。
刑事手続きでは、法制審議会(法相の諮問機関)の刑事法部会が23年12月に骨子案をまとめた。日本弁護士連合会が求めていた容疑者・被告と弁護士との接見のオンライン化は通信環境が整わないことなどを理由に導入が見送られた。
新設の電子データ提供命令に野党から懸念、一部修正で決着
改正刑訴法には捜査機関が通信事業者にメールなどの電子データを提出させる「電磁的記録提供命令」も盛り込まれた。
現行法では捜査機関が令状を取得したうえで、USBメモリーなどの媒体にコピーして差し押さえている。新制度では通信事業者に対しサーバーからオンラインで直接提供させることができるようになる。
提供命令に正当な理由なく従わなかった場合の罰則規定も設け、捜査情報の漏洩防止のため命令を受けたことを口外しないよう命じる「秘密保持命令」を作った。
国会審議では野党から「事件とは無関係の個人情報が大量に収集される恐れがある」との懸念が示された。秘密保持命令についても本人が知る機会がないまま個人情報を勝手に取得され、不服申し立てもできないとの批判も出た。
そのため与野党が修正協議を進め、秘密保持命令を1年以内とする規定を追加。付則にも「できる限り事件と関連のない個人情報が収集されることがないように留意しなければならない」との記載を盛り込んだ。